あいすくーる！ - Sea Side -

第21話 なんでもありません……！///

　瑞穂「あの……うみさん」

　うみ「お、なんだ？」

　そのあとわたしたちは日々の気分転換にと甘いものを食べに行くことにした。

　瑞穂「女性がおっぱいを隠すだなんてヘンだって本気で考えてた時期がわたしにありました。いまとなってはおかしな話だと思い至りますけど」

　うみ「お、おう……」

　とくに瑞穂はぜんぜんないもんな、って言ったら怒るんだろうな……。

　うみ「ほら、あたしくらいになるとちらちら見てくる男とかいるだろ？　それがいけないって世間的には見られるから隠すってこと。知ってるだろうけど」

　瑞穂「うみさんのそういうところも羨ましくてわたし、勢いでうみさんに胸さらけだしちゃったこともありましたっけ……」

　うみ「あれは気まずかった。できればすぐに隠してくれって思ったけどなかなか直さなかったな……もしかして見られたかったとか？」

　瑞穂「そんなわけないじゃないですか、誰がうみさんなんかに……」

　瑞穂と話していると、小刻みに震えていることに気づく。

　うみ「どうした瑞穂？　なんか様子がヘンだけど……」

　瑞穂「……なんでもありません！　ちょっと息が上がっただけです！」

　うみ「その『息が上がった』感じはわかるんだよ。なんでそうなってるんだ？」

　瑞穂「そんなの言えるわけないじゃないですか……」

　顔が赤い。汗をかいているようにも見える。

　うみ「行きたいなら行ってくれよ、こっちは気まずくてしょうがないんだけど」

　瑞穂「ど、どこにですか……」

　うみ「言わなくてもわかるだろうに」

　瑞穂「まだそんな段階じゃ……あっ！」

　いま、めっちゃわかりやすい声とともに音がしたような……。

　うみ「やっぱりそうか……いやほんと行っていいからな？　こっちが困るんだよ」

　瑞穂「だからどこにですか！　わたしまだいいって……きゃっ！」

　大人の女性の我慢のしかたとはとても思えず、身体が前につきだされている。

　うみ「うぉいちょっと……まずいぞこれ……」

　瑞穂「こんなに我慢できなくなってたなんて……もうここでしますっ！」

　うみ「それだとお店の人こまるだろ……なんとかできねーのかよ……」

　頭を抱えてもまったくいい考えは浮かばず。なんたってもう限界だからな。

　瑞穂「お店の人ごめんなさい！　もう出ます！」

　まわりがざわざわしつつある中、瑞穂がやらかした。

　うみ「あーぁもう、なんかちょっとさまになってるし……」

　不覚にもときめいた、と言いたい。瑞穂には聞こえてないだろうけど。

　瑞穂「はーっ、はーっ……おしっこ、出ちゃいました……」

　まだ我慢しようとしてるけど、ほとんど意味はなかった。

　瑞穂「こんなおしっこの出かた、ひさしぶりかもしれません……」

　いつもはちゃんとできるのに、なんできょうに限って……。

　うみ「まぁよかったんじゃない。こんなに見てくれて」

　瑞穂「どこがですか?!　はっ倒しますよ?!」

　うみ「言いかたが悪かった。お前のこと心配してくれたってことだよ」

　瑞穂「どう見ても憐みの目で見てますよね?!　ねぇみなさん?!」

　全員首を横に振っている。さすがにちょっとあやしい……。

　瑞穂「ぜったいどこかで示し合わせてるはずです！　わたしは騙されませんよ！」

　うみ「いい加減疑り深い性格直せよな……この一瞬でそれはありえないって」

　瑞穂「とにかく恥ずかしいです！　あっち向いてください！」

　その声でようやくみなさん戻ってくれました……。

　瑞穂「はぁ……これでやっと安心して全部出せます……」

　おい瑞穂、あたしの存在忘れてないよな……？

　うみ（まぁ、お前がそれでいいならいいんだけど）

　気に障る相手じゃないってことだから、きっと大丈夫のはずだけど……。

　瑞穂「ふぅっ、おわりました……」

　どこか気の抜けた感じで瑞穂が言う。そのタイミングであたしが話す。

　うみ「よし、店員さん呼ぼう。ちゃんと片づけてもらわないとな」

　瑞穂「仕方ありませんね……やってしまったので甘えないわけにも……」

　多少迷惑になってることを感じつつ、そこを掃除してもらうことにした。

　うみ「厳重注意だってさ」

　瑞穂「わかってますよ……我慢できなかったわたしが悪いんですから……」

　いい具合に拗ねてくれて、この退屈なあたしをちょっと楽しませてくれた。

　うみ「……帰りますか」

　瑞穂「そうしましょう」

　落ち着いたころを見計らってあたしがそう声をかけ、お店を出た。

　うみ「もうあんなことするなよ？　頼むから」

　瑞穂「わかってますってば……」

　二重に拗ねることになって、ちょっと悪いこと言ったかなって気にもなった。