第51話 桃源郷ですか?


 窓から差し込む日差しを浴び、自然と目が覚めた。今日は月曜日だから朝から大学へ行かないとダメなのです。それに葉月ちゃんは期末テストがあるから遅刻する訳にはいかないぞ。


 隣を見ると、幸せそうに眠る葉月ちゃんが居た。僕の方を向いて腕に抱き着いていたので、柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。自分もそうだけど、葉月ちゃんも何も着ていないような気がする……。さて、僕はどうやって葉月ちゃんを起こせば良いのだろうか?





――葉月ちゃんが眠っている。起こさないと遅刻してしまう。さあどうする?


 ①優しく声を掛けて起こしてあげる。


 ②起きるまで軽いキスをする。


 ③軽くスキンシップをしてみる。


 ④掛け布団を取る。


 ⑤襲う。





 ふと僕の脳内に選択肢が出て来たような気がした。まず襲うのはマズいよね、遅刻してしまう。葉月ちゃんは朝に弱いから優しく声を掛けたくらいじゃ起きないので①もダメです。掛け布団を取ったら風邪を引いてしまうのでこれもダメです。……さて困った。


 キスをするかスキンシップをするか迷います。そうだ良いことを思い付いた! スキンシップの中にキスを混ぜれば良いのだ! 天才か!?


 だが今の体勢がちょっと良くない。僕の左腕を葉月ちゃんが抱き着いているため、横を向いてキスをするにも難易度が高いのである。しょうがないから僕の腕からこぼれた大きなお胸をプニプニして起こすしかないな。もう、しょうがないなあ葉月ちゃんは。


「すぅ……すぅ……ん……すぅ……」


 葉月ちゃんの規則正しい呼吸の中で、軽くお胸をタッチしてみたら反応が出た! よし、起こさないようにどこまでタッチ出来るか実験だ!


「ん……すぅ……すぅ……んー」


 大きなマシュマロの反応を楽しむように優しくムニュムニュしていると、葉月ちゃんが違和感を感じたのか体勢が仰向けになった。そして僕の左腕の拘束が解かれた! まだ葉月ちゃんは目を覚まさないので、作戦は続行です。


「んー……すぅ……ん」


 僕は布団に潜り込み、葉月ちゃんに覆いかぶさるような体勢を取った。あぁここが桃源郷か、そしてこの大きな二つの膨らみが仙果なのだろう。この仙果を食べれば不老不死になれると言われている。食べない訳が無いよね?


 僕は大きな仙果を口に含み、優しく優しく食べるのだった。こぼれないようにしっかりと手で支え、優しくマッサージもサービスしてあげちゃう。もう僕は止まれません!!


「……先輩……昨日あれだけやったのに……まだ元気なんですか?」


「……」


 頭上から葉月ちゃんの声が聞こえた気がしたけど、僕は止まれません! この仙果がだんだん甘くなってきた気がするのだ、もっと熟すように揉まなければ!!


「ん……あっ……んっ……」


 僕は必死になった。今まで生きて来てここまで一つのことに対して必死になった事があっただろうか? いや無い! そんなアホな事を考えてモミモミペロペロしていたら、布団が吹っ飛んだ。掛け布団が無くなってしまったのだ。僕の桃源郷が無くなってしまい、慌てて横を向いた。


「おはよう薫くん、良い朝ね~」


「お、おはようございます……」


 すごくニコニコの笑顔を浮かべるお義母さんが居た。お義母さんにはこのお家に来た初日にエッチを見られているから裸を見られても今更な感じがするが、布団に潜って娘さんの仙果をペロペロしてるところを見られるのは恥ずかしいです。もう顔から火が出そうだ……。


 葉月ちゃんから離れてベッドの上に正座をして、荒ぶる下半身を両手で必死に隠したのだ。ちょっと頭がはみ出てるかもしれないけど、許してください。


「仲が良いのは結構だけど、遅刻しちゃうわよ?」


「す、すみませんでした……」


 お義母さんに言われて時計を見て見れば、出発の時間まで1時間を切っていた。シャワーも浴びたいし、朝ごはんのお手伝いもしなければならない。葉月ちゃんを起こすのにかなりの時間を使ってしまったようだ。次はもっと良い作戦を考えなければならないな……。


「ほら葉月ちゃんも起きなさい、薫くんとシャワー浴びて準備しないと遅刻よ!」


「……は~ぃ」


「じゃあ薫くん、よろしくね。……あ、そうそう、本当にもう時間ないからエッチしちゃダメよ?」


「は、はい!!」


 そう言ってお義母さんは部屋を出て行ってしまった。世の男性に聞きたい。僕のように朝からイチャイチャして彼女のお母さんに起こされる体験をした人は居るのだろうかと……。

 

 というか葉月ちゃんはまだ寝ぼけている。この子は大丈夫なのだろうか? ちょっといたずらしたい気持ちを抑えてお風呂場へ向かいます。ここでエッチな事を始めたら本当にお義母さんを怒らせてしまうので、真面目にやりました!








 葉月ちゃんと一緒にリビングへ行くと、お義父さんとお義母さんが朝食を食べていた。こっちの状況は筒抜けだろうし、お義父さんと顔を合わせるのが辛い。だって、さっきまで自分の娘とイチャイチャしてた義理の息子を見て何も思わないだろうか? 僕だったらちょっとイラっとしちゃうと思います。


「おはよう薫くん、葉月と仲直り出来たようで良かったな」


「ほんとね~。昨日はどうなっちゃうのかと思って、心配だったわ~」


「え、えっと、ご心配をおかけしました……」


 どうやら昨晩のイメージプレイの前準備、プレイ前の他人を装って夕食を食べた事で、いつもラブラブだった二人が盛大な喧嘩をしていると勘違いされてしまったようです。さすがにあれはイメージプレイだったんです! なんて言える訳も無く、平謝りするのだった。


「別に喧嘩してませんよ?」


「ほ、ほら葉月ちゃん、イチゴ食べよう。はい、あ~ん」


「……ん? あ~ん」


 ここで葉月ちゃんにネタばらしをされても困ってしまうので、必死にイチゴのヘタを取って葉月ちゃんの小さなお口に運びます。まだちょっと寝ぼけた感じで小さくお口をモグモグしている姿が可愛いです! 葉月ちゃんが何かを言いたげにしているけど、僕は必死にイチゴを食べさせます!


「これなら安心だな」


「そうね~」


 そんな僕たちの様子を見たお二人は、うんうんと頷きながら朝食を食べている。どうやら危機は去ったようだ……。


「……先輩、今晩はどんなシチュエ……」


「ほーら葉月ちゃん、もっとイチゴ食べようね~」


 僕は必死にイチゴを食べさせる係りになったのだった……。

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