第40話 フラグですか?
―― カシャカシャ♪ カシャカシャ♪ ――
どこからか聞いたことのある音がする。なんの音だっけ?
―― カシャカシャ♪ カシャカシャ♪ ――
まだ体が上手いこと動かない。もう少し寝て居たい……。
―― カシャカシャ♪ カシャカシャ♪ ――
この音はいつまで続くのだろうか。そろそろ目を開けよう……。
僕は重い瞼を薄っすらと開いてみた。部屋は明るく、眩しかった。いつもの僕の部屋と違う景色だ……。
―― カシャカシャ♪ カシャカシャ♪ ――
重い瞼を開き音の鳴る方へ視線を向けると、お義母さんが笑顔でスマホを操作していた。
「あ、薫くんおはよう~。良く眠れた?」
言われた瞬間、やっと理解した。寝ぼけた頭はスッと覚醒し、ここが葉月ちゃんのお家である事を思い出した。
「お、おはようございます……」
自分の状態を確認すると、掛け布団の中は素っ裸だ。パンツの感触すらないのである。そうだ思い出した。昨日の夜、暴走した葉月ちゃんに襲われたのだ。ずっと葉月ちゃんにリードされ続け、気が付いたら今だったのである。
「ご飯用意するから先にお風呂入って来てね。葉月ちゃんも起こして一緒にどうぞ~」
そう言ってお義母さんは部屋から出て行ってしまった。軽く布団をめくり現状を確認してみる。ベッドには謎のシミやカピカピになった部分が見える。こんな高級なベッドを汚してしまったという罪悪感が襲ってくる。
隣を見ると幸せそうな寝顔を浮かべる葉月ちゃんがいる。このまま眺めて居たいけど、起こさない訳にもいかないな。だって今日は平日で、学校があるのです!
「葉月ちゃん起きて、もう朝だよ~」
葉月ちゃんの頬っぺたをプニプニと突きながら声を掛け続ける。柔らかい頬っぺたがたまらない。
「うぅん……先輩?」
「もう朝だよ、ご飯の前にお風呂に入ろう」
葉月ちゃんは寝ぼけているようで、ボーっとしている。しょうがない、僕がリードするしかないな!!
掛け布団を剥がすと、葉月ちゃんの美しい体が現れた。真っ白なシーツに広がる綺麗な黒髪が芸術的だ。このまま襲いたくなる衝動を抑え、葉月ちゃんを抱き起こしてお風呂場へ連れて行く。
さすがにお姫様抱っこするパワーも無いので、フラフラする葉月ちゃんを支えるため腰に手を回して密着しながらお風呂場へ歩いて行く。柔らかい感触がたまらん!
浴室に入り、椅子に座らせる。よし僕が綺麗にしてあげよう。
「葉月ちゃんシャワー出すからね~」
「は~い」
葉月ちゃんは目覚めてるのか寝ぼけてるのか良く分からない感じだ。シャワーを出して体を流して上げる。水を弾くプルプルとした肌が綺麗だ。次に頭からシャワーをかけて、髪全体に馴染ませる。
シャンプーを適量手に取り、葉月ちゃんの綺麗な髪を丁寧に洗っていく。こんなに長い髪は洗うの難しいぞ。まずは頭頂部から頭皮をマッサージするように優しく洗う。
「痒いところありませんか~?」
「だいじょうぶで~す」
頭頂部が終わったら髪全体をゆっくりと洗っていく。葉月ちゃんの髪はすごく長いから、自分で洗うのすごい大変だと思う。しかも毛先までしっかりとケアしてあげないとすぐに痛みそうだ。
シャワーで泡を流してトリートメントも同じようにやってみた。初めてだったから上手くいったか分からないけど、きっと大丈夫なはず!
さて次はお待ちかねの体を洗います。この素晴らしい肌を傷つけないように、ボディソープで優しく洗います。そう、僕の手で!!
手にボディソープを付けてから泡立てて、上半身から洗っていきます。この柔らかい感触がすごい……。
「……先輩、手つきがいやらしいですよ」
「そ、そんな事ないですよ?」
正面から優しく優しく洗います。この大きな柔らかいところは何でしょうか? じっくりと洗います。あ、先端の硬いところが手のひらに当たりますね!
「あんっ……先輩、変な触り方しないでください」
「ご、ごめんね。じゃ、じゃあ下の方を洗うから足を広げて下さい」
葉月ちゃんの大事なところを優しく優しく洗います。ここに昨日僕のアレが入っていたのか……あれ、ちょっとドロっとしたものが出て来た気がしたぞ。
「そういえば昨日、ゴムしてなかったけど……その、大丈夫な日なのかな……?」
ついつい気になって聞いてしまいました。暴走した葉月ちゃんにホールドされ、童貞卒業したばかりの僕じゃどうしようも無かったのだ……。
「ふふ……どっちだと思いますか?」
葉月ちゃんがニコニコの笑顔で聞いてきた。まああの感じだと大丈夫な日だったんだと思う。だって、さすがに妊娠させちゃうのはマズいでしょ。
「え、えっと。……大丈夫だと思います!」
僕の回答が面白いのか、更に上機嫌でニコニコしてます。きっと正解だな!
