第15話 共闘戦が決まってしまった
水曜日。登校したオレは、大友悠に絡まれている同居人を見て愕然とした。
嘘だろう、なにやってんだ。コイツ、そこまで馬鹿だったのかよ。助けを求めるような目で、シブイバシがこっちを見た気がした。カバンを置いて、オレは馬鹿と同居人の間に割り込んだ。
「おい、無能力者様よ。なにやってんだ」
「何やってんだちゃうわ、ワレ。よくもエージにワレぇ……」
関西弁も相まって、マジでチンピラみたいな態度だった。昨日の試合は、むしろ蓬田英二がハメたようなもんだぞ。本人でもないのに、まるで被害者ヅラしているもんだから、本当にタチが悪すぎる。
「……おい、やめろ」
同じタイミングで割って入ったのが、板垣央という銀髪のイケメンだった。このイケメンと大友悠は、蓬田英二と三人で天下無双っつうバンドを組んでいる。
「エージが休みなのは、別に昨日が原因じゃない」
板垣央の台詞を耳にして、オレはすぐに周囲を確認した。色とりどりの髪色が居並ぶ教室には、銀色の髪は目の前のイケメンしか居なかった。昨日の試合の影響にしか思えない状況だが、同室の板垣央が違うってんなら違うのだろうな。
「……チッ」
舌打ちをした大友悠の態度に、オレは少し頭に来た。しかし、もっと血が昇っていた奴が目の前に居た。それは誰でもない、シブイバシ本人だった。
分かっていたら止められたのだが、オレ自身もシブイバシがここまで沸点が低いとは思わなかったんだ。
ときに人は怒りの限界を超えると、逆に黙る性質の奴が居る。さっきから一言も喋らなかったんだから、もっと注意を払うべきだったんだ。
なんとシブイバシが、ここで大友悠の腹に蹴りを入れてしまったんだよ。驚いたオレも、恐らく板垣央もビクリと動きが止まってしまった。
そこまで強い勢いでは無かったから、大友悠はすぐさま立ち上がる。そして仕返しとばかりに、シブイバシに拳を振りかざした。
「なんや、ワレえ!」
これはマズい、マジでヤバい。殴り返してくる前に、オレは大友悠の右腕を掴んで制止した。
位置的にオレの方が馬鹿に近かったし、板垣央がシブイバシの近くだった。だから向こうが、シブイバシの方を止めてくれるって思うだろ。
しかし板垣央も、大友悠の左肩を抑えて止めていた。
右腕はオレが、左肩を板垣央が抑えている状態だ。誰もシブイバシを制止していなかったから、二回目の蹴りが大友悠の腹に入った。
「なんで、お前が馬鹿止めてんだよ!」
「……いや、むしろお前が小林止めろよ」
大友悠が暴れ出したが、板垣央が何とかするだろう。オレは手を離して、シブイバシの方の腕を掴んだ。
しかし何故か、大友悠の拳がオレの方へと飛んで来た。見ると板垣央の制止を振り切っていたもんだから、オレもカッとなってしまった。
「お前、馬鹿止めろよクソ銀髪野郎!」
「お前がいきなり馬鹿離すからだろ、遺失届!」
もう、そんな感じでゴチャゴチャになりかけたもんだから、最終的にはクラス全員でシブイバシと馬鹿を何とかした。
そんなに暴れ足りないなら、能力戦でやれ。誰かが放った一言のせいで、天下無双と雪崩式ドロップスの共闘戦が決まってしまったのだった。
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