第10話 異世界の日常 その3
食事を終えたあと、オレは気になることをカナに聞いてみた。
「――これ、聞いていいか分からないんだけど。カナは、どっちを望んだの?」
「――?、、どっちって?」
「つまり。寿命が縮む方?それとも永遠に伸びる方?」
「?――えっとぉ、どの場面で?」
「神との誓約」
「あ、、あぁ、――そうね。うぅん…私たちの宗教には、そういうのないかも」
「……」
(あれ、完全にこっちの世界の人?)
「じゃあ――、いつからここにいるの?もう長い?」
「よく分からない。私が来るまえからいた人もいて、私が来てからの人もいる。そのぐらいの長さかな」
「そっか。(…全然わからないけど)」
「覚えてる最初の日は――、雨ふってた。、、たぶん」
「…恵の雨だね。」
(自分で言ってて何のことか分らん…)
だが、カナは、
「そうね!毎日楽しいもの」
と、喜んでいるようす。
「きっとそうだよ」
正解だったのか――、
カナは何も言わず歩き続ける。
恋の答えは、そう簡単に出ない。
ひとまず、堕天使の話をするのはやめよう――。異端者、もしくはサイコなヤツと思われるリスクがある…。
しばらくして、カナの方から話かけてきた。
「そうだジェソク!こっちに来たばかりなら仕事とかまだでしょ」
「そうだね。何かした方がいいとは思ってるんだけど」
「なら、私もたまにお手伝いしてるところがあるんだけど、ちょっと行ってみない?」
「ああ、ぜひ。」
難しいことを考えるのはやめにしよう。恋をすればいいだけなのだ。職場から始まる恋は多い。この子に仕事を教わるのも悪くない――で、カナに連れられてきたのは、オシャレなカフェでなく、作業現場だった。
「親方!新人連れてきたよ」
即席のテントの一つからでてきたのはガタイのいい若いあんちゃんだった。
「おお、カナ!久しぶり」
親方はカナにハグすると、額にキスをして言った。
「元気だったか?」
えっ!――あっ…、そんなことしていいんだ!?……文化の違い?それともキャラの違い?
カナも全くなにも無かったのように答える。
「もちろん!あのね、こちら同じクラスのジェソク。仕事さがしてるみたいだったから連れてきた」
話を振られたようだが、"
「はじめましてジェソクくん。私はここの修復工事を任されているギボールといいます」
ガタイのいい若者は、丁寧に挨拶した。
「どうもはじめまして…ジェソクです」
テントの隙間から、神殿のようなものが見える。
「じゃあ、私はここで」
えっ!?ーー
オレは、例の、血流が重力に逆らう感覚に、、
親方が工具バックから取り出した箱に、カナは自分のカードをかざした。なにやらチャージされているようだった。
――オレ、売られた…⁉
「じゃあね、ジェソク。また学校で!」
カナは陽気に去っていった。
その後、オレは親方から仕事の説明をうけた。
しかし――、どうやら神殿の修復現場といっても機械式のものを使ってすることが多く、足枷をはめられて重たい石を引っぱったりするヤツではなさそうだった。
無事に家にも帰れた。
翌日の学校、カナは陽気に話かけてくれて、初めての現場まで一緒に行ってくれた。
こういう娘を小悪魔と言うのだろうかとも思ったりしたが、今のオレには分からない。ただ悪魔でなくてホッとしていた。
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