第5話 ハムおもっ

 未咲「うぇへへ……ハムちゃんかわいいなぁ……とくにこのおしりとか……♡」


 わたしはお酒を飲みながらネットでハムスターの動画を視聴していた。


 未咲「あっ、そうだっ」


 わたしは思い出したように押入れのなかに入ってあるものを取り出した。


 未咲「これこれ……クレーンゲームで偶然とれて大事にしてたっけ」


 それはゲームセンターで最初にとれてずっとしまってたぬいぐるみ。

 そんな偶然を、これから人にぎょっとされる方法で汚してしまう。


 未咲「おしっこ、したくなっちゃった……しらふだとこんなことちょっとしにくいけど……酔ったいきおいでやっちゃえーっ!」


 それくらいには寄っていた。思い返して後悔するんだろうな……。


 未咲「わかってても、わたしに沸きおこちゃったこの思いはもう止まらないよ……ハムちゃんには悪いけど、これからわたしのおしっこで汚れてもらうね……それっ、しぃーっ」


 わざわざ言わなくてよかった気がするけど、つい口に出てしまった。


 未咲「はぁーっ、すっきりするなぁ……」


 こんなところ誰にも見せられない……そう思ってると、電話がかかってきた。


 未咲「こんな時間に誰だろ……もしかして玲香ちゃん?」


 予想は当たってて、すぐに出た。


 未咲「もしもし玲香ちゃん? わたし、いまどうなってるかわかるかな?」

 玲香「知るわけないでしょ。どうせおもらししてひとり悦に入ってるんでしょ」

 未咲「それもあるんだけど……このかつれつれわかんなぁ~い?」

 玲香「電話ごしにお酒のかおりがするわね……あとなんかカツレツに聞こえるからやめてほしいんだけど」

 未咲「そんなこと言ったってしょ~がないでしょ~?」

 玲香「はぁっ……今夜あんたに伝えたいことがあって電話したのよ」

 未咲「何かな、玲香ちゃん?」


 身を乗り出して聞くことに。


 玲香「動物を飼うならペットショップはやめておきなさい」

 未咲「へっ、どうして?」

 玲香「あんたは知らないかもしれないけど、もう世界的にもそうなりはじめてるのよね……命を粗末にする例があとを絶たないのよ」

 未咲「そうなんだ……べつにそのつもりはなかったけど、覚えておくね」


 ただ動画を見ているだけで、飼おうとは思ってなかった。


 玲香「そんじゃ切るわよ。わたしが伝えたかったのはそれだけだから」


 でも、なんでわたしが動物のこと考えてるってわかったんだろう。


 未咲「監視カメラとか仕掛けられてないよね……」


 念のためぐるっと部屋の中をさがしてないことを確認してから寝ることにした。

 どうやらないみたい。よかった……。

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