煙草に焼かれて

鳳凰澪崋 暁月

灰にする

「また駄目だったか」

今回は大丈夫、何となくそんな気がしていた。あの日、浮気されるまでは……。何が駄目だったのか。

煙草を咥え、外を眺める。甘い香りが鼻から抜けていく。

お気に入りの煙草。彼の為に禁煙をしていたが、それも今日でお終い。

私が求め過ぎていたのだろうか。ただ、彼と一緒に居たいだけだったのに。

「あぁー……もう、何でもいっか」

考える事すら面倒になってきた。ジリジリと、巻紙が燃えていくのを見つめる。辞めることのできない、呪いのような恋。

「あれ……」

もう1本吸おうと思ったら切らしてしまっていた。予備も買ってないし、コンビニまで行かなければならない。

「せっかくなら、何か美味しい物でも買おう」

いそいそと財布を持って家を出る。

真夜中の1時半。静かに、風だけが音を鳴らしている。

家から3分のコンビニはとてもありがたい。

「143番2つ、あと唐揚げ1つお願いします」

美味しそうなスイーツや酒も手に入れ家に帰る。

適当にテレビをつけ、唐揚げと酒をツマミに煙草を吸う。脂を酒で流しながらの煙草は最高に美味いのだ。

嫌な事も、楽しかった事も。煙草と一緒に灰にしていく。この先もきっと、私はこれを繰り返すのだろう。

何度も何度も、煙草を焼いて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

煙草に焼かれて 鳳凰澪崋 暁月 @albaLuna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