第8話 勇者は部活動を悩んでる。②
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全く、誰が「ちっぱい」よ。
それよりも、と私は眼下に広がる『両手にお胸』という状況を見下ろす。
江奈はそれほど大きくはないと言えども、それでもサイズ的には十分C~Dカップくらいはあるかしら……。て、十分なほどのサイズよね。
そして、優紀はこれは犯罪級だわ。食堂の机の上に「よっこいしょ」という感じで胸が乗っかかっているようにしか見えない。
いや、普通にセクハラでしょ!? こんなの男どもが見て、普通の精神で育つわけがない。
それにここにはいないけれど、紗里奈だってそう。明らかにあの服から零れ落ちそうなお胸はEカップ以上は確定だと思う。
どうして、こうも神楽の周りにはお胸の大きなエッチな女が集まってきているのかしら……。
そして、私は自分の胸を見てみる。
うん。何だか、スッキリしているなぁ…………。うわ~~~~~~~~~~ん!!!
「で、何の話をしてたのよ? いつの間にか話が逸れに逸れまくっているわよ」
私は溜まりかけた怒りをため息と一緒に吐き出し、話を戻すことにする。
「あらやだ~。本当ね。いつの間にか摩耶さんのお胸が小さいって話になっていたわね」
「してない! 断じてしてない! そ、それに、私だって、全くないわけではないんだから!」
「そうですよ、優紀ちゃん。こんな大きなものがぶら下がっていても、肩が凝って仕方ないんですから」
「ね、ねえ、江奈? フォローしてるの? それともディスってるの? どっち?」
私は半分涙目で江奈の方を見る。江奈は目を点にしつつ、サンドイッチの残りを食べている。
ああ、この子はこういう天然系の子なんだ……。
どうやら、この二人は私に対して『おっぱいマウント』で対抗するつもりのようだ。
べ、別にいいんだもん! そ、そんな肩こりの原因になりそうなもの……。
少し膨らんで、ピンクの突起があれば、男の人は―――――て、何を考えてるのよ!
もう、最近、神楽とキスをしてから、思考が何だかエッチな方向に走ろうとする……。それにそうなると、必ず身体が疼いてしまって、困っちゃうんだから……。
「ほら、神楽もちゃんと話を戻しなさいよ」
私は少し太ももをモジモジさせながら、気を紛らわす意味でも神楽に話を振る。
「あ、そうそう。部活動のことだよ」
「そもそも部活動ってこの学校では必須なの?」
「いいえ、別に必須ではないけれど、でも、聖天坂学園は全寮制になっているから、部活動は社交性を磨く必須項目みたいに扱われているわねぇ……」
私の問いに対して、優紀がうーんと頷きながら答えた。
「ああ、そういうことね。でも、私は別に部活動に入らなくても、社交界にすでにデビューしているから関係ないことだけど……」
「うあ。さらっと普通に金持ちマウント取ってくるんじゃねーよ」
「何よ。事実を言ったまでよ。それに普通に部活動に参加するだけでは、友達付き合いは出来ても、社交界デビューは無理でしょ」
「まあ、確かにそうだよな……。社交界に出たければ、それなりのパーティーとかに参加するしかないか」
「そうよ。別に神楽だったら、ウチの関係会社のパーティーに呼んであげてもいいわよ」
「え!? マジか!?」
と、神楽は本気で喜んでくれる。
そう。ウチと関係を持っている企業が開くパーティーには、関連企業や政治家など財界・政界の方々がいらっしゃる。そういったパーティーに私も父の付き添いということで一緒に出ることがある。もちろん、ホテルで開かれるので、そのホテルでの宿泊となる。
はい。ここ重要!
神楽を誘えば、何らかの理由をつけて、用意されたのがダブルの個室だったということにすれば、私と神楽はもっといい関係に発展する可能性だって十分にあるってこと……。
ま、神楽が「行きたい!」って私にお願いしてくれればの話だけど……。
「てか、摩耶ちゃん! 抜け駆けはダメだぞ! 今の表情から察するに神楽を独り占めして、めくるめく喜びに浸る気でしょ!」
チッ!
本当に江奈って勘のいいやつだわ。
それに「表情」って何よ! 私の顔がそんなにはしたない顔をしていたとでも言いたいのかしら!?