葉月ちゃんが僕の耳元に口を寄せ、甘い声で囁いてきた。
「お楽しみです♡」
その答えを聞いた僕は、どう反応して良いのか分からずに放心してしまった。そして次は僕の番という事で、葉月ちゃんにいっぱい洗われてしまいました。あと、スッキリしました!
◇
二人で湯船に浸かり温まった後、葉月ちゃんは制服に着替え、僕は修二の勇者装備に着替えてリビングに行く。葉月ちゃんの長い髪をドライヤーで乾かすのも大変でしたが、こんな美少女の髪を触れるのなんて僕だけだよね!
リビングにはお義母さんがニコニコした笑顔で待っていた。そうだった、この人には昨晩のエッチの様子や朝の寝顔まで全部知られているのだった。しかもスマホ構えてたよね!?
「おはよう二人とも、昨夜はお楽しみでしたね~」
「お、おはようございます……お風呂ありがとうございました」
「おはようございます……」
さすがの葉月ちゃんも恥ずかしいのか、顔を赤くしています。僕も恥ずかしいです。気を利かせてお風呂まで用意してもらって、感謝しかありません。
「いいのよ~。それに、私も早く孫の顔が見たいわ~」
「えっ、あ、その……昨日はすみませんでした……」
もうお義母さんにはバレバレなので、昨日の避妊失敗については正直に謝ります。やっぱり男がしっかりと避妊しないとダメだよね。葉月ちゃんは素知らぬ顔でパンを食べています。
今日の朝ごはんはスクランブルエッグにソーセージ、クロワッサンに珈琲です。明日は早起きして、お義母さんを手伝おう。このままじゃダメ人間になってしまう。
「全然気にしないで良いわよ~。それにね、世の中には子供が欲しくても出来な人たちが沢山いるのよ? 子供は授かりものなんだから、授かったらみんなで育てればいいのよ~」
「え、でも僕たちまだ結婚もしてないですし、その……まだ学生ですし……」
葉月ちゃんもそうだけど、このお義母さんも考え方がぶっ飛んでる気がするぞ。いや、このお義母さんの思考を引き継いでいるのが葉月ちゃんなのか。もし妊娠してしまったら、大学も少しお休みしないとだめかもしれないな。いや、まだ妊娠した訳じゃないし、これからは僕がしっかりして避妊するんだ!
「……先輩、そんな事を気にしてたんですか? 結婚なんて書類一枚を役所に出すだけですから、すぐにやっちゃいましょうか」
「そうね、それが良いわ! 私が貰ってきてあげるわね~」
あ、あれ? このままじゃすぐに結婚になってしまうぞ。それはまずい!
「ちょ、ちょっと待ってください。まだうちの両親とも会ってませんし、婚約指輪を贈ろうと考えているので待って下さい!」
「本当ですか先輩!!」
「まぁ~、いいわね~」
葉月ちゃんは嬉しかったのか僕に抱き着いてきました。お義母さんは頬に手を当てクネクネして喜んでます。やっぱり両家の挨拶とか婚約指輪を贈ったりしないとダメだと思うんだよね。葉月ちゃんは書類一枚なんて言うけど、僕の覚悟をしっかりと伝えたいと思う。
よし、今決めた。葉月ちゃんが卒業するまでに婚約指輪を用意する!! 神様お願いします、僕に
その後、お義母さんの作ってくれた美味しい朝ごはんを頂きました。スクランブルエッグはフワフワのトロトロで、味付けはシンプルに塩コショウです。このソーセージもボロアパートで食べていた安物と全然違う。食べると皮がパリッと弾け、肉汁がジュワーっと湧き出て来る高級品だ! クロワッサンもサクサクで美味しいです。
食後の珈琲を飲みながらボーっとしていたら、お義母さんから思わぬ提案をされた。
「そういえば前に紫苑様とお会いした時、薫くんの占いがよく当たるからやって貰いなさいって言われたのよ~」
まさかの展開である。あれ、紫苑さんから口止めされてなかったっけ? あ、あれは鑑定能力の事か。単に占いが得意とかだったら別に問題ないのかな……。
「ふふ……先輩の占いはシオンちゃんも認めてるんですよ。つまり本物です! お母さんもやって貰うと良いですよ」
「あら~、良いのかしら薫くん? じゃあちょっと占ってみて~」
お義母さんが笑顔を向けて来る。やはり女性は占いが好きなようだ。僕の鑑定は見るだけだから、占いっぽい工程が何もないのである。とりあえず手でも握っておこうかな?
