第2話 もう一つの顔と友達
「えー、そうかな?」
「そうだよ!何か謎があるみたいでならないんだよね」
「思い過ごしだよ。彼、人気あるし、そんな謎があるなんて思えないって」
私は、若南に樹砂羅君の話をする。
「じゃあ、あれだけ、バスケが超がつく程うまいのに断わる理由が分からないって!不思議じゃない?」
「別にバスケは興味ないんじゃないの?」
「いーやっ!絶っ対!そんなはずない!凄く楽しそうだった気がしたし」
「じゃあ、体を動かす事が好きなんじゃない?」
「だったら他の部活でも良いじゃん!でも、あの様子じゃ絶対バスケが向いてる!」
「真央、こだわり過ぎてない?別に彼の事だし、彼なりに何か理由あるんじゃないの?」
「…じゃあ、その、理由って?」
「知らないって!そんなに気になる本人に聞けば?」
「絶っ対に答えてくれない!」
「分かんないよ?」
そんなこんなで、その日の放課後。
正門を出る直前、正門に1つの影がある事に気付く。
後ろから見た所によると身長は、割と高い雰囲気だ。
「カッコイイ♪」
「彼女待ちかな?」
「どうなんだろう?」
「身長高くない?」
周囲から、そういう声が聞こえる中、
私達も正門を出た。
「うわ…本当、カッコイイ。ねえ、真央」
若南が言ってきた。
「あ、うん…」
金髪まではいかないけど、その色に近い髪色の男の子。
他校生と思われる。
一瞬、不良?なんて、見た目で判断してはいけない事は分かっているんだけど、髪色に目を奪われてしまった私の第一印象だ。
一瞬、目が合うものの、私達は通り過ぎ始める。
その時だ。
「なあ」
声をかけられた。
「はい?」と、私。
「ここの学校にさ、樹砂羅って奴、転入して来たろ?」
「樹砂羅?樹砂羅って…樹砂羅 夕飛君?」
「ああ」
「彼に何か?」と、私。
「いや、聞いてみただけ」
帰り始める男の子。
「待って!あなた誰!?彼の何なの?樹砂羅君とは、どういう関係!?変な騒動起こす様な事はしないでよ!」
「ちょ、ちょっと!真央、よしなって」
「だって、明らかに不良…」
ドキッ
私に歩み寄り、少し屈(かか)んで至近距離に顔を近付ける。
「あんた思ったまま口に出すタイプっしょ?」
「えっ?」
「別にあんたが思っている不良じゃないんで!」
「嘘だ!」
「本当だし。バカ正直になって言葉発するの程々にした方が良いんじゃ?」
「あなたに言われたくない!ていうか友達にあんたみたいな人いるから転入前にバスケで騒動起こすんだ!」
「は?アイツ何したんだ?問題起こしたわけじゃないんだろ?」
「ある意味問題だよ!バスケ部乱入して次々に部員をドリブルで抜いてダンクかましてたし!」
「ぷっ…ハハ…」
無邪気な笑顔を見せる男の子。
私の胸の奥が小さくノックした。
「何!?どうして笑うの!?」
「アイツに宜しく言っといて!」
「答えになってないんだけど!」
ポンと頭をされた。
ドキッ
私の胸が大きく跳ねる。
そして、すぐに頭から手が離れる。
「アイツしてみれば挨拶だったんじゃ?バスケに命かける位愛してたから。ボール持ったらアイツは人が変わるようになるから」
「えっ…?じゃあ、どうして?」
「えっ?」
「だったら部活入っても良いはず…断ってる理由は?」
「あ〜…それは…内緒♪」
そう言うと自分の唇にシッとする中、ニコッと微かに微笑む。
ドキン…
見た目と違う茶目っ気のある彼に胸がざわつく。
「俺の名前は、紗々木 劉樹(ささき りゅうき)アイツに宜しくな!」
そう言うと彼は帰って行く。
「カッコイイ〜♪」
「若南…」
私は呆れつつも、彼の背中を見つめた。
次の日。
「へえー、劉が?」と、樹砂羅君。
「うん。じゃあ、伝えたから」
「ああ」
「後、樹砂羅君に聞きたい事があるから、放課後残ってて!」
「良いけど」
「ありがとう」
そして、その日の放課後。
みんなが帰った後、2人で残っていた。
「で?聞きたい事って何?彼女がいるとか?愛の告白でもするの?」
「違う!バスケ!」
「えっ…?あっ!俺に教えて欲しいって?」
「違うから!」
「…じゃあ…何?」
顔の表情が一瞬曇る。
「あれだけバスケ上手なのに、どうしてバスケ部に入らないの?好きなんでしょう?」
「……………」
「…別に」
「えっ…?」
「久しぶりだったから、ちょっと楽しませてもらっただけ。だから、全く興味はない!」
「でも…あの人…」
「あの人?…もしかして劉?」
そして、グイッと腕を掴み、ドキッと私の胸が大きく跳ねる中、至近距離で
「アイツに何言われたか知んねーけど、バスケの話は二度と口に出すんじゃねーよ!俺、嫌な思い出しかねーから!」
パッと離す。
「ちょ、ちょっと…!」
私が呼び止めるも、樹砂羅君は、帰り始める。
「じゃあね〜。案外、純な山戸 真央ちゃん」
「…えっ?」
《明らかにキャラ変した…よ…ね…?》
無邪気で明るく社交的な彼から想像もつかないくらいの口調で、一瞬、豹変したのが分かった。
そんな樹砂羅君は帰って行った。
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