第3話 デート(互いを見下してやりたい)作戦

俺、戸畑和彦だが.....まあ昔から、どうせお金持ちなんじゃねぇの?イキがっているだけだろ、とか言われていたりした。

そんな時に出会ったのが.....みーさんと無水だった。


無水とみーさんは俺に対して何の隔たりも無く接してくれたのだ。

それで中学時代は楽に過ごせた。

のだが今になってその壁が.....。


「かーくん。一緒に帰ろう」


「あ、ああ。そうだな」


「かーちゃん!一緒に帰ろう!」


「お、おい.....」


教室内にて放課後。

何これ。

いきなりの元許嫁と現許嫁のバトルって。

バチバチと火花を散らしながら見つめ合う2人。


みーさんは苛立ちを隠せない様だった。

うん.....あの。

帰りたいんだけど。

そうしていると、かーくんはどっちと帰りたい?、とみーさんが聞いてきた。

え?!俺!?


「アハハ!戸畑はモテモテだなぁ!殺すぞハゲ」


「いや。俺を殺してもお前が刑務所に入るだけだぞ。情けない理由で」


「大丈夫んぅだよ♪上手く殺すから」


「不吉だ!」


何で俺はこんな目に!、と思いながら居ると。

かーちゃん。良い事がある。一緒に帰ろう、と言ってきた。

誰と一緒にだ、と思っていると。

みのりさんと一緒にだよ、とニコニコ笑顔で話してくる。

俺は顔を引き攣らせる。


「.....どうする気だ」


「.....それは勿論だけど私の方が優秀だって分からせるの♪」


「私の方が優秀だけど」


「私の方が優秀!」


お前ら!この教室で争うな!

もう既に男子どもが戦闘準備に入ったからな!

俺を狩る為に!勘弁してくれ!

思いながら見ていると。

まあそれはそうと、と無水が言ってくる。


「まだ有効なの?許嫁の権利」


「.....うん。無水くん。有効だよ。.....私は何も無くして戻って来た訳じゃないよ?」


「ふむふむ。という事はまた許嫁の権利を貰えたって事だね?」


「そうだよ。アハハ」


「.....戸畑。お前もこれから先は大変だぞ。殺されるのと生きるのと」


どういう意味だコラ。

何故俺が死ぬ事を追われる前提になっているのだ。

勘弁してほしいのだが。


思いながら俺は盛大に溜息を吐く。

そして、じゃあな!、と勢い良く無水は俺を見捨てて去って行った。

あの野郎!!!!!


「さてぶっ殺すか.....金属バットで殴り殺す」


「それは良い考えだな。アイツも居なくなったし」


「良い案ですね」


誰か俺の味方は居ないのか。

俺は考えながらそのまま手を引いてからみーちゃんとみーさんと逃走した。

その場から、であるが。


そして下駄箱までやって来てから、お前ら俺と本当に一緒に下校するのか、と聞いてみる。

するとみーちゃんとみーさんは同時に、うん。当然だよ。彼女(この女)を見下してやりたいし、と言ってきた。

俺は苦笑するしかない。


「あのな.....そういうのは止めてくれ。俺はそういうのは好きじゃないぞ」


「駄目。これは恋の嵐なんだから」


「そうそう。この女をころ.....じゃなくて見下す為にね」


「今殺すって言おうとしただろ。.....あのな.....」


俺は盛大に溜息を吐く。

それから下駄箱を開けて靴を取り出してから。

そのまま下校を開始した。


丁度両隣から腕を掴んでくるみーちゃんとみーさんと一緒に。

周りの下校中の男子生徒が、何アイツ?、とか視線を向けてくる。

ああ胃が痛いなぁ。


「ねえ。みのりさん。離れてくれない?」


「それを言うなら貴方も離れて。私は彼の許嫁なんだから。今の」


「は?私だって昔の許嫁なんだから」


「私は今の許嫁」


「は?」


お前ら.....。

と思いながら見ていると。

帰り道で、あれ?お兄ちゃん、と声を掛けられた。

俺は?を浮かべてその声の聞こえた方角を見る。


唖然として眉を顰めている蜜が居た。

戸畑蜜(とばたみつ)。


中3で俺の妹。

顔立ちは八重歯が見え隠れしての美少女。

俺に似ているがそれなりに明るく友達が沢山だ。

まあヒッキーな俺よりマシか。


「こんにちは。蜜さん」


「こ、こんにちは。.....っていうかお兄ちゃん。何その姿.....」


「いや。これには訳が有る。ドン引きするな。俺はホストとかじゃないぞ」


すると右から腕を絡ませていたみーちゃんが蜜に頭を下げた。

それから、大きくなったね、と言う。

その言葉にハッとした蜜。

そして、お姉ちゃん?、と聞いた。

うんうん。お姉ちゃんだよ、答えるみーちゃん。


「久しぶりですね!?凄い.....美人になった.....」


「アハハ。有難う。かーちゃんに認められる為に女磨きをしたからね」


「アハハ。そうなんですね。.....じゃあ.....またお兄ちゃんを狙うんですか?」


「うん。許嫁候補として戻って来たからね」


「.....あー。成程。それで.....」


お兄ちゃんモテモテだねぇ、とジト目になる蜜。

何か誤解してないか。

俺はモテたいんじゃないぞ。

勝手に寄って来ているだけだぞコイツらが。

思っていると蜜は、じゃあ邪魔者はさった方が良さそうですね、と笑みを浮かべてそのまま去って行こうとする。


「お前!?ちょ、待って。マジに助けてくれよ!」


「えー。面倒臭い。.....嫌だー」


「無水にも見捨てられたんだ!助けてくれ!」


「あのね。お兄ちゃん。.....今の状況で何を助けるの?」


「お願い♡」


ウインクしながら必死の救済措置を求む。

だが。

嫌だから。お兄ちゃんキモい、と言いながらそのまま去って行った。

最悪だ!、と思いながら2人を見る。

じゃあ許可も貰えたし。今からデートだね、と2人は見合ってから笑顔を浮かべた。


ニヤッとしながら、であるが。

最悪過ぎるのだが。

っていうか2人も女の子連れた状態でデートとは言わないと思う。

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