第4話 誤 解

それから数ヶ月が過ぎたある日の事だった。

樹砂羅君の事件が明るみになり噂が広まった。



「マジかよ!」

「あんな顔してやる事ヤベー奴じゃん!」



みんなが違う目で見始める。


そして、ある日、クラスの一部の男子生徒が樹砂羅君の机を囲んでいる。



「なあ、お前、暴力事件起こしたんだって?」


「よくここにいられるよな?普通なら刑務所行きじゃね?」


「少年犯罪だもんな?」




「………………」




「何か言えよ!」


「あっ!コイツもしかしてビビってんじゃねーの?」




ガタッ

席を立つ樹砂羅君。




「………………」



樹砂羅君は黙って席を外し教室を出て行き始める。




「やっぱ、ビビってんだ」

「何だかんだいって弱ぇ〜のな」




「………………」



「なんか…やっぱり怖いね…本当だったんだね」


と、若南。




私からも若南には、軽く話をした。


暴力事件を起こした事は言わなかったけど、どうやら話を別の人から聞いたようだ。



「…みんな何も理由知らないからだよ…」

「…真央?」



私は席を立つ。


「ちょっとっ!何なのっ!?みんな寄って集(たか)って暴力事件を起こしたからって急に態度変えちゃってさ」


「何だよ!事実を言って何処が悪いんだよ!」


「本当の理由知らないくせに!」


「だったら、お前は理由知ってんのかよ!」


「彼・樹砂羅君は、部活の…」




「山戸 真央っ!」




ビクッ



「よせよ!」


「でもっ!」




グイッと私の手を掴むと、教室から連れ出し始める。




「な、何!?は、離してっ!理由あって先生…」




ドン


壁に両手で行く道を塞いだ。



ビクッと身体が強張る中、至近距離にある顔にドキッと胸が大きく跳ねる。



「お前には…関係ねーだろ!?…つーか…その話…誰から聞いた!?」


「そんなの…」


「劉か?」


「違っ…!彼は関係ないっ!分かったら退いてっ!」




私は押し退け、教室に戻り始める。



グイッと再び引き止められ、今度は両手を壁に押さえつけた。



「ちょ、ちょっと…離…」


「お前の話し聞いた所で、暴力事件を起こしてるのは事実なんだよ!口出してんじゃねーよ!バスケの話、二度とすんなって言ったはずだけど?その唇にキスでもして、塞いだ方が良い?」


ドキッ

そう言うと顔を近付けると、もう少しの所で止めた。



「………………」



ポンと頭に触れる。



ドキッ



「劉以外、知る奴いないから。隠しても無駄。とにかく、その事は、お前の胸に留めといて。何も話さなくて良い」


「いやっ!」


「あのなぁ〜」


「私は話す!」



そう言うと、教室に行くのだった。







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