第11話 水辺の妖精、きい
あるとき、わたし未咲は久しぶりに夢を見た。
きい「こんにちは!」
未咲「あなたは……?」
きい「水辺の妖精きいです! 憶えてますか?」
未咲「あっ、そういえば……」
遠い昔になんとなくそんな夢を見たような……?
きい「あのときのわたしです! 思い出してくれたようですね!」
未咲「完全かどうかはわからないけど、なんとなくわかるような……」
きい「それでもいいです! わたし、ずっとあなたたちのことを守りつづけてましたので……」
未咲「ちょっとお疲れみたいだけど、大丈夫……?」
きい「心配にはおよびません! みなさんがわたしのことを思い出してくれることで、わたしはまた進むことができます!」
未咲「そういうものなんだ……」
夢の話とはいえ、よくできすぎているように感じる。
きい「世界はなんだかよくわからないかたまりにおおわれてしまっていて、わたしたちは息をするのがやっとなんです……」
未咲「そうなんだ……」
聴くほうに徹する。なにやら真剣な話をしているっぽかったから。
きい「とある書物ではこのことを『怒る』と表現していました。誰かと夢の中でお会いしてそう教えてくれました。でもわたし、ちょっと違う気がするんです……もはや『泣く』ところまでいってしまっているんじゃないかと」
未咲「というと……?」
きい「ご存じのように、こちらの世界ではあたたかくなることを通り越してこんなに寒くなっちゃいました……これは神の設計ミスといわざるを得ません……」
未咲「そのことはもう受け入れてるから大丈夫だよ……」
きい「それでいいんですか、あなたは?! 時間はどんどん過ぎていきます! そうこうしてる暇はありません!」
未咲「そんなこと言ってもどうしたらいいかわからないし……」
きい「いまからでもできることがきっとあります。ひとつひとつしていきましょう。都度あらわれますので、そのたびに確認させてもらいます」
未咲「うん、考えておくね……」
そこから夢は途絶え、深い眠りについたのだった。
未咲「んーっ、よく寝た……」
まだちょっと疲れを残した身体で起床する。歯を磨いて髪をセットする。
未咲「よし、出かけようかな」
何気ない一日のはじまりだった。このあと何が起こるかも知らずに……。
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