第2話 爆乳の美女に唇を奪われる勇者②

     2


 ティロン♪ というLINEの音で目が覚めた。

 通知欄には、江奈からの文章が表示される。アプリを開いてみてみると、今日は熱を出したので休むという内容だった。

 俺は「おだいじに」と打ちかけて、指が止まった。

 もしかして、俺が昨日、無理やり江奈を引き離したような感じにとらえられてしまって、それがショックで寝込んでいるとなると、自分の責任だ。

 俺はそこまで打ちかけた文章を削除して、アプリを閉じた。

 昨日の江奈は明らかにおかしかった。

 朝は普通だったと思う。

 だが、授業が始まってからは明らかに避けられているような感じだった。

 だからこそ、話が聞きたかった。

 そこで待っていたのが、江奈からの告白と舌を絡めたキスだった。

 俺には何が何だか分からなくなり、返答に困ってしまった。

 そんなことを思いながら、服を着替えを終わらせ、準備をしたうえで、食堂までやってくる。

 食堂のトレイを取り、そこにコップを載せて、朝の行列に参戦する。

 そういえば、いつもこうやってアイツとは朝食を一緒に取っていたんだよな……。何の違和感ももっていなかったけれど、傍から見れば恋人同士に見えていたのだろうか……。

 そもそも俺と江奈はこれまで「幼馴染」という枠で収まっていたから、江奈と上手くいっていたんだ。

 だから、俺も別にアイツとラブコメ展開になるなんて思ってもいなかったし、そんなこと考えたことすらなかった。

 だが、まさかのキスをしてしまった。

 しかも―――――。


「あの時の江奈……何かエロカワいかったなぁ……」

「ちょっといいかしら―――?」

「あれくらいエッチだと俺もどう対応したらいいか分からないなぁ……」

「もしもーし?」

「次来たら、絶対に押し倒したいなぁ……」

「て、話を聞けよ!」


 いきなり脳天にチョップをかまされて、俺は脳震盪でも起きたのか、一瞬、景色がぐにゃりと歪んだように感じた。

 が、俺が振り向いた瞬間に視線が固定されてしまった。

 褐色の肌に溢れそうになっているおっぱいが俺に向かって、いや全方位の男に向かって攻めてきている。さらに髪は金髪ときたもんだから、普通に考えたら、ギャルだろ! と言いたくなってしまう。

 とはいえ、初対面の女性のおっぱいをガン見するとか、男としても問題があるだろう……。

 が、このおっぱい凄すぎて目が離せなくなるのは、男の性かと……。

 すると、褐色の美女は俺の頬を両手で抑えて、目を合わせてくる。


「ようやく、こっちに向いてくれたわね?」

「あ、すみません。考え事をしていたので……」

「うふふ♡ 私のおっぱいを見ながら、物思いにふける高校生っていうのもいいわね。青春ね」

「いや、あの……」

「あなた、神楽祐二くんよね?」

「え?」


 何でこの人、俺の名前知ってるの!? 怖―い!!

 褐色の美女は妖艶に微笑み、さらに言葉を続ける。


「うふふ。名簿を見せてもらっているから名前と顔くらい覚えちゃうわよ。私の名前は黒崎フィア。養護教育の担当だから、授業で出会うとしたら保健体育の一環で出会うかもね」

「よろしくお願いします。先生はそうやって誰にでも挨拶されるんですか?」

「いいえ。神楽くんには特別よ。あなたは私にとって特別な存在だからね」

「あはは……。先生、朝からなかなか刺激強すぎですね……。それに周囲の生徒の目もあるので、ここではそういうことを言わない方が良いですよ」

「そうかしら……。じゃあ、ここでは落ち着いて食事をとることにしましょう」


 黒崎先生はそういうと、俺の後ろにそのまま付くように朝の行列に並ぶことになった。

 今朝の朝食はロールパンとクロワッサンがひとつずつとスクランブルエッグ、ボイルウィンナー、軽めのサラダに飲み物(牛乳、オレンジジュース、コーヒーから選べる)という感じであった。

 俺は江奈と普段から使っている食堂の柱の陰にある二人掛けの席に座る。

 と、なぜかそこに褐色美女の黒崎先生も同席してきた。


「あれ? 先生はどうして俺の前に座られるんですか?」

「そりゃ、朝食を食べるためよ」

「いや、それだったら、別の席でもいいですよね?」

「別にいいじゃない? 私があなたと一緒に食べたいんだから。ねぇ?」


 と、テーブルに肘をついて、俺の方に前のめりになってくる。

 当然、褐色の豊満なおっぱいが俺の視界を埋め尽くそうとしてくる。

 肘をついた所為で、おっぱいが腕で挟まれていて、今にも服から零れ落ちそうだ。

 心頭滅却!!

 俺はそんな欲望をかき消すために、慌てて朝食をかき込んだ。


「神楽くんが希望するなら、先生の色んなこと教えちゃうわよ。例えば、あなた好きな先生のおっぱいのことも……♡」

「――――――!?」


 思わず吹き出してしまそうになってしまう。

 この逆セクハラ教師は一体、何を言っているのであろうか!?

 どうやら俺を密室に誘い込んで、襲わせるという美人局でもしたいのだろうか。

 さすがにその手には乗らない。

 なんせ、俺はこの学年で1位をキープし続けてやるつもりだからだ。

 もちろん、高校生活ラブコメ化計画のために!


「さすがにそういうのは教師と生徒では問題がありますよ? 最近はそういうの五月蠅く叫ばれる時代なんですから」

「んふふ。分かっているわよ。それにしても、固い子ね。私の能力に堕ちてくれないなんて」


 ん? この人は今何と言ったんだろうか?

