第41話 加藤さんに彼氏ですか?



 年末も近づくこの季節、色々とイベントが待っている。クリスマスもあるが、大学構内においては忘年会と称して飲み会が至る所で開催されていたりする。


 やはり大学生の中にはサークルや飲み会が楽しみという人も多く、他所のサークルに飛び入り参加して盛り上がる人もいるらしい。そんな陽キャな人はすごいと思う、僕には絶対に無理だね。


 以前、テニサーが主催した飲み会で火災に巻き込まれるという事件があった。修二が死にそうになったやつである。その件があったからテニサーの忘年会は無いのかと思っていたら、普通に開催するらしいです。やっぱり大学生はたくましいね。


 修二に聞いたところ、これだけ活発に忘年会をやる理由として恋人探しがあるらしい。まあ中には酒飲みが好きって人もいるのだろうけど、クリスマスに向けて恋人を作るのが目的だそうです。ふふふ、数か月前だったら僕も嫉妬してしまったかもしれないけど、今の僕には彼女がいるのです。婚約してるから奥さんに近いけど、まだ彼女なのです。


 そんなことを考えていると、いつもの集合場所に到着しました。集合場所には修二と玲子さんが仲良く談笑しているのでした。いつもは僕の方が早いけど、今日はタワーマンションから出発だったので遅くなってしまいました。しかも出発前に葉月ちゃんとキスをしていたら、盛り上がって時間が足りなくなってしまった。葉月ちゃんが可愛すぎて死にそうです。


 明日はもう少し早く家を出よう……。


「ひでー顔だな、薫」


「薫さん、セクハラですわ!」


 僕の顔を見た瞬間、二人がおかしな事を言ってきました。僕の顔はセクハラなのか!?


「二人とも会って一言目からひどくない!?」


「だって……なぁ玲子?」


「一度鏡を見たほうが良いですわよ。……これ貸してあげますわ」


 玲子さんから手鏡を渡された。何があるのだろうか。手鏡を使い、自分の顔を見てみる。うん、普通の顔に見えるけど……ああ!?


「やっと気付きましたのね。昨晩は随分とお楽しみだったのね~」


「……玲子さん、セクハラです……」


 僕は玲子さんに怒る力もなく、うなだれてしまった。手鏡に映った僕の首筋には、たくさんのキスマークが付いていたのだった。朝に鏡を見た時は【吹き出し】に注目してしまい、気付かなかったのである。葉月ちゃんもお義母さんも指摘してくれなかったよ!?


「マフラーでもして隠すしかないな」


「葉月ちゃんに愛してもらって良かったですわね~、うふふ」


 しょうがない、後でファンデーションでも買ってこようかな? いや、使い方とか分からないからやめておこう……。とりあえず玲子さんに手鏡を返して、朝の占いです。





千葉修二ちばしゅうじ



※今日の運勢※

 急な来客があるでしょう。お掃除しましょうね!




天王寺玲子てんのうじれいこ



※今日の運勢※

 急な来客があるでしょう。お掃除しましょうね!



「あれ、二人とも同じ内容だ」


「そんな事あるのか……」


「何ですの!? はよはよですわ!」


 以前も葉月ちゃんとデートした時、僕と葉月ちゃんの結果も同じ内容だったのを思い出した。つまり二人のお家に誰か来るってことだね! しかもお掃除しろってことは散らかっているのか……。


 短い文章だけど、メモ用紙に書き込んで渡してみた。同じ内容だから1枚だけどね!


「まさかうちに誰か来るのか……」


「誰でしょうか……?」


「まあとりあえず、帰ってから掃除した方がいいっぽいね」


 そういえば1回だけ修二のお家に行った事があったけど、衣裳部屋っぽいところくらいしか見てないな。二人暮らしをしてるようだけど、家事とかはどうしているのだろうか。


 正面に座る玲子さんを見る。キラキラと輝く金髪、汚れを知らぬ綺麗な肌、まさにみんなが思い描くような完璧なお嬢様だ。こんなお嬢様がご飯作ったり洗い物したり洗濯したり、掃除機を掛けるのだろうか? 玲子さんが掃除機を掛ける姿を想像してしまい、笑ってしまった。


「薫さん、また変な事を考えていますのね」


「どうせ玲子が掃除機を掛ける姿とか想像してるんだろ」


「そ、そんな事ないよ!」


 なぜバレたんだ。修二に関しては掃除機まで当てられた。僕の顔はそんなに分かりやすいのだろうか……。


「そういえば薫さん、昨日スクラッチというものを買ったら当たりましたの。薫さんのおかげですから、これ貰ってくださいね」


 玲子さんから封筒を貰ってしまった。中を見てみると一万円札が10枚も入っていた。マジで!?


