第12話 津波発生(けっこう低い)

 家を出てしばらくしたところで、街にちょっとした違和感を覚えた。


 未咲「ん……なんだろ、この感じ……」


 しんと静まり返っているような。人がいないというか。


 未咲「えっ……」


 足元を見ると、それほど高くないものの水が押し寄せている。


 未咲「これってもしかして、津波……?!」


 思ったときにはもう少し遅く、足をとられてしまった。


 未咲「きゃっ」


 こけてしまうと、そこから先どうすればいいかわからなくなる。


 未咲「このままわたし、流されてしまうのかな……」


 低い津波でも危険だって聞いたことがある。これはまずいかも……。


 未咲「どこかつかまるところ……あっ、あれ!」


 ほそい標識だった。あれにつかまることができれば……!


 未咲「んっ……よし、なんとか……あっ!」


 片手が離れてしまう。身体が冷えそうになっているのでうまくつかめない。


 未咲「あとちょっと……」


 やっとのところで立つことができた。早く高いところに……!


 未咲「はっ、はっ……」


 ちょっと海抜の高いところに行けたので、ひと安心することができた。


 未咲「はぁ……安心したら、力が抜けて……」


 これはもうしかたがなかった。突然のことで戸惑っていたから。


 未咲「しばらく家に帰れないのかな……」


 ほとんどわかってるけど、口にせずにはいられなかった。


 未咲「かばんもびしょびしょ……きょうはついてないなぁ……」


 危険性こそ低かったけど、これがもっと高かったらと考えると……。


 未咲「ちゃんと気象情報みなきゃなぁ……」


 疲れていたのはわたしのほうだったかもしれない。

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