第2話 最後の晩餐

日も落ち始め、少しずつ夕日が傾いてきたころ。私は修君から送られてきた住所の家に着いた。そこは二階建てのぼろアパートで、目の前には小さな駐車場があった。私はとりあえずそこに車を止め、一階の一番左の部屋をノックする。

「修君―。わたしだけどー。」

ガチャリと音がして扉が開く。

「りさ、静かに。今一応追われている身だから。」

しまった。会えると思ったら気が抜けてしまっていた。

「ごめん。入っても大丈夫?」

「大丈夫。友達にも許可とっているから。」

「そっか。お邪魔しまーす。」

小さな部屋で一人暮らし用の部屋といった感じだ。

入って右手にトイレとお風呂。進むと狭いキッチン、その奥に畳の部屋があり、ちいさな机と布団があった。一組だけ。

今夜に少し期待してしまう。

「ものが少ないね。」

遠回しに聞いてみる。

「あいつ外で遊んでばっかりだからね。」

もう少し。

「今日泊まってもいいかな。」

「あ、うん。いいよ。」

期待してよさそうかな?まあ、後のお楽しみかな。

「とりあえず家にあった残り物持ってきたから、一緒に食べよ。温めるね。」

「そ、そうだね。でも、この家電子レンジないから冷めたままかな。」

「え、無いの?しけてるねー」

この家の人ほんとに生活しているのかな。今時電子レンジなしとかありえないんですけど。後で温めあうしかないかな。

切り替えて、持ってきたカバンから残り物を出していく。冷めた肉じゃがと、ごはんを小さな机の上に置いて、二人で食べ始める。

「りさのご飯は冷めていてもおいしいね。」

「ありがと。ところで、どうして修君が疑われているのかな。」

警察は証拠が家から出たって言っていたけど、何が出たのだろうか。勘違いされている身にもなってほしい。

「さあね。全く心当たりないな。」

「そうだよね。そもそも、殺人犯は小さい子が好きなんでしょ?私と付き合ってる修君が犯人なわけがないじゃん。」

「小さい子、というか小学一年生の子が対象だね。」

「警察は私をなんだと思ってんだろ。」

「小学生くらい?」

「私そんなに幼くありませーん。」

「そお?りさはたまに抜けているところあるから、幼く見るんじゃない?」

とりとめのない会話が続いて、殺人の容疑がかけられていることを忘れそうになる。

こんな時間がずっとつづけばいいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る