第10話 ええとコーラが何だっけ?
「なんだよ、ツートンはアレか。能力戦やってみたいのか?」
「いやツートンは君もでしょって」
礼儀と思われたのか、一応ツッコミは入れてくれた。
「でも……難しそうだね。なんか、みんな闘い慣れているみたいでだし」
「あ」
そうか、こいつ転校生だったわ。
「まだ基礎訓練、受けてないのか」
「そうなんだよね」
基礎訓練とは、授業の一環で行われるアレだ。
オレら能力者は貴重な存在であり、犯罪者には格好の道具にされ易い存在だ。自分の身は自分で守るなんたらの為、体育の代わりに基礎的な格闘訓練が行われる。
何かあった時の為に、自衛手段を身に着ける為の一つな感じだ。武器にでもなるような能力を持つ奴なら、別にいいんだろうがな。オレみたいに使えない能力ならば、なおさら自衛手段が必要なんだわ。
「なんかスポーツとか……」
オレの質問にゼータローは、一瞬だけギクリとした。なんか聞いちゃいけない話だったのか、地雷でも踏んだのか。
「いや、言いたくないんなら別に……」
「…………」
少し考えるように俯いた後、意を決したかのようにゼータローは顔を上げた。
「実は……僕」
ゼータローの喉を鳴らす音が聴こえたから、思わずオレも固唾を飲んだ。っていうか喉乾いたままだったな、結局爆弾コーラ飲めて無いし。
「引きこもり……だったんだ」
風呂上がりは牛乳と決めてるが、爆弾コーラのリベンジでもいいな。絶対、でかいゲップ出るぞ。今から楽しみだ。
「……ミシェル?」
「……え、ミシェル? あ、オレか」
「聞いてなかったの?」
「聞いてなかった。……すまん、ええとコーラが何だっけ?」
「もういいです……」
何故かゼータローは、沈み込むように顔をガクリと落とした。折角ミシェルって呼んでくれたのに、このザマだからな情けねえ。
「お詫びっちゃ何だが、オレの能力教えるわ」
「いいの?」
「いいも何も、クラス全員知ってるしな」
ゼータローが目を輝かせたもんだから、少し尻込んでしまうわ。なんせオレの能力はな、今は自由に空を飛べる筈でも無いし、身体を強く出来る代物でもない。
単に失せ物を見つけるか、推理ドラマの犯人を当てるくらいのものだ。フェレットアウト。大した能力でもないのに、ゼータローは何故か目をキラキラさせたままだった。
「ええっ、凄いじゃん! 埋蔵金とか見つけられるの?」
「無いもんは見つけられんわ」
埋蔵金が無いかなんて知らんが、持ち主がハッキリしてないと、オレの能力は発動しにくい。いや歴史の教科書見れば、持ち主は分かるけどな。
そういう面では、まだ未開の能力なんだろうな。もしかしたら努力すれば、いけるのかもしれん。いや、どうせ埋蔵金見つけても、国に取られるんだろ。ヤル気せんわ。
「まー、落とし物した奴にアテにされるだけの能力よ」
「いやいや、凄いよ。人の役に立てるじゃない」
別に人の役に立ちたいとか、思ってないし。良いように使われているだけな、気がしてならんなぁ。
そもそもオレの能力って、人を駄目にする種類のやつだと思うんだよな。今日の教師がいい例だわ。無くしたってなっても、アイツ居るからいいや、ってロクに探しもしなくなるんだぜ。
「無くしても、能力者が居るから大丈夫。……ってなるとさ、物を大事にしなくなんじゃね?」
「……お、大人……だね」
なんかの嫌味のつもりなのか。ゼータローの方を見たが、そんな目をしていなかった。
今日会ったばっかの奴だが、皮肉とか言う種類の人間じゃなさそうだしな。何故オレの一言で、そんな感想を持ったのかは不明だがな。
まぁ悪い気はしなかったし、風呂出たら爆弾コーラでも奢ってやろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます