第26話 デート中におもらし

 ある日、わたしたちは夜に手つなぎデートを敢行していた。


 未咲「えへへっ、楽しいね進くん♪」

 進「そうだね。ずっとこうしてたいけど……未咲ちゃんは大丈夫?」

 未咲「もちろん! 進くんだーいすきだもん♡」


 にこやかに街を歩いていると……。


 未咲「あっ見て見て進くん! すっごいイルミネーションだね!」

 進「ふふっ、未咲ちゃんもこういうの好きかい?」

 未咲「うん! あっ……」


 ぶるっと震えて立ち止まる未咲ちゃん。どうしたんだろう……。


 未咲「ねぇ進くん……」

 進「どうしたの未咲ちゃん?」

 未咲「おしっこ、したくなっちゃった……ここでしていいかな?」

 進「そんなにしたいの? 僕がしっかり未咲ちゃんのために探して……」

 未咲「ううん、ごめんね進くん……もう間に合わない……」


 どんどん息があがっていく未咲ちゃんを見ていると、なんとかしてあげたくなる。


 未咲「やっ、いまちょっと出ちゃった……」

 進「動けるかい?」

 未咲「無理……きょうこんなに冷えるなんて思わなくて……」


 肝心なときにかぎってこれはないよ……。身震いするたびにそれは大きくなっていき……。


 未咲「あっ、あぁっ……」


 進くんの前でいやらしい音が聞こえてしまっている。しんしんと降り積もる雪の中で、その音だけが心地よく響いているようにも感じてしまう。


 未咲「やだっ、見ないで、聞かないでっ……」


 これほど恥ずかしいって思ったこともない。ふたりだけの時間がおしっこの音で満たされていく。


 進(未咲ちゃんが困ってる……なんとか笑顔になってほしいけど……)


 このときの僕はとにかく恥をしのんで水を飲みまくった。もちろんそれほど喉が渇いていたというわけでもなく……。


 進(はぁはぁ……もうちょっとで未咲ちゃんの気持ちがわかるはず……)


 そこまでしなくていいよって言われるかもしれないけど、僕はわからなかった。


 進(どうしよう勃ってきちゃった……つまむと余計にしたくなりそう……)


 それでも抗うことはできず、未咲ちゃんの先っぽをつかむイメージでさわる。


 進(あぁっ!)


 大きく反応すると、我慢してたものが僕の知らないタイミングで出てくる。


 進(もうちょっと、もうちょっとだっ……)


 人に見られる危険をおかしてまで未咲ちゃんに振り向いてほしかった。


 進「んんっ!」


 今度は聞こえるくらいの量が飛び出る。これで未咲ちゃんに……。


 未咲(……?)


 音に気づいた未咲ちゃんが、僕のほうを見てくれた。


 未咲(もしかして進くんもおしっこ我慢してたの……?)


 出口のところをおさえてるのが見えて、ちょっと震えてるのも見えたから。


 未咲(ちょっとみたいかも……進くんが人前でおしっこしてるところ……)


 繊細そうにいじってるけど、もう全然我慢できそうになくて……。


 進「だめだ、もうでるっ……」


 それが聞こえたとたん、わたしと同じくらいの量のおしっこがわっとあふれた。


 進「ふぅっ、ふぅんっ……」


 おもらし慣れしてなさそうな声がして、もしかしてわざとやったのかなって考えてしまった。わたしのためなのかな……。


 通行人A「ねぇ、あの子モデルだった子じゃない?」

 通行人B「ほんとだ、何してるんだろ……」


 その角度からはよく見えてないのか、肝心のところについては触れていない。


 進(見られてる……これけっこうきついような……)


 女の子のおもらしはそれなりに見てきたけど、いざ自分がするとなると……。


 進(こんなにも恥ずかしいんだね……よくわかったよ……)


 自分から出ているものにふたをしたくなる。それでもまだ止まることはない。


 進(まだ出るっ……こんなにためたつもりないのに……)


 むしろ一気に出てくれって思う。僕が思っているよりけっこうゆっくりめだった。


 通行人A「となりの子かわいくない?」

 通行人B「ねー、何しにきたんだろ……」


 こちらを見てくるふたりの想像が止まらない。こっちは全部知ってるけどね。


 進「はぁ、やっと終わった……」


 未咲ちゃんのほうを見る。ちょっとびっくりしてるみたいだ。


 未咲「進くん……?」


 ちょっと心配されてるかもしれない。憂いのまなざしにも見えるその目に、僕はどう答えていいかわからない。


 進「えっと、全部みてた、よね……?」

 未咲「うん……とりあえず訊くね? 大丈夫?」

 進「僕なら大丈夫だけど……未咲ちゃんのほうこそ大丈夫?」

 未咲「うん……それっておもらしだよね? わたしのためにしてくれたの?」

 進「やっぱりバレるよね……未咲ちゃんの気持ちを知りたくて」

 未咲「そこまでしなくてよかったのに……わたしだけで十分だから……」

 進「洗濯物とか増えるもんね……」

 未咲「そうじゃなくて、進くん恥ずかしかったでしょ?」

 進「そりゃもちろん……」

 未咲「んもう、進くんったらおかしいんだから……ねぇ進くん」

 進「何かな、未咲ちゃん?」

 未咲「もし、もしね? この時期にサンタさん来て進くんに何かあげるよって言われたら何プレゼントしてもらう?」

 進「そうだね……未咲ちゃんのおしっこ、かな」

 未咲「何それ……そんなのいつだってあげられるもん……」


 おたがいに恥をかいたから進くん吹っ切れちゃったのかな。お願い、早く戻って……。


 進「……誰にも見られてないよね?」

 未咲「そうみたいだね……こっち見てたふたりもどっか行っちゃったし」


 下半身がちょっと冷えつつもデート再開。ただあまり長くなってもしかたがないので途中でわかれることにした。


 未咲「わたしはいろいろあるから、進くん先に帰ってて?」

 進「わかった、鍵開けて待ってるよ」


 帰る途中で振り返る人がいたような気がするけど、なりふり構うわけにもいかなかった。


 進「はぁ、きょうはすごかったなぁ……毎回ああだとちょっと困るけど……」


 これからまた歳でゆるんでいくとは聞いてるけど、そのときがちょっと怖い……。

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