第28話 それぞれのできごと

 そのあとだった……。


 瑞穂「あっ」

 うみ「どうした瑞穂、なんか思い出した?」

 瑞穂「なんでもないです……あっあっあっ」


 はげしい水の音……まさか瑞穂、我慢できなかったのか……?


 うみ「大丈夫か……? さっきの犬がそんなにこわかったとか……」

 瑞穂「そそそそんなわけないです……にゃっ」


 犬で怖がったのに「にゃっ」って……ちょっとややこしい。


 うみ「はぁ……よしよし怖かったな」

 瑞穂「うぅ~~~~っ、もうあんなとこ行きたくありません……」


 あたしにはよくわからないけど、そういうことらしい。


 うみ「全部出していいぞ、いまなら誰も見てないはずだからな」

 瑞穂「……」


 こんなにしっかり抱いたことあったっけ……ちょっといいかも。


 うみ「雨降りそうだな……早いめに切り上げられるか、瑞穂?」

 瑞穂「ちょっうみさん、いま出してるんですから話しかけないでください!」

 うみ「うぉい急に元気だな……落ち着いてくれよ頼むから……」

 瑞穂「……もう行かないって約束してくれますか?」

 うみ「うん、あたしの興味しだいだな……」

 瑞穂「うわはぁーーーーっ!」

 うみ「冗談だって……ほら、また出てきたから心配すんな」

 瑞穂「ほんっっっとうみさんって……! 最低ですっ!」


 ♦


 未咲「ねぇ玲香ちゃ~ん」

 玲香「何、いまちょっと手が離せないんだけど」

 未咲「忙しいところごめんね……これからいっしょにいいことしよ~?」


 そう言って未咲は唇に指をあてる。ついでに身体までくねらせてるし。


 玲香「お相手はどうしたのよ、うまくいってないの?」

 未咲「そうじゃないんだけどぉ……ちょーっともの足りないっていうか……」

 玲香「欲しがりもほどほどにしなさいよ、こっちだって忙しいのよ」

 未咲「やってくれないとぉ、ここでおもらししちゃうよ~? それでもいい?」

 玲香「わかったわよ、やればいいんでしょ……」


 そしてわたしは軽い抱擁を交わす。いまの未咲にはこれだけでじゅうぶんよね。


 未咲「もっとして?」

 玲香「これ以上何すればいいのよ、彼氏さんにやってもらいなさい」

 未咲「進くん遠慮がちだから、そこは玲香ちゃんが補うところかなって」

 玲香「それ含めての彼氏でしょうに……まあいいわ、少しくすぐったいかもしれないけど我慢しなさい」


 やさしくフェザータッチしてくる玲香ちゃん。この感じにひさしく飢えていた。


 未咲「あぁっ、わたしのなかで玲香ちゃんが戻ってきた気がする……」

 玲香「あんたのわたしに対するイメージどうなってるのよ……」

 未咲「いつもありがとう、玲香ちゃん。でもやっぱりこれが足りなかったね」

 玲香「……」


 もはやことばにもせず、言われたままにやっていく。


 未咲「あんっ、急に強くもんじゃだめっ」

 玲香「えっ、けっこうやさしくやったつもりなんだけど……あんたもしかしてめちゃくちゃされてるんじゃないでしょうね?!」

 未咲「進くんはやさしいからいいの! 玲香ちゃんのいじわる!」

 玲香「だったら自分でやりなさいよ! わたしの手を借りる必要がどこに?!」

 未咲「あっ、ごめん……ちょっときもちよかったよ?」

 玲香「正直に『痛かったです』って言えば済む話だと思うけど……嘘つかないで」

 未咲「うそじゃないもん……」


 どうしよう、まだ玲香ちゃんの音楽がわたしの頭にこびりついて離れない。


 未咲「あ゛っ……」


 両手を小さく挙げて何かがつぶれたような声が出た。こぼれた合図だった。


 玲香「相当愛されてることはよくわかったわ……わたしのせいよね」

 未咲「ううん、わたしが我慢できなかったのがいけなくて……」

 玲香「きょうはもういいわ。練習につきあってくれてありがとう」

 未咲「うん、また練習しようね……」


 脚のほうがまだあったかい。この感触を忘れずにいたい。


 未咲「えへへ……まだ出るみたい……」


 おなかをさすると、ピアノでいうと右のほうの音が鳴り響いていた。


 未咲「ぬらしちゃお……♡」


 せっかく無事だった服も、自分の手でおさえることで汚してしまう。


 未咲「あっ、これいいかも……♡」


 気分が高まっていき、内側に効いていく。


 未咲「やっ、あぁっ♡」


 頭の奥がうずくような、そんな不思議な感覚。出してよかった……。


 未咲「れいかちゃん、れいかちゃんっ……♡」


 いまは玲香ちゃんのことしか考えられない。それだけのことをしていた。


 未咲「進くんごめんっ、やっぱりわたし玲香ちゃんがすき……♡」


 このときだけはそんなことを思ってしまった。もちろん幼馴染として。


 未咲「まだくるっ、きちゃうっ」


 感じるたびにびくんって跳ねて、ついにしゃがんでしまった。


 未咲「もうだめおしっこっ、んーっ!」


 背中が後ろにぴんと伸びてしりもちになった。玲香ちゃんに見えてる……。


 未咲「もれちゃうもれちゃうもれちゃう……やぁっ……」


 なんとか耐えようとしたけどだめだった。わたしの中で何かが壊れる音がした。


 未咲「もう、玲香ちゃんでもいいかも……」


 そう思った瞬間にまた強くなる。だめ、帰ったら進くん思いっきり抱きしめなきゃ……。


 未咲「んっ!」


 出たところをさわってみると、そんな声が出た。


 未咲「はぁ……なんでこんなことになっちゃったんだろ……」


 終わってみるとおかしく思えてきた。ちょっと休もう……。


 未咲「すやぁ……」

 玲香「あのね未咲……ここあんたの家じゃないからね?」

 未咲「うそうそ。でもちょっと疲れちゃった……」

 玲香「……片づけたら帰ってくれるのよね?」

 未咲「もちろんだよ?」


 なかなか帰ってくれなかった。


 未咲「ねぇ玲香ちゃん……もっかいしよ?」

 玲香「やらないって言ってるでしょ」

 未咲「えー、わたしやりたい!」

 玲香「帰ってちょうだいって何度も言ってるのに……はぁっ」


 いくつもお願いしてようやく帰ってもらえた。長い一日が終わった。


 玲香「やっと落ち着いて練習ができるわね……ヘンなにおいするけど」


 それほど悪くはなかったので支障はなかったけど、ちょっと気になった。

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