 能力? 堕ちる?

 いや、よく分からんが、色仕掛けは確かに効果は高いし、今も朝から血液が一部に集中しているのは避けようもない事実だ。

 しかし、ここで自分の人生を捨ててしまうつもりなんて毛頭ない。


「ま、いいわ。神楽くん、放課後に少し時間を頂けるかしら?」

「え!? いきなりですね?」

「んふふ。実は私、この学校に来てすぐだから、学校のことがよく分からないの。だから、放課後に学校案内をしてほしいの。いいわよね?」

「放課後は……」


 江奈にお見舞いをしてあげたいとも思う気持ちがあるが、女子寮は近づくことさえできないからなぁ……。入り口で寮の管理官に今日のプリント類と一緒に言づけて渡しておけばそれでいいか……。


「ここで大きな声で神楽くんが私のおっぱいをいやらしい視線で舐めるように見つめてくる、って言ってもいいのよ?」

「な!? それは脅迫!?」

「だって、事実じゃない? この弾力のあるおっぱいを見つめて、どこに血液を集中させちゃっているのかしら?」


 と、言って黒崎先生は靴を脱いだ右足で俺の股間をグイッと攻めて来る。


「うぐぅっ!?」

「んふふ、立派なモノね。その反応はまだ童貞って感じかしら? 高校生の3人に1人は経験済みっていう時代なのに……」

「放っといてくださいよ。……分かりました。じゃあ、放課後、ご案内します」

「んふふ♡ ありがとう!」


 先程までの妖艶かつ淫靡な雰囲気を出していた黒崎先生は女神のように微笑んだ。

 これ、絶対に会ったらいけない人物に出会ってしまったのではないだろうか。

 俺の放課後の平穏はこれで奪われたのであった。



     3


「友理奈お嬢様、お待ちください」

「別にいいではありませんか? 私ももう高校生なんですから、自分で校内の視察くらいできます」


 付き人を払いのけて、私は廊下を歩いていく。

 全く、どうして私自身が通う学校の見学に付き人まで一緒にくるのでしょう。


「あー、あ、私は一人でダラダラと学校というものを見学したかったのに……」


 ドンッ!!!

 廊下が左右に分かれている場所で出会い頭に何かにぶつかった。

 しまった! 私、あちこち見ていて、前の確認を怠っていたわ!

 私がぶつかったは、私に押し倒されるような形で倒れ込み、私もそれにつられるようにそのまま倒れ込んでしまう。

 と、その時――――。

 ……んちゅ……


「――――――!?」


 私は自身の意識をフルに呼び戻し、気絶しないで持ちこたえる。

 そして、目を開けると、そこには男子の顔が目と鼻の先にあって……。

 私は慌てて飛び退いた。

 そりゃそうよ。だって、私、今、この男と、き、接吻キスしてたんですもの!?

 そ、そんな―――――!?


「い、今のは自分からしようとしたのではないから、ノーカンよ!」


 て、何だかキスしたときに私の中に流れ込んできた記憶?のようなものはなんだったのかしら……。

 何だか、胸が苦しいんだけれど……。

 ま、まさか、初恋かよ!?(ツッコミ)


「て、そんなこと言ってる場合じゃないわ! あなた、この私、摩耶まや友理奈ゆりな様を押し倒そうなんて100年早いんだけれど!?」


 て、あれ? でも、目の前の男子の方が伸びている感じがあるんだけれど……。

 もしかして、押し倒されたんじゃなくて、私が押し倒した側にあたるのかしら……。

 しかも、き、接吻キスまでしてしまうなんて……。


「友理奈お嬢様、どうかなされましたか?」

「あ、いえ! 何でもないわ!」


 倒れていた男子が「ううっ……」と後頭部を摩りながら、起き上がる。

 私はその傍に駆け寄り、


「いって~~~。まったく、いきなり飛び出してくるなよな。ダンプカーか?」

「し、失礼ね! こんな華奢な女の子を捕まえて、ダンプカーとは失礼にもほどがあるわ!」

「いや、捕まえたんじゃなくて、お前がぶつかってきたんだよ……。俺は一度たりともお前を捕まえたつもりなんてない」

「きぃーっ! 本当に何て奴なの!? この学園の理事を務める父をもつ、私、摩耶まや友理奈ゆりな様に向かって……」

「ねえねえ! 神楽くん! どこ行ったのか探しちゃったわよ?」

「げっ!? 何か先生が来た!? いい? 今のこと口外してはダメよ。面倒くさいことになりたくなかったら、黙っていなさい!」

「いや、だから――――」

「いいわね?」


 私は神楽とかいう男子を睨みつけて言い放つと、そのままその場を離れた。


「大丈夫でしたか?」

「何でもないわ。だから、あなたも今のことは絶対にパパには口外しないでね」

「かしこまりました……」


 付き人は丁寧に私にお辞儀をするとそのまま私の後ろに付き従った。

 それにしても、何なのかしら、アイツと接吻してから変な気分……。

 気持ち悪い? ううん。違う。そんな気分じゃない。

 むしろ、高揚している。

 て、この私が!? 何で!? 初めてであったモブキャラの様な男子に対して、心ときめかせてしまうっていうのよ。

 でも、何だかドキドキしてるから、やっぱりこの気持ちって……。

 それに何だかあの神楽って男子、初めて会った気がしないのはどうしてだろう……。

 私はそんなグチャグチャに入り混じった気持ちを整理できぬまま、校内見学を続けたのであった。



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作品をお読みいただきありがとうございます!

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