第27話 犬なんて……!

 ある日わたしはドッグランに来ていた。


 ひまり「よーしよし、いい子だ! それっ、とってこーい!」


 拾ってきた棒きれを投げて遊ばせていた。上手にとってくるなぁ……。


 ひまり「もう、なめちゃだめだよ……」


 顔をべろべろなめられたら表面温度ひえちゃうじゃない……まあいいけど。


 ひまり「見てジョン! 小さいワンちゃんがいるわ、あなたもこれだけ小さかったのよ~!」


 わたしはこの子に『ジョン』という名前をつけている。べつにこれといったこだわりはなかったけど、ちょっと素敵かなって思ってつけたの。


 ひまり「はぁーっ、きょうも元気ね、ジョンは……」


 いっぽうわたしはそうでもない。動くのもちょっとおっくうというか。


 ひまり「この子がおとなしければわたしももうちょっと休めるけど……そうもいかなそうだわ……」


 頭をなでてジョンからなんとか元気をもらおうとする。ちょっとできた気が。


 ひまり「大きくなったわね……出会ったころはほんとに小さかったのに……」


 ゆずり受けたときは大型犬と聞かされていた気がしなくて、のちのち思い出すとそんなことも言ってたかもしれないと気づいた。


 ひまり「はぁ……わたし小さいころ何してたかしら……」


 いつの間にかそういったことを思い出す時間もとれなくなっていた。ぼんやりとしか覚えてないや。


 ひまり「消えてなくなりたいと思うこともけっこうあるけど、なんとかやっていけてるわね……みんなに感謝しなきゃ」


 大空に両手をのばして太陽を全身つかって受け止める。これでいい。


 ひまり「日光浴はわたしの特権! ……ってわたしだけのものじゃないけど」


 ふとジョンのほうをみると、これまた小さめの……?


 瑞穂「犬なんてだいっきらいです! なんでこんなところに……」

 うみ「まぁまぁちょっと見ていこうぜ。あたしこういうの最近好きでさー」

 瑞穂「まったくうみさんはいつもいつも……もはやへんたいです!」


 よくわからない会話が聞こえてきたし、あの人たちは犬連れてないわね……。


 うみ「はぁーっ、かわいい……あたしもいつかは飼ってみたいんだよな……」

 瑞穂「いやです、死んでもいやですーっ!」


 最初に見えた子が泣きわめく。そもそもこの子って子ども、かしら……?


 ひまり「もういなくなっちゃった……めっちゃ手ひっぱってたなぁ……」


 あれ痛そう……ってちょっと思うくらいだった。ま大丈夫かな。


 ひまり「想像したらこっちまで痛くなっちゃった。もうちょっとしたら帰ろ」


 ジョンとのひとときを楽しんで、帰ることにした。

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