第2話 フェレットだフェレット


 学園島高等部、一年A組。


 このクラスでは放課後に学園公認で、能力戦っつう喧嘩みたいな競技を毎日やってる。


 なんで教師が容認してるかっつうと、要は実験の一つとして、主催者さんが許可を取ってるらしい。


 この学園島っつう場所は、古今東西から様々な能力者が集まる島だ。学園は普通のと同じで授業もあるが、個人の能力の実験なんかもやってたりする。


 学園側も能力の向上とやらに、前向きな生徒は歓迎とかナントカ。


 放課後まで能力開発に勤しむなんて、素敵な生徒達が揃いましたね一年A組は。


 おおよそ、そんな感じなんだろな。


 競技なだけあって、優勝杯みたいな感じで、楯が用意されてる。それが紋章っつうシロモノだ。


 フルール・ド・リス、百合の紋章。


 アジュール・ア・ハープ、竪琴の紋章。


 レオ・パッサント、獅子の紋章。


 この楯を奪い合う競技になってるので、王者じゃなくて紋章保持者ってなってる。


 別にこれを手に入れたからって、金が貰える訳でもモテるわけでもない。ただ単に、一年A組最強と認められるだけ。それだけなのに、皆が最強の名を欲しくて日々闘いを繰り広げている。


 参加条件は一年A組に在籍してること、つまりオレにも参戦権はある。しかし、絶対に出たくない理由が一つある。


 何故ならよ。オレの能力は、探し物を見つけるものだからだ。


 犬っつうよりも、フェレットだフェレット。


 普通の探し物を見つけるんなら、ファインドアウト。


 だがオレの場合、事件の犯人なんかも分かっちゃうんで、フェレットアウトっつう能力名になっている。


 考えてもみろよ。遺失物発見や犯人当てなんて、戦いの何に役立つっつうんだね。ある意味、この答えがオレの遺失物だわ。


 いや違うな。ハナっから持ってねえんだから、遺失ですらない。なんて言やいいんだ。欲求物か、物欲か。なんでもいいわ。


「おい、ちょっといいか」


 帰宅途中のオレを教師を呼び止めたが、無視は出来なかった。なんでも無くした定期を探して欲しいつう話だ。


 クソ食らえ。


 なんてな。思いつつも能力を使ったよ。長いもんには、巻かれないとな。


 教師の定期を見つけて思ったのは、自分が如何にクソ喰らえって奴だわさ。


 何が腹立つって、こんなオレだよ。


 やりようによっては、活かせるはずの能力をな。何で、こんなクソみたいな下らんのに、使わないといけない。


 クソったれが。


 長いもんに巻かれないとな、だってよ。


 教師の定期は、カバンの中から見つかった。何で、くまなく探さないんだ。この島にはクマが居ないからか、クソったれが。


 長いクソに巻かれた方が、幾分にもマシに思えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る