【漫才】積分ショップ

青空P

積分ショップ

「世の中興奮することたくさんあるけど、一番興奮するのは積分ショップができた時だよな」


『間違いないね』




「あら、昨日の夜まで何もなかったのに急に積分ショップができてるな。興奮してきたな。ちょっと入ってみようか。ウィーン」


『積分定数はζとしますー!積分定数はζとしますー!積分定数ζはとしますー!』


「トガってんなおい。積分定数で個性出そうとすんなよわかりにくいな。CでいいんだよCで」


『ζ分かりにくいすかー。www.はどうですかー?』


「なに草生やしてんだよ。客にwwwとか言ってんじゃないよ…………いやよく見たらこれ“World Wide Web"だね! http:// の後ろについてるアレだね!」


『はい、www.でやらさしてもらってますー』


「何がやらさしてもらってますーだCにしとけって。てかこんな話しにきたんじゃないのよ、積分解きにきたの」


『店内でお解きになられますかー?』


「いいや、持って帰るよ」


『ユークリッドの方で……』


「テイクアウトだよ。なんだユークリッドって何で互除法なんだよ」


『あのー……』


「なんだよ」


『ユークリッド幾何学の方のユークリッドですー』


「俺高校生なんだわ、高校生はそういう難しい単語知らないんだよ互除法しか。もういいから……メニュー、あれメニューは」


『お客さん……wメニューなんてありませんよwww』


「いや何でだよ用意しとけよ」


『著作権の関係で削除しておりましてw』


「積分に著作権とかないだろ。赤本の英語じゃないんだから」


『私が直接メニューをお伝えすることはできますがw』


「お前さっきから草生やすのやめろ。まあいいや、今不定積分解きたいんだよね」


『申し訳ありませんお客様。当店、定積分のみのお取り扱いとさせていただいておりましてー』


「じゃあなんで最初に積分定数を定義したんだよ。いらないじゃねえかζとかよくわかんねえの」


『やっぱりwww.の方がいいですかねー』


「そういう問題じゃないんだよ。……不定積分ないのか。じゃあ1/6公式使えるやつで」


『lim(n→∞){Σ(k=1 n) 1/n・f(k/n)}使えるやつ!?』


「なんだそれ訳わかんねえ式」


『区分求積法ですー』


「区分求積は頼んでねえよ。区分求積の公式はぱっと見じゃ分からないんだから、無理矢理入力しようとするな。余計わけわかんねえよ」


『今から証明するので5時間ほどお待ちいただけますかー?』


「バカじゃねーのどうやったら5時間もかかんの」


『当店スタッフ数Ⅲ履修者がいないのでー』


「嘘だろ積分ショップだよな!?」


『ⅡBまででやらさしてもらってますー』


「おいマジかよ。心配なってきたな」


『お飲み物はどうなさいますかー?』


「なんで積分ショップで飲み物付いてくるんだよハンバーガー屋じゃないんだから」


『サイズの方、s・i・n・θがごさいますけどもー』


「s、i、n、三角関数じゃねえか。なんだよサイズθって」


『コップが正弦波の形になってましてー』


「どうなってんだよアホみてえに飲みにくそうだな」


『ご一緒に回転双曲面に囲まれた部分の体積なんかいかがですかー』


「頭痛なるわ、なんだご一緒にって。サイドメニューにいていい計算量じゃないのよそいつは」


『サイドメニューですかー。でしたらご一緒に帯↑分↑数はいかがですかー』


「帯分数っつっちゃったよ。ポテトみたいに帯分数って言っちゃったよ。ちょっと無理があるよ」


『お客様もご一緒にー。帯↑分↑数はいかがですかー』


「なんで一緒に言わなくちゃいけないの。なにが帯分数だ気持ち悪い」


『よく見てください、帯↑分↑数ですー』


「うん?……なんだその矢印」


『クヌースの矢印表記ですー』


「だから高校生はそういうの知らねえんだよ。数Ⅲ知らねえのに難しそうなことばっかり言いやがって」


『あ、帯↑分↑数をおふたつー』


「おひとつもいらねえよ。どこで使うんだよ帯分数なんか」


『ご注文は以上でよろしいでしょうかー』


「まだ何も頼んでねえよ。お前が勝手に区分求積選んだだけだよ。まあ、もう区分求積でいいよ」


『では真数条件の方を振り返りますー』


「それは最初に確認しろよ大事なんだから。というかこれ積分なの、真数条件振り返ってどうすんだよ注文繰り返せ」


『注文の方繰り返しますー』


「ほら早く」


『区分求積法がおひとつ、お飲み物が三項間漸化式でよろしかったですかー?』


「なんか入ってんな、なんか漸化式入ってんな。てか漸化式って飲み物だったのかよ」


『漸化式は飲み物でやらさしてもらってますー』


「ちょっと待て、お前さっきから『漸化式でやら"さ"してもらってますー』って言ってるよな」


『はいー』


「俺その言い方だいっきらいなんだよ」


『あーすみません』


「ちょっと言い直せ」


『recurrence relationでやらさしてもらってますー』


「そこじゃねえよ。漸化式を英語で言って欲しいんじゃないんだよ」


『コサインシータ、プラス、アイサインシータ、3乗、プリーズカリキュレート』


「お前まさか複素数平面の計算してる?関数電卓でレジ打ちしてんの?価格設定どうなってんだよ」


『お会計√3 + 3i円になりますー』


「いや虚数じゃねえか。実数で頼むよ」


『絶対値にすると2√3円になりますー』


「今のは俺が悪かった、整数にしてくれ」


『お客さん、わがままですね』


「なんでだよ払える金額にしてもらわねえとこっちだって困るんだよ」


『じゃあ633円でいいですよ』


「じゃあってなんだよじゃあって。633円でいいんだな?」


『はい』


「ほい633円、ちょうど」


『はい、有効数字2ケタなので3円のお返しですー』


「じゃあ630円じゃねえか。なんで3円多く取ったんだよ。というか数学で有効数字使うことあんのかよ化学じゃないんだから」


『あとこれ500円以上お買い上げの方に差し上げてるんですけどー』


「なんかもらえるの」


『数Ⅲの教科書です』


「お前らが読めよ、お前ら数Ⅲやってないんだろ。配ってる暇あったら微分でもしとけ」


『0!は1でよろしかったですかー?』


「0!は今関係ないだろ、いらないよ」


『あと、漸化式の出典は東京大学にいたしますかー?』


「だから頭痛なるわ。東大の大門を添え物にするな。いいから早く区分求積をくれよ」


『お待たせいたしましたー」


「やっとできたか」


『こちら、収束しない極限ですが』


「いや収束しろよ。収束しないもんを売り物にするな。というか区分求積頼んだんだから収束するんだよ」


『あのー、今キャンペーンやってましてー』


「なに、キャンペーン?」


『こちらの多項式を微分してもらってもよろしいですかー?』


「なんか出るの?」


『ちょっと何言ってるか分かんない』


「なんで分かんねえんだよ。なんか出るか出ないか聞いてんだよ」


『いろんな項が出てきますー』


「当たり前だろ多項式微分してんだから」


『出てきた項の種類によって商品が当たりますー』


「商品当たんの?なんだよ最初からそう言えよ……ほい、これでいいか」


『おめでとうございます! 一等になります!』


「マジか一等! 一等何もらえるの?」


『一等、帯↑分↑数になりますー』


「いや帯↑分↑数!!」


「『どうもありがとうございましたー』」

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