第9話 胸に秘める想い
「良かったな?生きてて」
「お陰様で!ていうか酷くない?」
「そうか?」
「そうだよ!でも…良かった…バスケ部大丈夫だったんだね」
「まあな」
「心配で仕方がなかったんだ」
「つーか、お前は自分の心配しろよ!下手すりゃ死んでるぞ!」
「そうだね」
「そうだねって…お前な〜」
「ごめんね。でも…2人が無事で良かった」
「お前かいなきゃ意味ねーだろ?」
「えっ…?」
「俺達のバスケ見たいんだろう?」
「うん。見たいよ。でも、私がコートにいなくても二人の光景は目に浮かぶから大丈夫!それに、もう戻れないわけじゃないんだし!」
スッと両頬に触れる。
ドキン…
「戻れねーよ」
「…えっ…?」
「今しかない時間…その瞬間はもうねーんだよ。過去には戻れねーのに、お前がずっと側でコートで見守ってなきゃ意味ねーんだよ。何の為にマネージャーになったんだよ」
「…それは…」
「さっさと退院してこいよな!だけどきちんと傷口治してからな。じゃあな!」
病室を出て行き始める夕飛。
「夕飛っ!」
「ん?」
足を止め振り返る。
「どうして?」
「えっ…?」
「どうして毎日、来てくれるの?まさか責任感じて…」
「お前が暇してるだろうと思って来てるだけ。他に理由はない。結構、暇潰しになってるだろう?俺が来ると」
「…嬉しいけど…私は大丈夫だから」
歩み寄ると、オデコにキスをした。
ドキン
「夕…」
「じゃあな!」
夕飛は病室を出て行った。
「夕!」
「…劉…」
「責任感じてるくせに嘘つくなよ」
「……………」
「そういうお前こそ責任感じてんだろ?」
「ああ、勿論。でも…俺は他に理由がある」
「えっ…?」
「つーか…彼女いる事、真央ちゃん知らないんだから下手に近付いて、思わせ振りな態度すんの辞めた方が良いと思うけど?」
「…………」
「まあ…お前の本心知らないけど。じゃあな」
二人は別れる。
そして
コンコン
病室がノックされる。
「どうぞ」
「よっ!」
「劉樹君。あっ!今さっき夕…」
「さっき会った」
すると、フワリと抱きしめられた。
ドキン
「…劉…樹…君…?…ていうか…最近、二人、別行動だよね?喧嘩でもした?」
抱きしめた体を離す劉樹君。
「喧嘩はしてないから安心して」
「良かった!あっ!若南とは相変わらず?」
「えっ…?」
「いや…今、二人の現状分からないから」
「相変わらずだよ。あれから、もう一度告白されたけど…断った」
「…そっか…」
「でも…若南ちゃんは…友達以上は無理な気がする」
「えっ…?」
「…夕と俺…世界に進出したいから」
「えっ!?世界…!?す、凄いっ!二人なら絶対行けるよ!」
「でも…そうなると犠牲にしないといけない事があるから」
「えっ…?」
「二人の天使を連れて行くわけにはいかないから」
「…天使…?」
「そう!天使…。大人しいけど実はしっかりしている天使と、何をやらかすか分からない放っておけない天使」
「…そうなんだ…」
「そんな俺は、一人の天使に心奪われてる」
「えっ…?告白しないの?」
「今はな」
「えっ?じゃあ、いずれするつもりなんだ!やっぱり、若…」
「違うよ。それは違う。現時点では…若南ちゃんは当てはまらない」
「じゃあ…将来的には…」
「それは…どうかな?あるかもしれないし、ないかもしれないけど…正直…俺にも分からないから」
「…そうか…」
「…それじゃ帰るよ」
「えっ…?今来てばっかりなのに?」
「真央ちゃん、怪我人。自分の事、もっと自覚した方が良いよ。だから長くいるわけにはいかないから。早く退院して来な」
「…うん…」
劉樹君は病室を出て行く。
病室の前のドアに寄り掛かり
「…本当…俺…夕と違って情けねーよな…」
その後、私は退院をした。
そして、夕飛が2つ下のマネージャーと付き合っている事を知った。
そんな自分の想いも気付いてしまった。
私…夕飛が…好き…?
認めたくないけど
認めざるをえなくて…
喧嘩友達に近かった私達は
いつの間にか気付かないうちに
好きになっていたのだろう…?
人は他人のモノになった時
気付くもの
でも
その時は
既に遅くて
後悔する
部活終了後。
私は雑用をしていた。
「真央ちゃん」
「劉樹君。あれ?若南と一緒じゃなかったの?」
「違うけど」
「でも…一緒に帰る位は…。用事あるって言っていたから、てっきり劉樹君と一緒に帰ったんだと思った」
「残念ながら違う。で?何してんの?」
「あー、今日中に済ませなきゃいけないやつ。マネージャーの仕事」
「一人で?」
「簡単な作業だから」
「手伝うよ」
「大丈夫だよ」
「頼りなよ」
「えっ?」
「真央ちゃん、一人で頑張り過ぎ。もっと頼りなって」
「劉樹君…」
「後、他人の心配するよりも自分の事、心配したら?」
「えっ…?」
「夕の事…好きなんだろう?」
ギクッ
「えっ?…や、やだな…そんなわけないじゃん!」
「……………」
「別にアイツの事なんか好きじゃないから」
「…そっか…」
「とにかく!劉樹君は帰りなよ。私は大丈夫だからさ」
「…本当…夕が羨ましいかも」
「えっ…?劉…」
グイッと引き寄せキスされた。
「…ずっと…見つめているけど振り向いてもらえない。想いは一方通行…まるで、前の若南ちゃんみたいな俺。どうして…夕飛なんだろ?」
「…劉樹君?」
「俺…初めて会った時から好きだった」
ドキッ
「えっ…?」
「若南ちゃんから告白された時、マジ驚いたけど薄々、気付いてはいたんだ。その時は、まだ自分の本当の想いに気付いてなくて…だけど…あの事件で確信した。失いたくないって…」
「劉樹…君…」
「あの日、マジどうなるかと思ったけど、今、目の前にいる真央ちゃんが好きなんだって。正直、自分の想いに気付くの遅くて…普通に接していたけど無意識に真央ちゃんを目で追ってた…自覚していない方がタチ悪すぎ」
「………………」
「真央ちゃんも諦めないで素直になった方が良いよ」
「諦めるとか、諦めないとか…私には関係ないから。それに…告白した所で何も変わらないから」
「…それは…どうかな?アイツ…案外、鈍感だしな。まあ、俺も人には言えないけど…。…でも…これだけは言っておく。アイツ、バスケ一筋だから。告白して恋愛した所で変わらない日々かもしれないけど…アイツの側で見守る事は出来る」
ドキン
「その時間、その瞬間は、二度と戻って来ないし戻れない。マネージャーになった理由の交換条件。想いを伝えた所で変わらなくても同じ時間過ごしているのとは変わらないんじゃないかな?」
「………………」
「恋愛って楽しむ事だし変に期待するよりも側にいられるだけでも良いって…甘い展開なくても…今を楽しむ事が俺達4人は、それが合ってる気がする。“恋愛するな” じゃないけど、夕も俺も…バスケが一番の考えしかないから、きっと期待するだけ無駄だと思う」
「…劉樹君…」
私達は雑用を始めた。
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