第29話 動画制作
直接会うことが少なくなってきたころ、パソコン上でおたがいの顔を見ながら会話をしていた。
未咲「ひ~ん、玲香ちゃ~ん」
玲香「どうしたのよ未咲、浮かない顔して」
未咲「ぐすっ、あのね、最近おしっこ我慢しすぎて膀胱炎みたいになってるの……たすけて……」
玲香「そんなことしなきゃいいじゃないの……いまさら無駄だけど」
未咲「これからなるべく控えようかなって……それより玲香ちゃん」
玲香「なによ」
未咲「玲香ちゃんががんばってる動画を作ってるんだけど……」
玲香「えっ、いつの間にそんなもの……」
未咲「ふっふーん、これがちゃーんと撮ってあるんだ~。じゃーん!」
画面を切り替えて見せてくるけど……あまりうまい編集に見えない。
未咲「まだ途中でね……これからいろいろ参考にしながらやっていこうかなって」
玲香「そんなことよりこれいつ撮っ」
未咲「まぁまぁ玲香ちゃん、後ろではぁはぁしながらまわしてたから許して?」
玲香「ぜんっぜん気づかなかったわ……あと今なんて……」
未咲「~……♪」
まったく口笛できてないんだけど……思い出に傷がつくからやめてほしい……。
玲香「まぁ、気づかなかったからべつに何を思ってたとしても……いま知ってちょっとがっかりはしたけど」
未咲「ここからどうなるかな~? ここをいじったらおもしろくなりそう……」
玲香「あの、ちゃんと作りなさいね? ヘンな出来とかだったら許さないから」
未咲「もちろんだよ~……あっ」
玲香「なんかすごくまずそうな声がしたけど、わたしの聞き間違いじゃ……」
未咲「大丈夫だよ玲香ちゃん! えっと、これどうやって戻すんだっけ……」
玲香「ほんと不安だわ……あんたにまかせて大丈夫なんでしょうね……」
それから何時間か経ったあとにふたたび繋ぎなおして完成を伝えた。
未咲「やったー! 終わったよ、玲香ちゃん! ……? れいかちゃーん?」
玲香「……」
急に黙りこむ玲香ちゃん。
未咲「どうしたの玲香ちゃん?」
玲香「その……非常に言いだしにくいんだけど、あんたに撮られてたことを考えてしまったら急にもよおしてきちゃって……」
未咲「えー、これから見せようとしてたのにー!」
玲香「ごめんなさい……ちょっと行ってきていいかしら?」
未咲「どうぞどうぞ~、いつでも待ってるからね♡」
そうしてわたしはトイレに急ぐ。だけど瞬時に間に合わないとさとった。
玲香「ひゃっ?!」
さすがに下品だと思いながら止めることができない。これも未咲のせいね……。
玲香「撮るんなら事前に許可とりなさいよ、ばかっ……」
未咲「んー? なんかすごい音したけどだいじょうぶー?」
玲香「なんでもない、なんでもないのよ……」
ほとんど言い聞かせているようで恥ずかしい。気を抜いてるとすぐに出てしまいそう……。
玲香「大丈夫、落ち着いていけばきっと……んんーっ!」
やっぱりだめだった。ごまかしの効かない量があふれてきてとうとう観念した。
玲香「はぁはぁはぁ……すごかったわ……」
未咲「何がすごいのー? 画面からなんとなくおしっこのにおいが……」
玲香「わかってるなら言わないでちょうだい……恥ずかしいのよ……」
しばらく立ち直れず、未咲の完成品をなかなか目にする準備ができなかった。
玲香「今度こそいける……あぁんっ!」
下手に感じてしまい、未咲なのに……ってちょっとくやしくなってしまう。
玲香「もうそれだけの関係になったということね……しかたないわね……」
あきらめのような感心だった。未咲は人の心をつかむのがうまいのかも。
玲香「せいぜい仲良くしなさい……あのとことんまでの美形の子とね……」
ここまでいってすっきりできた。ようやく未咲に向きあおうとする。
未咲「あ、ごめん……玲香ちゃんのこと考えてたらわたしもやっちゃった……」
玲香「はぁっ?! せめてあんたは行きなさいよ!」
未咲「いやー、ちょっと気持ちが高まっちゃって……」
玲香「はぁ……けっこう似たもの同士なのかもしれないわね、わたしたち」
未咲「そうかも……なんだかうれしいな」
玲香「わたしはちっともうれしくないけど」
未咲「早く見ようよ~、ずっと待ってたんだよ?」
玲香「そうね、見せてもらおうかしら」
未咲「うんっ、ちょっと待ってね?」
やはり苦戦してる様子。大丈夫、ゆっくりやればいいから。
未咲「よしっ、これで見せられるようになるかな……あっ、やっぱりだめ……」
泣きそうになってる未咲を見ていると、つい応援したくなる。頑張りなさい。
未咲「これでいける……あぁっえっどうしよう……」
玲香「えっ、あんたもしかして……」
未咲「玲香ちゃーん! 元動画のデータ、ぜんぶ消えちゃったよぉ!」
玲香「えぇぇぇぇっ?! うそでしょ、バックアップはとってあるんでしょうね?!」
未咲「とってないよぉ! そういうのよくわからないもん!」
玲香「メモリあるでしょ?! なんでデータ移しておかなかったのよこのっ……!」
未咲「やぁぁっそれ以上は言わないでおねがい! なんとか戻すから……!」
玲香「無理でしょもうこうなったら! あぁもう散々だわ……」
一から作りなおしということになってしまい、未咲にもう一度会うことになった。
未咲「というわけで、もう一度お願いしまーす!」
玲香「もう、あのときみたいにいかないのが寂しい……」
いちおうやってあげたけど、同じ仕上がりにはならないだろうな……。
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