第10話 人生のゴール?

 トルベン達が騎士と村を出ていってから、5年ほどの月日が流れていた。


 その間、僕の周りでは特に大きな事件も無くて村で悠々とした生活を送っていた。自分の畑で色々と試行錯誤をして作物を育ててみたり、ネットで調べて学んだ農法を試してみたりして。


 それで上手く知識が使えるのを実践して確認してから、村の皆にも農法を教えたりした。その結果、村で作る農産物の出来が年々良くなっていって、村では食べる物に困らなくなり貯蓄する余裕ができるほど、村の農業が順調になっていった。


 他にも、レベルが低くて戦えないような村人達には罠を使った方法、武器を持って戦うよりも安全に狩猟するやり方を教えてみたりした。農業以外の方法で肉の確保が出来るようになって、村周辺のモンスターや野生動物を駆除して獣害を減らしたり、罠で倒して経験値を取得できる事も分かった。


 知識を学んで経験値を稼ぐ方法以外で安全なやり方、罠を使ってモンスターを倒していくのは危険も少ないし良い方法かもしれない。新しいレベル上げについて、僕は学んだ。


 更に、キレイ好きだった僕は村人にも衛生観念について、身の回りの清潔さを保つ方法や意味、健康維持や病気予防といった生活習慣に関係する考え方についてを指導してみた。すると、村で伝染病や感染症が一気に減ったりしていった。実践することで、効果がハッキリと現れた。


 僕は一生、この村で生活していこうと考えていたから。村を少しずつ、生きやすいような環境を整えていくため為に、ネットの知識を皆に公開していった。その結果、数年経ってしっかりと生活しやすい村に変わっていった。ゆったりと過ごすのに快適な住環境が出来上がっていく。


 村人からの僕の評判も上がっていった。僕の教える知識が非常に有用で、ここ数年で村も大きく変わっていき生活しやすいようになった、というのが皆の意見だった。ほとんど全て、ネットから調べて学んだ知識だから誇るつもりは無かったけれど。


 村が発展したのは、様々な知識を広めた僕のお陰だと村人達からは英雄として讃えられるようになっていた。村を出ていってしまった英雄のトルベンについての記憶を書き換えるために、新しい英雄を誕生させたという感じもあったけれど。


 まぁ、褒めてもらえているから良いのかと思って、僕はあまり気にしなかったが。


 ロジーナの両親からは、子供から成長した大人の男として認められるようになり、いつの間にか僕とロジーナは将来結婚して夫婦になることが決定事項となっていた。つまり、許嫁という関係になったのだ。


 いつの間にか、とは言ったけれど。子供の頃からずっと一緒に居たので、この先もずっと一緒にいるのだろうと予感はしていた。約束はしてなかったし、口にも出したことは無かったけれど僕らの間で、暗黙の了解で結婚する事を決めていたような感じもあった。もちろん、僕は彼女との結婚は大歓迎。


 ロジーナは成長するにつれて、芯が強くて聡明な美人になっていった。


 彼女は、僕がこの世にある様々な知識をネットで調べることが出来る、という能力について薄々感じ取っていたみたいだ。色々な事を聞かれてきたから。もしかしたら単純に物知りだと思われているだけ、なのかもしれないが。


 ある時、「女性として魅力的になる方法を教えて」と尋ねられた僕は彼女にスキンケアについて、ネットで調べたことを教えた。基礎化粧品なんか売っていないので、化粧水や美容液など化粧品の製法について調べて、2人で材料となる薬草や鉱石等を集めてきて製剤をして。そして、特製の化粧品を自作した。


 もともと美人だった彼女だが、さらに美しくなるために努力していた。スキンケアは毎日欠かさずにやって、特訓で美しいスタイルを作り上げていった。


 そして彼女は、この世界では有り得ないぐらいに肌が綺麗になって、今では村一番に輝くような美しい女性へと成長していた。


 ロジーナのもとに、美しくなる方法を聞きに来る村人の女性達が殺到。僕の教えた知識については特に口止めもしていないので、どんどんと美しくなる知識が広まっていって、村の女性たちがみんな美しくなる方法を実践するようになっていた。スキンケアブームというものが村の中で巻き起こった。


 もしかすると、数年後には国で一番美女が多い村として知られるようになっているかもしれない。


 そんな感じだから、彼女と結婚できる事が誇らしい。村の男性たちから羨ましいという視線を向けられることも多かった。噂を聞きつけて外部からも、ロジーナに求婚しにやって来る男なんかも居たぐらいだ。


 婚約者は僕だと自覚している。だけど逆に、僕なんかで良いのかなと心配になる時もある。平穏な毎日を送る事が一番で、騒動や面倒事に巻き込まれるのを嫌がる僕。この先も側に居たなら、変わった出来事なんか無くて刺激も無い生活が続くかもしれない。だから僕は直接、本人に聞いてみた。


「ロジー、今まで僕と一緒に居てくれて本当にありがとう。感謝している。だけど、これから先もずっと僕と一緒で良いのかな?」

「もちろん! 私は、一生あなたと居たいと思ってる」


 特訓の合間に突然、僕は感謝の言葉を告げて、情けない事を聞いてしまったのだが彼女は即答した。まっすぐ視線を逸らすこと無く僕を見つめてくるロジーナ。だから僕も、決意を固めることが出来た。


「ありがとう。僕は一生、ロジーナを大事にする」

「はい! よろしくおねがいします」


 僕がストレートに正直な気持ちを伝えると、先程まで凛としていた彼女がちょっと視線を外して、恥ずかしそうに頬を赤らめ耳まで真っ赤にしていた。


 そんな感じで、15歳の僕らは夫婦となった。

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