自分を知ろう その③

 昨日はアニメ鑑賞で終わってしまった。結局、藤堂先生が見たかっただけなのだろう。まったくいい加減なやつだ。

 あの後、宿題を出された。マインドマップという自己分析の方法だ。描き方は、表現したい概念の中心となるキーワードやイメージを中央に置き、そこから放射状にキーワードやイメージを広げ、つなげていく。藤堂先生が少し書いた三枝のマインドマップを参考に書いてみろと言い渡された。

 今回の中心となる物は書きたいジャンルだ。僕の場合はアクション。まあ、バトルと書いてもいいのかもしれない。何を書けば良いのかわからないまま夜は更けていった。

 放課後、図書準備室へと向かう。途中で三枝と合流した。

「マインドマップ書けた?」

「全然。」

「嘘??わたしはめっちゃ書いたよ。」

 と言って見せてきた。A3の用紙にびっしりと書かれたそれは見づらかった。

「大地のも見せてよ。」

「僕のはこんな感じ。」

 と、バッグから取り出して三枝に見せた。

「少な!!」

 まぁ、そんな反応だろう。2、3個しか書かれていないそれはほぼ白紙に近かった。

「藤堂に怒られるよ。」

「知らんがな。そもそもこういう自己分析は苦手なんだ。」

 グダグタと喋っていたら部室へとたどり着いた。

「お前らやってきたか。」

 部室で待ち構えていた藤堂先生は言った。僕たちはマインドマップを提出した。ふむふむ、とものを考えているようにみえる。きっとみせかけだろう。いつもの事だ。

「三枝はよくかけているぞ。むしろ書き過ぎでこれをまとめるのは苦労するぞ。逆に、三野瀬はほぼ何も書いてないな。」

 そう言われても仕方ない。アクション。スマブラ。それしか書いていない。

「思いつくのはこれだけしかなかった。」

「結局、ここでやっていた遊びだけだね。」

「まあね。アクションってそもそも何よ。」

「バトルでもいいかな。異能バトルとかあるし、何か引っかかるものはないのか?」

「ないな〜、ブギーポップや型月は好きかな。」

「この前読んでた官能小説は?」

「あれは『Carnival』だから違うな。バトルやエロシーンないし。」

 他に何かあるかな、と頭を悩ませる。バトルか。

「ジョジョ?」

「何部が好きなんだ?」

「7部。」

「スティール・ボール・ランか。」

「レースがベースなので面白いかな。」

「目的を最初に提示しているから乗りやすいよね。」

「それはわかる。」

「後は鬼滅の刃、チェンソーマン、呪術廻戦とか面白かったな。」

 つらつらと上げてみた。なんか第二文芸部にくると肩の力が抜ける。好きな事をそのまま話せる。たぶんこれが僕のこの部活を守りたい理由だろう。そのことがわかっただけでもマインドマップの意味はあったと思う。

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