恋のダンクシュート

第11話 天秤の心 〜 告白 〜 果たし状

そして私は無事に退院し、劉樹君が言っていた事が明らかになった。

ある日の部活終了後。

「夕飛、当番だったんだ」

「ああ。つー事で、お前、俺の代わりに当番やってくんね？」

「は？残念でした！私は、マネージャーの仕事がありますぅ〜。まあ、夕飛が、マネージャーの仕事してくれるなら良いけど」

「出来るかよ！」

「だったら私に自分の仕事押し付けないで！みんなにバラすよ？」

「うわ〜、タチ悪すぎだろう？」

私達は騒ぎつつ、各々の仕事をする。

「なあ」

「ねえ」

私達は、同時に口を開いた。

「何？」

「何だよ？」

再び、同時に口を開く。

「………………」

「お前から話せよ！」

「夕飛から話しなよ！」

「じゃあ、ジャンケンして勝った方からな！」

私達はジャンケンをし、私からとなった。

「彼女と別れたって？」

「ああ、別れた」

「夕飛の事だし気に障る事したんじゃないの？」

私は劉樹君から話を聞いたものの知らない振りして尋ねた。

「違うし！」

「じゃあ、何？」

「お、お前には関係ねーだろ？」

「そ、それは、そうだけど…」

「そういうお前は、劉に告られたんじゃねーの？」

「されたよ。だからって別に夕飛には関係なくない？」

「確かに関係ねーけど…」

「………………」

「全然関係ねーわけじゃねーし」

「どうして？……あっ！…もしかして……夕飛…劉樹君が好きなの？えっ…！？まさか、夕飛って、そっちの趣味？あー…だから彼女と別れ…」

「勝手な思い込み辞めてくんね？俺は……」

「…何？」

「何でもねーよ！」

「は？何それ！」

「ほらっ！早くしろよ！手が止まってっぞ！…つーかさ、お前、劉と付き合ったら良いじゃん！」

「えっ…？」

「アイツ良い奴だし、お前の事、マジ(本気)みたいだし」

つまりそれって……

私は恋愛対象じゃないって事だよね？

好きな人から言われたくない

言葉だった……

でも……

今の私には…

言える資格なんてない……

だって……

私の心には…

２人の間を

行ったり来たりしてるから………

「…そうだね…じゃあ…夕飛は…若南にでも告白する感じ？」

「は？若南ちゃん？えっ？どうしてそうなるんだよ」

「…好きな人……いるらしいじゃん」

「…あー…いるけど？…つーか…知ってたんだな」

「……誰かは知らない。彼女と別れた理由も、その事があるからなんでしょう？」

「…そうだけど」

「告ちゃえば？」

「…出来たら…とっくにしてるし…」

ポツリと私に聞こえるか聞こえない声で夕飛は言った。

「えっ…？」

「出来たらしてんだよ！今、俺の目の前にいるお前になっ！」

ドキン…

「えっ…？…夕…飛…？」

「…だけど…劉に先越されたし…」

「…そんなの…そんなの！関係ないじゃん！」

「えっ…？」

「…言ってよ…言ってくれれば良いじゃん！私だって…私だって！夕飛が好きなんだよ！」

「…えっ…！？」

「…でも…駄目なの…」

「真央？駄目って…どういう…」

「私の心ん中には…２人の間を行ったり来たりしてるから…最低なんだよ…」

「樹砂羅　夕飛っ！」

体育館内に響き渡る、夕飛の名前を呼ぶ人影。

視線の先には

「…劉…」

「…劉…樹…君…」

ダン

一回、ドリブルをする劉樹君。

そして、夕飛目掛けてバスケットボールをパスした。

バスケットボールを受け取る夕飛。

「お前に果たし状だ！」

「…果たし状？」

「………………」

「今度、マンツーで男と男の勝負しようぜ。初めて同じ女(ひと)好きになったんだ。恋愛絡みの真剣勝負って人生初かもしれないね」

「…お前…マジで言ってんのか？」

「マジだけど？」

「……………」

ダン

夕飛は一回、ドリブルをすると、劉樹君にバスケットボールをパスした。

「いいぜ！その闘いの話のった！望む所だ！」

そう言うとビシッと片方の人差し指を劉樹君に向かって

指差すと

「絶っ対！お前に負けねーからな！」

それに応えるように、劉樹君も夕飛に向かってビシッと片方の人差し指を向けた。

「その台詞、お前にそのまま返す！俺も負けないから！」

二人は同時に手をおろす。

「真央ちゃんも迷いの中にいるみたいだし、負けた奴が身を引けとは言わないけど…ゆっくりで良い。選ぶのは俺達じゃなくて、山戸　真央。本人」

ドキッ

「えっ…？」

「人生には、勝ち、負け。要は、選択肢は２つしかないんだから。もし、例えドローだったとしても、選ぶ権利は真央ちゃん。誰と付き合うとか付き合わないとか、真央ちゃんが選んだ事には文句なし！」

「真央の気持ちで素直に、自分に嘘つかないで答えてくれれば良い！」

「…でも…真剣勝負なんだよね？」

「そう！真剣勝負！」と、劉樹君。

「だけど…コートで見届けるって特別な選択肢もあるわけだし。真央が、自分の想いに素直になれば良いから。勿論、劉も俺も、お前が決めた事に文句言わねーよ」

「真央ちゃんが、俺達がコートでしている姿を見ていく！と決めたなら、それで良い。滅多にない条件だからね。元々、マネージャーになった理由はそれを含め、その条件でもあったんだから。とにかく！俺達に試合させて」

「…うん…分かった…」