自分を知ろう その②
「自分の好きなジャンルはわかったな。次はそれが何で好きなのかを考えていこう。」
「ちょっと待て。僕は納得していない。」
「大地は黙ってて。」
いつもこれだ。僕の意見は無視されて話が進んでいく。そもそも我が第二文芸部が出来た時も自分の意志とは無関係に部員にされていた。文芸部でだらだら本を読んでいた日々が三枝の一声で終わってしまった。
「とりあえず、何でそのジャンルが好きか言ってみろ。」
「わたしは関係性かな。好き同士の二人が付き合うか付き合わないかグダグダしているのが好き。」
「案外まともな意見だ。」
「エロ漫画ばかり読んでいる人間だとは思えない。」
「お前らちょっと黙れ。」
藤堂先生は紙に三枝の言ったことをメモっている。中心には恋愛と書かれている。三枝の発言を書いたメモと恋愛を矢印で結んだ。
「三枝、他にはないか。何でも良いし好きな作品でも気になる事があれば上げていけ。」
「そうだな〜、最近読んだのだと『彼氏彼女の事情』が面白かったかな。」
「古いな。」
「なにそれ?」
「昔の少女漫画だよ。それでアニメと漫画のどっちだ?」
「アニメもあるの?」
「……あるよ。」
「なぜ溜めた。藤堂。」
「三枝、どこで読んだんだ?流行りの漫画ではないし。」
「あそこの棚に入ってるよ。大地も読めば?」
「藤堂!貴様の所有物かよ!」
「何か?」
「ここはお前の倉庫じゃねえ。」
「散々人様の本を読んでおいて言えた立場か。」
「知っているか?本来、ここは図書準備室だってことを。」
「当然知っている。」
「当たり前の事を言うなよ。」
待て待て待て待て!僕が間違っているのか。いや違う。
「ここは藤堂の倉庫じゃねえよ。と言いたかったんだけど伝わらなかった?」
「今更すぎる。」
「勘違いするなよ。あのテレビは学校で買ったやつだからな。ゲーム機は俺のだけど。」
……。知っていた。確かに僕も知っていたが、あらためて聞かされると酷すぎる。藤堂先生が裁かれるのは正当な処罰ではないのか。僕が巻き込まれたのは納得できないが。
「とりあえず、『彼氏彼女の事情』のアニメでも見てみるか?」
「見れるの!?」
「なんでも有りだな。」
藤堂先生はスマホとテレビをいじってなにかし始めた。
「よし出来た。これで見えるぞ。」
「見るのかよ……。」
「小説の書き方は?」
「いいから見るぞ。創作の糧になる。」
テレビ画面にアニメが流れ始めた。
夢の中へ。夢の中へ。いってみたいと思いませんか。うふっふ〜。
エンディングが流れる。あぁ庵野監督か。だから藤堂先生は集めていたのか。オタクが。自分の心配でもすればよいのに推しを推すことに夢中になり我を忘れる。
そして、時間は無情にも過ぎ去っていった。
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