「じゃ、じゃあ占いますので手を出して貰っていいですか?」
「は~い、おねがいしま~す♪」
僕はお義母さんの右手を両手で握った。葉月ちゃんと同じですごく柔らかくて小さい手です。あれ、手を見ても鑑定出来ないから、お義母さんの顔を見つめないとだめなのか。手を握りながら見つめ合うって、ちょっとドキドキします。
「……先輩、お母さん相手にニヤニヤするのやめてください」
「あらあら、お母さん照れちゃうわ~」
「うぅ……」
葉月ちゃんからジト目が飛んできたので急いで鑑定だ! そういえばお義母さんを鑑定するのは初めてだ。今までバタバタしていて鑑定出来ていなかったのである。まあ今のところ葉月ちゃんの鑑定結果で悪いものが無かったから大丈夫だと思います。
お義母さんを見つめ、鑑定です。神様神様、お義母さんの情報を教えて下さい~! 普通の鑑定にしておきました。
【
都内に住む専業主婦39歳。
実家は京都で、古くから栄える豪商の次女として生まれた。旧姓は
身長155cm、茶髪のボブカットが似合う素敵な女性です。葉月と並んだら姉妹に見えるくらい若々しくて美人さんです。
短大に通っていた時、合コンで知り合った
結婚してすぐに長女の葉月を妊娠し出産した。後々分かった事だが、雪子は妊娠の難しい体質であった。その後も妊活に励んだが、子宝に恵まれる事は無かった。
二人は奇跡的に生まれた葉月を可愛がり、大事に育ててきた。
そんな葉月も、もうすぐ結婚です。おめでとうございます!
※今日の運勢※
思わぬ特売品が買えるかも!?
「……」
そっか、お義母さんは妊娠の難しい体質だったのか。少し疑問に思っていたのだ。これだけ裕福な家庭で子供が葉月ちゃん一人だったからね。
お義母さんの言葉を思い出す。『世の中には子供が欲しくても出来な人たちが沢山いるのよ?』、この言葉の重さが分かってしまった。お義母さん自身が体験した事だったのだ……。
もしかしたら葉月ちゃんがお義母さんの体質を受け継いでいるのかもしれないし、子供が出来ないかもしれないという不安があるのだろう。
ちょっとしんみりとした気分になってしまったが、卒業するまで待って欲しいかな……。
「えっと、今日の運勢は『思わぬ特売品が買えるかも!?』です」
「あら~、後でスーパー行ってこようかしら。楽しみだわ」
「先輩、もう手を放してください」
「ご、ごめん葉月ちゃん……」
どうやら葉月ちゃんが嫉妬してしまったようです。まあ葉月ちゃんは占いをするのに手を繋ぐ必要もないことを知ってるからね。
「じゃあ先輩、次は私の番ですからね」
そう言って葉月ちゃんが僕の手を握って来た。プニプニした柔らかい手が気持ちいい。
よし、気持ちを切り替えて葉月ちゃんを鑑定だ! 神様神様、葉月ちゃんの情報を教えて下さい~! もちろん普通の鑑定です。
【
都内に住む高校3年生。
身長150cmくらいの小さな体ですが、お胸が大きくて肌はまさに処女雪のように白いのです。
見た目は小さいけど、健康体で健やかに育っています。
中野薫を婿養子に迎え、もうすぐ結婚します! お幸せに~!!
ヤンデレ度30%(+5)
※所有スキル※
※今日の運勢※
今日から葉酸を多く含んだ食べ物を食べましょう。ほうれん草とかお勧め。
でも摂り過ぎに注意なので栄養バランスを考えた食事を心掛けましょう。
まずはお母さんに相談だ!
心配しないで大丈夫だから、安心してください。
「……」
いつも思うけど、急に情報量が増えるの困ります。どこから反応して良いのだろうか……。まずはヤンデレ度が5ポイント上昇してしまいました。まさかさっきお義母さんの手を握った事がダメだったのか?
次はスキルが増えてます! 何ですかビーストモードって。もしかして昨夜のやつでしょうか。3回邪魔されると暴走しちゃうのか!?
そして最後の今日の運勢です。僕には良く分からないので紙に書いてそのまま渡そうと思います。葉酸って何ですか?
「今日の運勢が分かったけど、ちょっと長いからメモ帳に書くから待ってて」
僕は急いで寝室に向かい、いつものメモ帳とボールペンを持って戻ります。葉月ちゃんから出ている【吹き出し】から今日の運勢をメモって渡します。
「これが今日の運勢でした。ちょっと良く分からないや」
まずは葉月ちゃんに渡して様子を見ます。葉月ちゃんは少し首をかしげた後、お母さんにメモ用紙を渡していました。
「まあまあまあまあ!! 本当なのかしら!?」
メモ用紙を見たお義母さんは手を口に当て、目を大きく開いて驚いています。この驚き具合からして大事なのかな? 僕には分かりません、どういう事ですか!?
「先輩の占いは百発百中です。なのでお母さん、一緒に考えて下さい」
「ええ任せて頂戴! お母さん詳しいのよ~。一緒に頑張りましょうね♪」
どうやらお義母さんには理解出来たらしいですね。お義母さんに任せておけば大丈夫な気がする! 内容は良く分からないけど、きっと女性特有のアレだよね。そっとしておこう。
その日から、お義母さんの徹底した栄養管理がされた食事が始まったのだった。
ちなみに僕の運勢は『臨時収入があるでしょう』でした。今からワクワクです!
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