第52話 当たってますか?


「……先輩、大きく弧を描くようにお願いします」


 葉月ちゃんが自分の手で見本を見せてくれた。あんなに大胆にやっていいのか……。


「こ、こんな感じ?」


「ん……もっと強くです」


「む、難しいね」


 結構強くやってみたけど、もっと強くて大丈夫なのか。よし、ちょっと力を強くしてみよう。


「ん……たまにギュッと摘まんで下さい。こういう感じです」


「ギュッと!?」


 また葉月ちゃんがお手本を見せてくれた。なるほど、手で絞り出すように揉む感じか!


「最後は優しく揉むようにしてください」


「分りました」


 優しく、優しく……。集中してモミモミする。


「ふふ、気持ち良いですか?」


「癖になりそうだね……」









 僕は葉月ちゃんの指導の下、ハンバーグ作りをしていたのだった! 決してやましいことはしていませんよ? 今日はバイトもお休みだったので、葉月ちゃんと夕飯作りをしていたのだ。

 

 昨晩のイメージプレイ騒動でご両親に心配を掛けてしまったので、葉月ちゃんと仲良しアピールを兼ねて夕食作りを任せてもらいました。元々料理は好きだし、葉月ちゃんと一緒なら尚更です。


 僕もハンバーグ作りはやった事があるけど、黒川家の自家製ハンバーグを葉月先生が教えてくれるというので指導してもらっています。


 でも葉月ちゃんは何故かエッチなメイド服を装備しているので、どうしても視線が違うところに行ってしまうのだった。……後ろから抱きしめて違うものをモミモミしたいです。


「目つきがいやらしいですよ? お料理に集中して下さい」


「ご、ごめん。でも葉月ちゃんのメイド服が可愛くて……」


「これは家事する時の服装なので我慢して下さい」


「そうだったのか……。あれ、でもお義父さんが居る時はメイド服着ないよね?」


「当たり前です。このエッチなメイド服は先輩以外の男性には見せません」


「……葉月ちゃん」


 ちょっと感動してしまったけど、お義父さんが可哀想に思えてしまった。もし僕に子供が出来て女の子だった場合、いつかはこんな風になってしまうのだろうか? よし、嬉しいから抱きしめよう。手を洗って綺麗にして抱きしめる準備をします。葉月ちゃんの手はハンバーグをモミモミしているから、チャンスな気がする!


 そっと背後に忍び寄り、葉月ちゃんの大きなハンバーグを優しくコネコネしてみた。


「ちょ、先輩! ダメです~」


「大丈夫大丈夫、さっき伝授して貰ったから任せて下さい!」


 葉月ちゃんの髪から甘い香りが伝わり、両手で包む大きなハンバーグが僕の性欲しょくよくをそそる。よし、習った事を実践だ!


「まずはこうやって大きく弧を描くように……」


「ん……ダメですよ……」


 なんて大きさだ! まさに爆弾ハンバーグだ!! 一日中モミモミして居たいです。


「先生、こんな感じで良いですか?」


「……もう少し強くです」


 ちょっと優しすぎたようだ。もう少し強く、でも痛くならないように優しさは忘れずに……。


「ん……はぅ……」


「葉月ちゃん、ハンバーグをコネコネする手が止まってるよ?」


「そ、それは先輩が……」


 むむ? 言い訳をする悪い子にはお仕置きが必要ですね。確か先生から習った技を思い出すと、ギュッと摘まむのが良いって言ってた!


「言い訳しちゃダメだよ、もっと手を動かして」


「んっ……摘まんじゃダメですよ~……」


 やばい、楽しくなってきた! もっとモミモミしよう。


 葉月ちゃんが足をモジモジさせながら必死にハンバーグをコネコネしている。僕も負けじとハンバーグをコネコネしていたら、第三者の声が聞こえてきた。


「薫くん、お料理中にエッチな事しちゃダメよ。危ないでしょう?」


「す、すいませんでした!」


「んん……はぁ……もう、先輩は夜まで我慢してください」


 様子を見に来たお義母さんに怒られてしまった。そうだよね、キッチンには包丁もあるし、鍋に火をかけてるから火傷する恐れだってあるのだ。葉月ちゃんのエッチなメイド服に気を取られて失念しておりました。


「またエッチな事が始まらないようにお母さんが監視してますからね! さあ始めて」


「はい!」


 そうして鬼教官モードになったお義母さんに見守られながら、モミモミしたハンバーグを焼いて行くのであった。もっとモミモミしたかったです……。




   ◇




 葉月ちゃんとのイチャイチャクッキングのせいで遅れてしまった夕飯がやっと始まった。いっぱいモミモミしたお陰でハンバーグが柔らかく焼けたような気がする。


 食卓にはメインのハンバーグとサラダ、市販のコンソメスープが個別で配膳されています。そしてテーブル中央には山盛りのイチゴです。お義母さん曰く、イチゴは葉酸が多く摂取出来るそうです。そういえば前に葉月ちゃんの鑑定結果で葉酸を摂れってあったもんね。


 まずはメインのハンバーグをナイフで一口サイズに切って、デミグラスソースをたっぷりと付けて頂きます。


「肉汁が溢れてすごく美味しい!」


「ふふ……ありがとうございます。喜んでもらえて良かったです」


「いっぱい揉んでたものね~」


 葉月ちゃんの笑顔が眩しいけど、お義母さんの一言でモミモミした感触を思い出してしまった。やばい、話題を逸らさなければ!


