第7話 ねずみドラゴンの出発

(前回のあらすじ:にぼし男に誘われ、一緒に『まぼろしのオーブ』を探す旅に行く事になったねずみドラゴン。ねずみドラゴンの冒険の始まりです!)


 ねずみドラゴンは、それはそれはもうすばやい動きで冒険に持っていく荷物の準備をしています。にぼし男の話を聞いて『ぼくもいつか冒険に行きたいなあ、でもこわいなあ、大人になってからかなあ』と思っていたねずみドラゴンでしたが、心の奥の方では今すぐ冒険に行きたかったのです。

 そばではにぼし男がその様子を半分呆れ顔で見ています。

「長旅になるから必要なモンだけ持っていった方がええで。まあええわ。とりあえず荷造りしながらでいいから聞いとき。今後の予定を話すで。」

 にぼし男は続けます。

「まぼろしのオーブはどこにあるかも分からんって言うたけどな、実は一つだけありそうな場所に心当たりがあんねん。

 ドデカ山脈っちゅう場所があってな、猛獣やら何やらさまざまな危険にあふれたあまりに険しい山脈で、誰一人として深く調べた事のない場所や。今まで何人ものトレジャーハンターが行方知れずになってきた。────ところがな、数少ない生き残りの中で『魔女を見た』言うやつがおったんや。この世の者とは思えん美人の女で、羽根もないのに空を飛んでたそうや。ワイはそいつがまぼろしのオーブを作った魔女なんやないかと思っとる。ドデカ山脈もお前のパワーとワイの頭脳があれば屁でもないはずや!

 どや!ワクワクしてくるやろ!」

「チュチュウ!」

 ねずみドラゴンは元気よく答えました。荷造りの方も終わったようです。

「よっしゃ!ほな出発しよか!ワイらの大冒険の始まりや!」

「チュチュッチュウ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 一方その頃!森の中!

 『第100回ムキムキ格闘大会』と書かれた大きな看板が掲げられ、たくさんの色とりどりの垂れ幕が樹々の間に掛かった会場の中!

「グオーッ!」「ギェーッ!」

 水色の熊がぬるりとした動きで何だかよくわからない生き物をぶっ叩きます(良い子の皆さんは真似をしてはいけません)。よくわからない生き物は悲鳴を上げてその場にぶっ倒れました。

「ツチノコウルフ、2ダウン!そこまで!赤コーナー、グリズリースライムの勝ち!」

 審判がゴングを鳴らし、勝敗を宣言します。どうやら彼らは格闘大会の試合をしていたようです。

「ウォーッ!さすがグリズリースライムさん!あんたに黄金のリンゴ10個賭けてたんだ!」「素敵!」「あのタフなツチノコウルフが……」「これは今回の優勝も決まりだな」「乱暴者だけど強いんだよなあ……」「誰かあいつに勝てるやつはいないのか」

 興奮冷めやらぬ観客達がざわめきながら勝者のグリズリースライムについて話しています。

 そのグリズリースライムは試合後のマイクパフォーマンスで

「ガッハッハ!弱い奴ばかりで退屈だのう!今回こそは骨のある奴と戦いたいもんだのう!おっと、ワガハイにも骨はなかったか。スライムだから。ガハハ」

 などとうそぶきながらやはりぬるりとした動きで悠々と試合場から去って行きました。

 このグリズリースライムは今後ねずみドラゴン達とどのような関係があるのでしょうか……あるいはないのでしょうか……

  

(つづく)

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