第8話 冒険者ギルド

 鍛冶屋に素材を納品して依頼主である鍛冶屋のジェフリーから依頼完了のサインを貰ったので、次は皆で冒険者ギルドに向かう。依頼が無事に終わったという報告と、今回ダンジョンで入手してきた素材を買い取ってもらう為に。


「や! シャルロットさん、ようこそ冒険者ギルドへ!」

「こんにちは、サンディーさん」


 4人が冒険者ギルドのある建物に踏み入れると、中から男性の声が聞こえてきた。彼の名はサンディー、ウィシュトシュタにある冒険者ギルドの代表を務める中年男性だ。代表者といのうは、いわゆるギルドマスターという役職。


 一般的に冒険者ギルドのギルドマスターというのは、名の知れた冒険者などが就任することが多い。しかし、サンディーという男性は全然戦えるように見えなかった。


「よく来て下さいました、皆さん。ミラちゃん、ベリルくん姉弟は今日も元気一杯でいいですなぁ!」

「どうも」

「ありがとう、サンディーおじさん!」


 媚びるようなサンディーの態度。ちょっと面倒くさそうに眉をひそめて対応をするベリルと、嬉しそうに笑顔で返事するミラベール。


「ジョゼフさん、今日も調子が良さそうで!」

「そうだね」


 声を掛けられたジョゼフは、感情の読めない口元だけ微笑むような形を伴ったような表情で返した。


「依頼の報告に行っても?」

「どうぞどうぞ、コチラです! エミリアさん!」

「大丈夫です。場所は分かるので」

「そうですか! では、また用事があれば私を呼んで下さい。飛んでくるので」


 冒険者ギルドの建物に入った直後に足止めされてしまったシャルロットは、確認を取ってから奥に進んだ。まだジェフリーは世話をしようとしていたけれど、しっかり断って彼を遠ざける。


「ちょっと苦手だな、あの人」


 ジョゼフが離れていった彼の姿を見ながら一息ついて、感想を漏らす。


「ウザいよなぁ」

「え? いい人だよ」

「そうね。以前の出来事で感謝をして、恩返ししようとしているのは分かるんだけどね。ちょっと押し付けがましいかも……」


 ベリル、ミラベール、そしてシャルロットも印象について話していく。


「シャルロットさーん!」


 ジェフリーに対する印象について会話していると、女性の声が聞こえてきた。

 冒険者ギルドで受付嬢を務めているエミリアが、カウンターから身を乗り出して、手を振ってシャルロットの名を呼んでいた。


「こんにちは、エミリアさん」

「はーい、シャルロットさん」


 カウンターに、4人が近寄って挨拶をする。笑顔を浮かべて対応をするエミリア。


「今日は、ミラちゃん、ベリルくんと、……じょ、ジョゼフさんも一緒にダンジョンに潜ったんですね!?」

(……あぁ、シャルロットさんが羨ましい。私も冒険者として戦えたらなぁ)


 2人の美形男性冒険者が一緒にいる状況に気付いて、シャルロットへ羨ましそうな視線を向けるエミリアだった。


「これが、今回達成した依頼のサインです」

「あ、はい。確認しますね。少々お待ち下さい」


 依頼書を提出されたので、職務に集中する受付嬢エミリア。しばらく、待たされた後。


「はい、確認できました。お疲れさまです。報酬金は後日のお支払いになりますが、大丈夫ですか?」

「問題ないです」

「ありがとうございます」


 普通、報酬金の支払いは依頼完了した時に行われる。だが数ヶ月前まで、ある事情により活動が停止していたウィシュトシュタの冒険者ギルド。色々と立て直したとはいえ、資金繰りなど苦労をしていたので支払いは後日にと、お願いしていた。


 ギルドの事情をちゃんと理解していたシャルロットは、今すぐお金が必要という訳でもなかったので了承する。


「あと、ダンジョンの戦利品を鑑定してもらいたいんですが」

「もしかして、この前みたいに大量の戦利品、ですか?」


 シャルロットの報告を聞いて、冷や汗を流したエミリア。恐る恐る、自分の予想について聞いてみた。すると、シャルロットは頷いて肯定する。


「そう。今回もダンジョンから、いっぱい持って帰ってきちゃった」

「非常に助かるんですけど、処理が大変で……。とりあえず、倉庫にお願いします」


 モンスターの素材は色々な方面から需要があるので、しっかり売りさばくとギルドの資金源となる。ただ、シャルロットが持ち帰ってきた量が尋常ではなく鑑定するのに凄く時間が掛かった。というか、前回持ち込まれた戦利品の鑑定と処理がまだ終わっていなかった。終わっていないのに追加されると考えると、憂鬱になるエミリア。仕事なので、仕方がないのだが。


「じゃあ、戦利品をいつもの場所においてから帰ります」

「お願いします。後で確認しておきますね。お疲れさまでした」


「バイバイ、エミリアお姉ちゃん」

「バイバイね、ミラちゃん」


 小さく手を振って可愛らしく別れを告げるミラベールに、癒やされながら手を振り返すエミリア。


「お疲れ様、頑張ってね。エミリアさん」

「はい!! 頑張ります!」


 カウンターから離れる瞬間、ジョゼフに励ますような言葉をかけられたエミリアは一気に元気になっていた。


 冒険者ギルドの建物から出ていき、シャルロット達は戦利品を指定の場所に置くと一日の仕事が終了した。

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