第12話 やな予感がする
放課後、能力戦の時間がやって参りました。
いつもならば音楽室の前に居る我々なんだが、流石に雪崩式ドロップスの面子が出るなら、渡り廊下を選ばざるを得ない。こういう時だけは、一年A組が特等席を取れる風潮は有難い。
ロックが右隣、そしてゼータローが左隣に居た。昼休みに誰と食べようか、オロオロしていたゼータローに声を掛けたら、懐かれてしまったようだ。
基本的に男子寮は二人部屋で、大体の奴は最初の友達が同居人になる。だがゼータローの同居人は、隣の組らしいのだ。
我々雪崩式ドロップスと関われば、蓬田英二が良い顔をしないだろうがな。今日は、それどころじゃ無かったみたいだな。仕方ないな、主催者様自身も初試合だからな。
まず中庭に現れたのは、燃えるように真っ赤な髪の情熱的な男。我らが盟友シブイバシの首には、稲妻みたいな紋様が浮かび上がってる。
燃える男なのに何で雷なんだよ、って思うオレ。これから闘う蓬田英二の手によって、防護壁が張られた状態だ。
「あの首のって……」
「ああ、文様な」
ゼータローの台詞は、至極当然なお問い合わせだ。ならば担当にお繋ぎ致します。尚、この通話は一分三十円で、サービス向上の為に録音しています。担当のミシェルです、御用件は何ざんしょ。なんで刺青みたいのが、いきなり出てきたんですか。知るかボケ。
蓬田英二の能力で作られる防護壁そのものは、能力者じゃなきゃ目視出来ない。しかし元々は一般人に向けて開発された能力なので、分かり易く目印が浮かぶようになってる。
「なんで、シブくんは雷っぽいの?」
「それは分からんのですよ」
オレの代わりにロックが答えた。我々の持つ能力ってのは、本人でも良く分からんっつう場合が多々ある。それこそ、吐いて捨てる程ある。
開花で髪が何色になるか分からんように、蓬田英二自身も首にどんな紋様が浮かぶか、本人すらも知らないんだってさ。しかし頭の良さそうなロックが、言う方が説得力があるな。
「防護壁が割れると、あの紋様も消える。分かり易いだろ」
「そだね、うん」
少し楽しみにしているのか、期待の籠ったような目でゼータローは再び中庭に目を向けてる。こういう姿勢見ると、もっと意識的に活動する奴らとツルんだ方が良いような気もする。
赤髪のシブイバシの前に立つ銀髪は、主催者様の蓬田英二。なんか他の奴の紋様と違って、まるでアルファベットのジーが重なったような形しているな。なんか分からんが、特殊な気がするな。気のせいならいいけど。
不敵な笑みを浮かべた蓬田英二は、シブイバシへと拳を差し出した。互いの拳骨が重なれば試合開始、要するに手合わせって意味だな。
「泣くなよ、主催者様よ」
「……ふふっ」
挑発に満面の笑みで答えた蓬田英二は、そのままシブイバシの拳に自分の拳骨を当てた。大きな鐘が鳴り響き、試合は開始となった。
しかし主催者様、なんか余裕なのが不思議だ。百合の紋章保持者たち程じゃないが、シブイバシもそれなりにガタイはいいぞ。
蓬田英二より十センチ以上は身長差あるし、中学生と高校生くらいだ。どう見ても不利過ぎる状況なのに、のんきに笑っていられるのは逆に怖いくらいだ。
「……やな予感がする」
腹立つことに、オレの一言でロックが噴出した。ロックだから許すがよ、他の奴がしたらボコボコもんだ。
「いやいやいや、我々の誰より強いシブくんですぞ。……いくら何でもエージくんにね、負ける筈がありませんよ」
だと良いんだけどな、ロック。今のお前の台詞、完全に前振りみたいだからな。なんか嫌なフラグ立てちまったみたいで、気が気でならないぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます