第5話 ねずみドラゴンの睡眠

(前回のあらすじ:にぼし男と冒険の話で盛り上がったねずみドラゴン。話しこんでいるうちにあっという間に日が暮れてしまいました。)


 ホーホー、ホッホー、ホーホー、ホッホー、ホー…………

 どこからかダークネスフクロウの鳴き声が聴こえてきます。

 ここはとてもとてもけわしい、霧が深い山。あたりはもうほとんど暗くなっています。空にはレモンイエローの三日月とたくさんのまたたく星が、淡く美しい光を放って空に浮かんでいました。夜になったのです。

 そして、そこにある、岩壁のようなドアに隠されたねずみドラゴンの家の中では、ねずみドラゴンとにぼし男がまだ冒険の話を続けていました。

「なあー、もうええやん『まぼろしのオーブ』の話は……本当にあるのかもわからへんのやから……ワイがこんだけ世界中を探し回っても見つからへんのやから、多分うわさだけで実在せえへんねん……」

「チュチュ!チュチュウ!」

 おや、にぼし男は話し疲れたのかもう眠いようですね。それにたいしてねずみドラゴンは、お客さんが初めて来た事と冒険の話で興奮こうふんして眠れないようです。

 今、ねずみドラゴンはいつも使っているお布団、にぼし男はねずみドラゴンの家にあったお客さん用のお布団(にぼし男の体の二倍以上のサイズです)を敷いて横になっています。ねずみドラゴンが泊まっていくように勧めたのです。

 それにしても、さっき話に出てきた『まぼろしのオーブ』とはいったいなんなのでしょうか。

「まあええわ……まぼろしのオーブいうんは、さっき話したようにワイが昔探してた、世界一手に入れるのが難しいと言われとるお宝や。今はもうあきらめたけどな。このまぼろしのオーブは、手に入れた者の願いをどんなものでも一つ叶えると言われとる。うわさでは悪い魔女が作ってこの世の誰も知らない場所に隠したっちゅう話や。……これ以上の情報がないねん、どこ探しても誰に訊いても。

 さ、寝よ寝よ。泊めてくれておおきにな。ねずみドラゴンももう夜遅いんだから寝たほうがええで。ほなおやすみー」

「チュ……」

 にぼし男はねずみドラゴンと反対の方を向いて寝てしまいました。

 ねずみドラゴンはその背中にどこか物悲しさを感じていました。なんとなくにぼし男が夢をあきらめきれていないように見えたのです。ぼんやりとそのような事を考えながら横になっているうちに、いつしかねずみドラゴンも眠りに落ちていきました。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 その夜。

 ねずみドラゴンがスースーと寝息を立てて、完全に寝静まった後のことです。

「……ねずみドラゴン」

 にぼし男がささやき声でねずみドラゴンに声をかけました。そしてねずみドラゴンが寝ているのを確かめると、音を立てないように起き上がりました。

 その手には、屈強くっきょう(つよいこと)なタイガーシャークゴリラでも引きちぎることができない、猛獣もうじゅうを捕まえるための強力なバンドがいくつもにぎられていました。

 もしや────この期に及んでねずみドラゴンを捕まえるつもりなのでしょうか!?


(つづく)

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