「お義父さんは今週も出張ですか?」


「そうみたいなの~。この時期は挨拶回りで全国のお客さんところに行くのよね。だから年末は家族でゆっくりお出かけよ。温泉はどこにしようかしらね~」


「全国回るんですか、大変ですね……」


「こればっかりはしょうがないのよ。葉月ちゃんも就職したらパパと一緒に行くことになるかもね~」


 そうか、葉月ちゃんは3月で卒業だ。進学しないでお義父さんの会社に就職するって言ってたね。スーツ姿の葉月ちゃんも可愛いかもしれないな。お義父さんの会社は総合商社みたいな事を言っていたから、基本的に営業活動だと思う。葉月ちゃんは秘書にような役割でお義父さんをサポートするのかもしれない。大変そうだ。


「……ん? 私は就職しませんよ?」


「え?」


 お義母さんが驚いている。もしかして初耳なのか? 今までの葉月ちゃんの行動を見てると、受験勉強をしているようにも見えなかったし推薦でどこか狙っているのだろうか。


「卒業したら結婚して、専業主婦になります!」


「え? 葉月ちゃん就職するとばかり思ってた」


 今度は僕が驚いてしまった。まあお金は紫苑さんのバイトがあるから問題ないし、専業主婦でも良いかな。家に帰って葉月ちゃんが居るのは幸せかもしれない。


「それパパに言ったの? 4月から一緒にお仕事出来るってすごい喜んでたわよ?」


「そういえば言ってませんでした。今度伝えておきますね」


「パパ可哀想に……」


 葉月ちゃんのお義父さんへの対応が冷たい気がする……。お義母さんも少し落ち込んでるように見えた。


「そんな事は良いんです。……あ、そういえば先輩、今日ってロト6の抽選日ですよ? 確か買ってましたよね?」


「そういえばそうだった。ご飯食べ終わったら見てみようか」


 先日のお買い物でロト6を購入していたのだ。ロト7も購入しているが、こっちの抽選日は金曜日なのである。月曜日はロト6の抽選日で、こっちは僕しか買ってませんでした。


 期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪が使えるようになった日、クジの記入用紙を鑑定したらマークシートに薄っすらと線が見えたのだ。ロト6は6個、ロト7は7個の数字が見えた。もしこの使い方が正しかった場合、1等が当たっているのだろうか? 葉月ちゃんやお義母さんには期間限定のいつもと違うものがすごい鑑定見えるよ♪の事は伝えていないので、もし当たっていたら運が良かったと言うしかないけど……。




   ◇◇




 夕食が終わり、食後に緑茶を頂いています。お義母さんが入れてくれました。どうやらお義母さんもロト6の結果が気になるようで、リビングで確認会が行われることになりました。


 女子二人がワクワクしているので、僕は部屋から購入したチケットを持って急いでリビングへ戻ります。


「……先輩、当たってたらどうしますか?」


「うーん、特に欲しいものも思い浮かばないな。あ、そうしたら葉月ちゃんにプレゼント買ってあげる。何か欲しいものある?」


 葉月ちゃんのお家に居候することになったけど、ご両親から家賃は不要と言われてしまったのです。食費ぐらいは出しますって言ったけれど、計算するのが面倒と言われてしまい受け取って貰えないのである。つまり完全にヒモです。なのでお金を貯めて葉月ちゃんへのプレゼント購入資金にしようと思ってます。


「特に欲しいものは無いですけど……まあ、当たってたら考えますね」


 普通に考えてロト6の1等に当選する確率は相当低いよね、狙ってあたるものじゃない。それでも今回ばかりは期待してしまう!


「じゃあ葉月ちゃん、WEBの抽選結果出てるか見て貰って良いかな?」


「分りました」


 抽選は今日の夕方から始まり、リアルタイムで抽選の様子を見ることも出来るようだ。でも時間的に抽選は終わっており、結果がWEBに出ている事だろう。


「ありました! じゃあ番号を言って行くので確認してくださいね」


「ドキドキするわね~」


 僕とお義母さんがチケットを眺め、葉月ちゃんがスマホで結果を言ってくれるようです。


「じゃあ発表しますよ! 14、16、26、37、41、43でボーナス数字が31です」


「……」


「……」


 あれ、当たってた? ちょっと記憶が飛んでいたようだ。お義母さんも固まってしまい、ピクリともしない。


「あれ、聞こえませんでした? もう一回言いますよ……」


「……」


「……」


 もう一度数字を言って貰ったが、全部当たっていた。ボーナス数字を除く6個の数字が当たっていたのだ……。


「葉月ちゃん、ちょっとこれ確認してもらえる?」


 僕とお義母さんは夢を見ているのかもしれないから、葉月ちゃんに確認してもらおう。葉月ちゃんは受け取ったチケットとスマホに視線を行ったり来たりさせて何度も確認していた。


「1等当たってます……。抽選回も数字も間違いありません。これが夢じゃない限り、当たってます……。先輩、夢かもしれないのでキスして下さい」


 僕は椅子から降りて葉月ちゃんを抱きしめると、濃厚なキスをした。舌を絡ませて夢じゃない事を教えてあげる。こっそりスカートを捲ってお尻を触ったのは内緒です。この角度ならお義母さんに見えていないはずだ!


「いいなぁ……」


 ふと後ろから声が聞こえた気がしたけど、もう我慢できません。葉月ちゃんを抱きしめたままゆっくりと寝室へ向かい、ベッドに押し倒してしまった。


 テーブルに置いたままの1等チケット2億円は、きっとお義母さんが保管してくれていると信じてます!

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