「そんなわけないでしょ? 常識的にも考えて見なさいよ。ここ聖天坂学園は由緒正しき財界のご子息・ご令嬢が通う学び舎よ。社交界のマナーを知らないままなんて当然ながら大問題になるんじゃないかしら?」
「まあ、確かにそれは一理あるわねぇ~」
私の意見に、優紀が賛同してくれる。
「でも、それなら私たち全員で行ってもいいんじゃないかしら?」
「え゛!? それは招待する人数とかの関係もあるんだから、簡単には決められないわよ!」
て、何で私が神楽を誘うことがいつの間にかみんなで参加しようという話になるのよ!
全く、どうしてこうも上手くいかないのかしら……。
「で? 社交性を磨くかどうかはさておき、部活動には参加するんでしょ?」
「うん。そのつもりでいる」
「あ、そう。じゃあ、目星は付けてるの?」
「うん。まあ、少しね」
へぇ……。神楽も神楽なりに部活動のこととか真面目に考えているのね。
でも、明らかに前の二人は、そんな神楽と一緒の部活動に入る気満々のような顔をしているんだけれども……。
「で? 神楽はどこの部活を目指しているわけ?」
「実はね、『呪術・法術研究会』に入ろうかと思ってるんだ」
「ふーん、そうなん……ちょっと待って!? 今、何て言ったの!?」
「え? 『呪術・法術研究会』に入ろうかなって……」
「ダメよ! あんなエロ先輩しかいない部活! それに人数も紗里奈先輩だけだから、1人だけじゃないの!」
「まあ、そうだね」
私の抗議に対して、頬をポリポリと掻きながら、頷く神楽。
体面に座っている子たちは何も言おうとしない。
「ちょっと待ってよ。江奈や優紀はいいわけ? 神楽がエロ先輩のもとに近づいても!」
「えーっと、まあ、あんまりいい気ではないよ。でもね、あたしは相談されてたんだよね。神楽が『呪術・法術研究会』に入りたがっているということ」
「え? そうなの?」
「まあな。江奈は幼馴染だから、こういう相談に載ってもらいやすいから」
「ふん! まだ、私じゃダメってこと?」
「いや、摩耶じゃダメということはないけれど、そもそも、摩耶と出会ったのも最近な訳だし……」
「ま、まあ、そうね。確かに最近だから、お互いのことで知っていないことも多いわね」
「そう。だから、俺のことをよく知ってくれている江奈に相談したってわけ」
くぅ……。何だかいいなぁ……。私も相談されたい!
信頼してもらいたい!
「ほら。祐二だけじゃなくて、あたしたちにも呪いが掛けられちゃってるじゃない? もしも、藍那先輩のところで、この呪いの問題を解決できるようになれば、祐二も週一で眠り込むこともないかと思ってさ」
「まあ、確かにそれはいいアイデアよね。でも、あの先輩に神楽は食べられちゃってるのよ?」
「だから、俺はそんなことされてないって……」
記憶のなかった神楽は、私に抗議をしてくる。
とはいえ、私は中で行われていたことを見てしまっているのだから、言い訳のしようがない。
「あ、あのぉ……。食べられたってどういうこと?」
江奈が純粋な瞳で私の方を見てくる。
てか、マジで知らないの!? どこまで純粋な乙女なの!?
「あ、あのね……。ここで食べられちゃうって言うのは、神楽のお●●●●をハムッって―――」
「全部説明しなくていいし! 場所を考えろ! この変態女!」
神楽は私の頭をスパーンと叩き、私は前にのめり込む。
「痛ぁ~~~~~~い! いきなり殴らなくていいでしょ!?」
「殴るわ! お前、江奈に何て不純なことを教えるんだよ! 汚れたらお前の所為だからな!」
「いや、汚れるも何も……。知っておいたほうが良いでしょ? 性行為というものについて……」
「いや、まだ江奈にはいらないから……」
「あら、そう。でも、確かに神楽が考える通り、一考の勝ちはありそうね。そうと決まれば、放課後に行くんでしょ?」
「あ、ああ……」
「じゃあ、私が同行してあげる? 喜びなさい!」
「そうだね! じゃあ、あたしも行く!」
「あらあら、私も法術とか興味がそそられるからご一緒に行ってみますね!」
あれ? いつの間にか対面の二人も一緒に行く気満々になっている。
てことは、放課後に恋の好敵手が全員集まるってこと―――!?
「悪いな……。ありがとう」
「え……ここは一人選ぶとかそういう選択肢はないの? あなたのストーリーには……」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないわよ!」
私の呟きは神楽の耳には入らなかったようだ。
それにしても、困った連中だ。絶対に私と神楽を二人きりにさせようとしてくれない。
これも呪いだったりして……。
あはは、まあ、そんなことないでしょうけれどね……。
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