プロットを作ろう その②

 あの後、文芸部へ乗り込むのだけは阻止できた。しかし、畑中を呼べとの大合唱が響きわたり僕は屈した。翌日に持ち越されたその計画の為に僕は今自分のスマホを見つめている。

 畑中唯。文芸部部長。同級生にして元彼女。ラインでメッセージを送ろうにもブロックされているおそれがある。


〉お久しぶりです。


 スマホを握る手に汗がじんわりと濡れている。メッセージは届いた。しかし、無視される可能性は高い気もしている。


〉おとといは兎を見たわ。昨日は鹿。今日はあなたを見なかったけど。


 『たんぽぽ娘』か。あいかわらず面倒な会話だ。変わってない。


〉明日は僕を見ることになるよ。

〉なんで?

〉きみにお願いがあるんだ。明日、会えないかな。

〉嫌です。

〉そこをなんとかお願いします。

〉どうせ小説の書き方を教えてくれ、と言うのでしょう?


 どうしてわかった。藤堂先生がすでに根回ししていたのか?あいつが?ありえない。


〉流石、畑中さん。なんでも知ってるな。

〉なんでもは知らないわよ。知っていることだけ。

〉では、どうして僕が小説の書き方を知りたい事を知っていたんだ?

〉第二文芸部は生徒会から小説を書かされているんでしょ。渡部先生から聞いたし。


 あのジジイ。あいつも変わらず良い性格してやがる。

 渡部先生とは文芸部の顧問だ。国語の教師で学校でも古株の文学オタク。あいつに無理やり読まされた古典文学は数えられない。


〉まぁ、どうしても小説の書き方が知りたいって言うのなら教えてあげなくもないよ。

〉ほんとうに!?

〉部活に出て来るならね。

〉いや、僕は文芸部をやめた身だし。それは気まずい。

〉やめてないよ。渡部先生が退部届を捨ててたし。

〉はぁ~~!???

〉知らなかったの。まぁ知らないか。

〉そんなのありかよ。

〉ありだよ。だって前の生徒会長はなんでもありの藤原道隆だよ。当然、兼部だろうと幽霊部員だろうと認められてた。

〉本人の意思は??

〉その意思表示は渡部先生が潰したからね。退部届を出そうがその部活の所属になっているのだって前からあったらしいし。

〉つまり僕は今でも文芸部員だと。そういうことか。

〉そういうこと。それと来るなら一人で来てね。わたしは今でも三枝さんのこと苦手だから。

 

 まだ根に持っているのか。それとも別の理由があるのだろうか。

 何はともかく面倒な事になった。三枝に言っておくべきか。それもまた面倒な事になる。絶対についてくると言いそうだ。そうなったらそうなったで流れに任せてみるべきか。今は小説を書き上げることが何より重要だ。


〉わかった。明日は一人で行くよ。

〉了解。渡部先生には三野瀬が来ることは伝えておくよ。

〉ありがとう。それじゃ、明日部活で

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