異世界鉄道 第20話の続き 事前学習

 森林公社か……

 常識的な程度プラスアルファ程度は知っている。

 幹部の顔も、性格もある程度はわかる。

 何せ同じ領内の公社だから。


 しかしこの際だ。

 一度森林公社について知識を整理しておこうと思う。


 そんな訳で今日は図書館や実家からある程度の資料を集めて来た。

 その辺をとりあえず、わかりやすい部分から読み込んでいく。


 まず扱っている木材について。

 森林公社で扱っているのは異常に成長が早いルレセコイアと呼ばれる樹木が中心。 


 この木は1年生の苗木から5年で直径25cmまで育つ。

 成長が早い分枝打ち等の手間もかかるが、それでも植樹から最短5年で利用可能というのは便利というかチートだ。


 ただこのルレセコイア、生えている地域が限られている。

 ハイエラシー山脈の西側、標高500腕1,000m800腕1,600m程度の範囲しか生育できない。

 だからこそ特産品になるのだ。


 シックルード領のかなりの部分がルレセコイアの生育地域だ。

 しかし開発、伐採が進んでいるのはその2割に満たない。

 これらの木を大量かつ安価に搬出できる手段がないからだ。

 

 ルレセコイアを中心とした木材出荷額が多い領地はいずれも大河に面している。

 減少気味での水量でも安定して木材を流せる環境が必要という事だ。


 しかしこれも……

 僕は思う、森林鉄道を整備すれば変わるだろう。


 鉄道で安定した輸送を確保出来れば搬出も安定する。

 ライル河川港まで運べれば他領への出荷も一気に増えるだろう。

 ライル河川港から下流なら年間を通して最低限の水量があるから。


 整備に必要な費用提供はウィリアム兄が確約してくれた。 

 だから僕がするべき事は決まっている。

 森林鉄道の整備だ。


 これで坑内トロッコではない、ある程度本格的な鉄道を作る事が出来る。

 成功すれば更にその先、インターアーバン的な鉄道も見えてくるだろう。


 それにしてもこのルレセコイアという樹木、やっぱりチートな木材だよな。

 日本の杉なら出荷まで40~50年はかかるところだ。

 

 しかし……僕は思い出す。

 この世界には同じくらいチートな植物が多数あったなと。


 温帯で栽培可能なゴム、やはり温帯で栽培可能なコーヒー、何故か温帯で生育可能なカカオ豆、やたら糖分が多い甜菜……


 地球であった似たようなものと比べると、ご都合主義的かつチートだ。

 なまじ地球のものと似ているだけに余計にそう感じる。


 此処が植物等が品種改良されまくった未来の地球である、という事はないと思う。


 確かに重力は同じ程度と感じるし、人間も酷似している。

 しかし化石燃料が全く産出しない。

 掘り尽くしてしまったにせよ、石炭の屑鉱だの利用できない低産出量、低品質の油田くらいは残っているだろう。


 それに石灰石も生物由来のものが無い。

 化石類も掘り出されたという話が無いし。


 おっと、横道にそれてしまった。

 森林公社の事前学習をしているのだった。


 それでは次、部下となる幹部についての資料を読む事にしよう。

 僕はウィリアム兄から取り寄せた人事資料を手元に寄せた。



 

 

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