第24話
体育館には、一季たちが制作した宇宙船がなかった。ここに置いていたという、その形跡すらなかった。一季は宇宙船を置いた辺りを立った。
「この辺りに・・・おっ!」
一季は鼻の先を動かした。この匂い・・・まただと彼女は思い、あれこれ想像を働かした。彼女は体育館の中をぐるりと見回した。だが、彼女の探しているものは見つからなかった。
「どうしたの?何をさがしているの?」
雪美は一季の鼻をくんくんさせる変な動きに気付いた。
「違うの。何か、匂わない!」
一季の犬のような花の動きが止まらない。
雪美も鼻をつんつんさせた。
「全然。そんなことより、どうしょう?」
雪美はがっくりと肩を落としている。
「大丈夫よ。何とかなるよ。するよ、私が・・・」
今実際どうするかという策は、彼女にはなかった。
「まずは、体育祭が今日あるのかな?」
雪美は、
「ないって。そういう校内放送があったよ」
といった。
「そう。でも、今年は中止ってことはないよね」
一季は半ばそのほうがいいと思った。
「それはないよ。でも、クラスごとにモニュメントのようなものを作るってのは止めるかも。だって、私たちのクラス、このままだと何にもないのよ」
雪美は泣き顔になっている。
雪美の気持ちも分からないではなかったが、一季はそんな気分にはなれなかった。気になることがまだあったのである。
一季は弘美のクラスを覗いてみることにした。廊下から教室の中を見たが、いつもの席に弘美はいなかつた。それどころか、その席には彼女の知らない男の子が座っていたので ある。
「あれ!」
一季は驚いた。彼女は教室から出て来た人に、
「和泉弘美くん、今日は休みですか?」
と聞いた。
聞かれた男の子はびっくりした目で夕子を見て、
「誰?このクラスには、そんな名前のひとはいないよ」
と素っ気ない答えが返って来た。
「えっ、うそ!弘美、和泉弘美くんって・・・」
一季は次の言葉が出て来なかった。
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