花傘千颯のワクワクバレンタイン☆



千颯と琴音の自室にて____



「あ、もしもし~」


「なに」


ドスのきいた低温が私の耳へ届く。

初めて会った時には爽やかで優しくてこんな感じじゃなかったのにな~、星月さん幸人さんになにしたんだろう。あ、でも逆か。何かしてるのは幸人さんのほう。


「やぁだ怖いな…ふふ、ねえねえ。今日ってさ星月さんいる?」


「夜にはいるんじゃねぇの…」


「あ、ほんと。今日私の可愛い琴音ちゃんが星月君に日頃の感謝を込めて何かプレゼントしに行くみたい」


「ふ~ん…日頃の感謝、ね。楽しそうじゃん、何時に来んの?」


「多分20時半くらいじゃないかな?ふふふ」


「わかった、じゃあな」


「はーい♪」


何か私にも日頃の…って、私何もしてなかった。

はははは。自嘲していると部屋の扉が開く。


「お姉ちゃんさっき誰と話してた…?」


「ん?母さん。最近元気してるかって~」


「そうなんだ。……あ、あの。これ味見して」


そっと差し出してきたのは先ほどよりも小さく作られた生チョコのタルトだった。

甘い香りが鼻腔をくすぐる。

スプーンに乗った輝くチョコレート。私の心の中を移すような暗い茶色。


「???…食べないなら下げるけど…」


「ん?あぁ、食べるよ」




残さず食べなくちゃね______

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