「こ、こんな大金受け取れないよ!」


「気にしないで良いですわ、1等で100万円でしたから。まだ振り込まれてませんが、先に渡しておきますわね」


 僕は開いた口が塞がらなかった。昨日の占いの通り、玲子さんは宝くじ売り場でスクラッチを30枚買ったそうだ。聞いたところによると、スクラッチくじは2種類売っていたらしく、どっちを買えば良いのか分からずとりあえず両方買ってみたらしい。その結果、見事1等の100万が当たったそうです。


 今日の運勢で臨時収入があるって結果だったし、有難く受け取っておこう。あと神様、僕にも金運アップお願いします!!


「じゃあ有難く受け取っておきます、ありがとう玲子さん!」


「いえ、当然ですわ。それより今日は嫌な予感がするので早く帰りますわね」


 どうやら玲子さんにとって100万円はそんなに驚くような金額じゃないようです。それよりも今日の来客の方にビクビクしている様子。いったい誰が来るのか楽しみだね!




   ◇




 午前の講義が終わり、午後は講義がないのでマスターの喫茶店でバイトです。紫苑さんのバイトでどれくらいのお賃金が貰えるのか分からないので、しっかりと働きますよ!


 更衣室でお着替えをしたけど、まだキスマークが残ってる。葉月ちゃんはどれだけ強く吸ったんだ……。シャツの襟元までしっかりとボタンを閉めて、目立たないようにしよう。


 タイムカードを切ってフロアに出てみると、加藤さんに遭遇した。葉月ちゃんと結ばれてから会うのは初めてかもしれない。


「おはようございます加藤さん、今日もよろしくお願いします」


「おはよう中野くん、なんか顔付が変わったわね。……あら、良い匂いがしなくなってる。香水やめちゃったの? あれ好きだったんだけどな~」


「そ、そんな感じです……」


 加藤さんが近づき僕の首元をクンカクンカしてきました。どうやら加藤さんのお眼鏡に叶う男じゃなくなったようです。ふぅ、これで葉月ちゃんに要らぬ心配をかけなくて済むな。


 そういえば加藤さんは特殊な性癖を持っているようだけど、ちょっと見てみようかな? このレベルアップした鑑定の威力をもう一度試すには丁度いいだろう。ふふ……見せて貰おうか、加藤さんの性癖を!!


 神様神様、加藤さんの最新エッチ情報を見せて下さい!! 僕は祈りを捧げ、加藤さんを凝視した。




加藤紅葉かとうもみじ

 都内に住む22歳独身の女性です。職業はフリーターです。

 身長160cmくらいでボブカットが似合う優しいお姉さんです。

 最近、彼氏が出来ました。近くの国立大学に通う4年生で、大企業への就職が決まっています。


 ある日、彼女は思ってしまった。自分はこのままバイト生活で良いのだろうかと……。

 仲の良い後輩がカップルになって焦ってしまい、出来ることなら結婚したいと考えるようになってしまったのだ。

 そして転機が訪れた! バイト先の喫茶店に自分好みの背の低い男性が、濃厚な香りを漂わせながら入店してきたのである。

 男性は珈琲を注文し、何やら勉強道具を広げて勉強を始めたのであった。チラっと見たところ、近くの国立大学の文字が見える。

 もうこの男性しかいない、この男性をゲットして幸せになろうと画策する。

 彼女はさり気なく男性に近付き、豊満な体をチラチラとアピールして男性の興味を引き、連絡先をゲットした。

 そしてその晩、彼と夕食を取った後、ホテルに連れ込んだ。童貞の彼が彼女に敵う訳もなく、一瞬にして溶かされてしまった。

 だが彼女は満足出来なかった。彼は達するのが早かったのである。彼女は思った。このままではまずい、そうだ調教きょういくしよう! ……と。

 そこから彼女の調教きょういくは熾烈を極めた。男性が達しそうになると止め、また達しそうになると止める。彼にとっては地獄であった。

 だが最後に訪れる最高の快楽に、彼はハマってしまったのである。ちなみに今のところの寸止め最高記録は7回です。

 今晩も彼の部屋で調教きょういくが始まるのだろう……。



※所有スキル※

 童貞が醸し出す芳醇な性臭ラブサーチ


※今日の運勢※

 10回くらい寸止めしてあげると泣いて喜びますよ♪




「……」


 この結果を見て僕が思ったことは、加藤さん彼氏が出来ておめでとうございます! という気持ちよりも、名も知らぬ大学の先輩頑張って下さい! という事だった。

 

 加藤さんはこの寸止めを何回までやるのだろうか。この結果を見て、僕の彼女が葉月ちゃんで良かったと心から感謝した。葉月ちゃんは夜も優しいのです。ただし、ビーストモードを除く。


 よし、今日も一日頑張ってバイトしよう!!

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