第34話 片づけはビーチのあとで

 玲香ちゃんのおうちにお邪魔させてもらったときに、気になることがあった。


 未咲「玲香ちゃん、お部屋の片づけちゃんとやってるかな?」

 玲香「あいにくちょっと……手つかずになってることは否定できないわね」

 未咲「目の下にクマっぽいのもできてるけど……ちゃんと眠れてるのかなって」

 玲香「それに関しても大丈夫……のはず……」


 そのとき、玲香ちゃんがわたしの方向に倒れかかってきた。


 未咲「っとと……やっぱりちょっと疲れてるような……」

 玲香「おかしいわね……きょうは練習そんなにしてないつもりだけど……」

 未咲「ふだんの疲れが溜まってるんじゃないかな……片づけもしなきゃいけないけど、その前に海いかない? ごめんね、ちょっとしんどそうなところ……」

 玲香「そこまでだから心配しなくていいわ……少し休んでから行きましょう」


 そんなわけで、わたしたちは海に来た。


 未咲「どうかな? ちょっとくらい気分転換になると思って……」

 玲香「いいわね。いけてた頃に見た景色を思い出すわ」


 あの頃の気持ちに立てば再び歩き出せると信じて。わたしたちは同じ方向を見る。


 未咲「いけてた頃、ってなんだかちょっとおもしろいね……」

 玲香「何を言ってるのかしらねこの子……わたし疲れすぎちゃったのかしら」

 未咲「わたしが元気すぎるだけかもしれないよ?」

 玲香「はいはいそうですね……自分で言うくらいには元気ってことよねわかるわ」

 未咲「えへへ……」


 対照的なふたりのようで、似ている部分はあったような。


 玲香「わたしもあんたみたいないい人見つけたいわ、そろそろ」

 未咲「さすがにひとりだとさみしいもんね、顔に出てるよ?」

 玲香「さいわいあんたのおかげで少しくらいはましだけど」

 未咲「ありがとう玲香ちゃん……そろそろ帰ろっか」

 玲香「なんであんただけ満足して帰ろうとしてんのよ」

 未咲「えー、玲香ちゃんももう十分元気そうでしょ?」

 玲香「わたしのどこがそう見えるのよ! 十分見たでしょそっちこそ!」

 未咲「そっか、そういえば倒れてたよね……もうちょっとかかるかな?」

 玲香「はぁ……情緒すらどこにあるのかさっぱりわからないわね、ほんと……」

 未咲「えへへ……」


 また同じように笑って、今度こそ帰ることにした。


 未咲「わたし、すっごく元気になったよ!」

 玲香「あの、誰も聞いてないんだけど……」


 さて、片づけよう。


 ♦あいすくーる! - Sea Side - 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る