第15話 そして、どうしよう

「これから、どうしましょう」

「近くの街に行ってみようか。そこで、この世界について調べるのが先決だろう」


 とりあえず、皆で一緒に行動するという事で意見がまとまった後。シャルロットの疑問にバハドゥートが答える。


「どうやら、この世界は僕の知っている世界じゃないようだから」

「さっきの老人が異世界召喚とか言ってたしな。あの魔法陣も、どうやら別世界から誰か呼び出す事が目的のようだったが見事に効果を発揮していた。人間が作った物にしては、なかなかの作品だった」


 バハドゥートは自分が今いる場所が異世界であると確信していて、情報を知りたいと思っていた。そしてベリルは、この異世界に呼び出した、あの床に描かれたていた魔法陣を思い出し高く評価していた。


 あの場所に描かれていた魔法陣はベリルの目から見て、かなり複雑で緻密な文字と模様を組み合わせて構成されていた。そして、しっかりと効果を発揮したというのが評価が高い。


 どうやら、彼らは勇者という存在を呼び出すのが目的だったようだが、4人も同時に異世界から召喚するという結果になっていた。それでも、別の世界から誰かを呼び出すという召喚魔法は非常に難易度が高くて、成功させただけでも称賛に値する。


 そんな評価を下す、ベリルだった。


「さっき皆で一緒に空を飛んでいる時、下に街を見かけたけれど。戻るの?」

「いいや、僕たちをこの世界に召喚したという彼らの存在が色々と面倒そうだから。なるべく遠くに行こう。この先に進んで、街を見つけよう」


 ミラベールが皆に問いかける、どの方向に向かうのか。バハドゥートは飛んできた方向とは逆の、さらに真っ直ぐ先に進もうと指差して提案する。あの老人を始末せずに、4人は逃げるように飛んできた。おそらく、捜索隊など立ち上げられていて4人の居場所を探っているだろうと予想していたから。今戻ると、補足される。


 だから、今のうちに遠くへ離れようと彼は言った。


「そうしましょうか」

「さんせーい」

「それで、いいんじゃねぇか」


 ということで、バハドゥートの提案で4人の進む方向は決まった。召喚された場所から更に遠く離れて、人間が住んでいる街を探して真っ直ぐ進む。街を見つけたら、情報を得て世界について調べて知る。


 そんな方針で、4人は一緒に旅することになった。



***



 歩いて旅をしている間、モンスターと遭遇することもあった。けれど、その4人にとって何の脅威もなかった。立ち塞がったら、邪魔をする敵を殲滅するだけ。


「弱すぎるぞ、雑魚ですらない」

「このモンスターが、この世界の住人にとってどの程度の脅威なのか知りたい」

「アハハ、よわい、よわい!」

「早く、ちゃんとした武器を手に入れたい」


 異世界でも問題なく使いこなせた魔法を駆使して、敵を次々と倒していくベリル。近寄って、素手で敵を倒すバハドゥート。無邪気に笑いながら魔法を乱発して、敵を倒していくミラベール。


 そしてシャルロットは、武器がなく防具が不足していて戦える状態ではなかった。だが、その辺に落ちていた太めの木を拾って打撲で敵を殲滅する為に、3人に戦いで協力していた。


「このモンスターの素材、換金できるかもしれない。異世界に来たばかりで、無一文だから交換して稼げるような何かを持っておきたいな」

「それじゃあ、私が持ちます。アイテムボックスという便利な魔法があるので」


 バハドゥート達が倒したモンスターの素材を、アイテムボックスの中に放り込んで運ぶシャルロット。バハドゥールが行ったように、後で手に入れた素材を換金できたなら助かるのに、と考えながら。


「すごぉーい!」

「おいおい、なかなか便利そうな魔法だな。それは」


 シャルロットの使用した空間魔法を初めて目にして、はしゃいでいるミラベール。ベリルは興味津々で、自分も使ってみたいと空間魔法について目を凝らして観察をした。天使や悪魔でも興味を持つような、特技を身につけているシャルロットだった。


「確かにソレは便利だな。今回は、アイテム回収を貴女に任せる。戦闘については、僕たちに任せて」

「分かりました」


 4人旅の道中は特に何事もなく、半日ほど進んで行った先にあっさりと街があったのを発見した。

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