フェレットアウト

第1話 大友悠っつう馬鹿


「……は?」


 オレは目の前でたった今、起こった出来事を信じられないでた。


 今ここで、目の当たりにしたにも関わらず。どしても無能力者が、竪琴の紋章を獲得したのを信じられないでた。


 五分前。曾田司一郎の必殺技を回避した大友悠っつう馬鹿は、弾みで転げた相手に体重を掛けた肘を打ちこんだ。今までの一連の流れ見れば、誰にも出来そうな行動だった。


 だが自分には、出来ないだろ。


 もう一人のオレが吐いた。


「ふざけるな」


 頭に血が昇りそうになったが、すぐに冷静になった。


 この学園に入学出来た時点で、能力者である可能性はゼロじゃない。どうせ大友悠だって、馬鹿なりに何らかの能力を秘めてたに違いねんだ。


「失せものを、見つけるだけの、イタチ野郎」


 そんな奴とは出来が違うに、決まってんだわな。


 自分に言い聞かせたオレは、渡り廊下を後にした。


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