第13話 伝説級モンスター
転移するときの独特な感覚、飛び上がっているのか落ちているのかもわからない。浮遊感で、自分がどんな姿勢なのか理解できない。
視界は真っ暗で何も見えない状態なので、視覚が利かない分より一層触覚が鋭敏化されている。それで、右手に掴んだシモーネさんの腕の感触がはっきりと分かった。
浮遊感を味わいながら右手に掴んだ感触を離さないようにする。僕は罠により転移しているようだった。
時間にして10秒ぐらい経っただろうか。急に見えなかった視界がハッキリと分かるようになった瞬間、冷たい空気が頬にあたった。
そして、次に何かの腐った匂い、そして何者かの強烈な気配を感じて全身が粟立った。
僕はまだしっかりと状況を把握していない状態だったが、勘に従って右手に掴んでいた腕を自分の方へ引っ張ってシモーネさんを抱き込んだ。
シモーネさんも状況を把握していないのか、呆然としていた。それで、筋力のない僕が腕を引っ張っただけで、僕の方へと身体を預けてくれた。
シモーネさんと僕は身長を比べると、差がかなりある。そのため、子どもが大人に抱きつくような感じになったが今は気にしていられなかった。
瞬間、冷たく感じていた肌に熱気が当たったので、これまた何が起こっているか分かっていない。だが直感に従い、慌てて完全防御の魔法壁を築く。
「くっ!」「エリオット君!」
背中に強烈な熱さを感じたが、魔法壁のおかげで直ぐに熱を感じなくなった。
どうやら、炎が背中に当たったようだ。万能ローブを身につけていた事が幸いして、身体が動けなくなるような大きな怪我を負うことはなかった。
そして、僕のローブと魔法壁のおかげでシモーネさんの身体に炎が当たらないように避けることが出来た。僕の小さな身体では守り切れないと思ったが思いの外上手く炎を防ぎきれたようだった。
魔法壁を展開しながら僕は恐る恐る後ろを振り返ると、そこではモンスターが口から炎を吐いていた。
「え?」
僕が抱き抱え込んでいたシモーネさんが叫ぶ。今まで心配して僕を見つめてくれていたが、僕が視線を後ろに向けたのに釣られたのだろう。
「ドラゴンだと!?」
その存在に気付いたシモーネさんは、ドラゴンという伝説級に分類されている強力なモンスターの名前を叫んだ。
シモーネさんは今のところ慌てているが何とか無事、しかし一緒に飛んで来たフレデリカさんは何処だ!?
僕も若干焦りながら探索魔法で人の気配がないか周辺を探す。すると、少し離れた場所で大剣を握ってドラゴンへ突っ込んでいくフレデリカさんが居るのを発見。
フレデリカさんの居た場所は、僕とシモーネさんが居る場所よりも少し離れた場所に居た。先ほど、ドラゴンの吐いた炎の被害は受けなかったようで無事である。
しかし、今は剣でドラゴンに向かって特攻を仕掛けようとしている。
ソレはダメだ! 彼女ではドラゴンに向かって行っても何もすることが出来ないだろう、無駄な行動になる。
フレデリカさんの大剣ではドラゴンの強力な皮膚を斬りつけてもダメージは与えられないと思うから。そして最悪なのは、ドラゴンから反撃を受けて致命傷を受ける可能性があるということ。
全員が助かるにはどうすれば良い? 僕は、どうすれば?
混乱する頭で必死に、全員が助かる方法を考え出そうとする。目の前に居る奴を、どうするのか。
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