第6話 放課後

 先生と呼ぶには若造ワカゾーすぎる男女が入れ替わり立ち代わりやってきて、歴史的なものや、宗教的なやつ、文字も内容もナントカの最終定理的な数学などの授業をただボーっと聞きながし、昔、オレの中高時代、教壇に立っていた人のなかにもきっと、今のオレと同じぐらいの年齢の先生がいたんだよなぁ~、とか、ノスタルジックな雰囲気に浸ることで何とか初日の授業を乗りきった。今なら、保健室や早退という、ふつう人が歩まなかったルートを個人で開拓した、あまり名前の知られていない同級生の勇気に共感できる気がした。


 ともあれ、下校。


 もちろん、マックも、俺塩も、びっくりしたことに⁉コンビニもない‼――セラピムの反応が見たくて当たり前のことに驚いてみたが、オレを連れてきた堕天使は、進化し集中力を身につけたハエのようにただ真っすぐ、ゆっくり飛んでいく。


「腹へった」


 オレのボヤキに、セラピムは振り返り、やさしく言った。


「そうだな。家に帰っても何もないし」


 セラピムは近くの建物へと一人(一天使?)飛んでいき、皮の袋に入った水と硬いパンを持ってきてくれた。……オレのカードで購入して。


 想像通りの味だった。



「なぁ」


「なんだ?」


「ここに来てからよく見かける、この、木に生っている実はなんだ?はじめて見るけど食っても大丈夫なのか」


「ああ、それは知恵の実だ」


「……アダムとイブのやつ?」


「そう」


「食べられるの?」


「ああ。オマエが食べても、まぁったく、何の問題もない。味はしないけど水分補給にはなる。まぁ水を飲まなくても死にはしないけどな、というか死ねない。苦しいだけだ」


「そうか。ありがとうセラピム」


 (どSエスかコイツ、、)――ともあれ、コミュニケーションは大事。



 やがて、徐々に暗くなった。


 蒸し暑さも収まり、人の雑踏に代わり虫の音が辺りを覆っていた。ときどき獣のゴッツい声がすぐ近くから聞こえてくる。


 ――異世界に来たんだ。もう帰りたい、、




 

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