第7話 素材納品
ダンジョン内で倒したモンスターから剥ぎ取ったミスリル金属を回収してアイテムボックスの中にかき集めた後、夕方になる少し前には帰路についた。地上に出ようと上に向かって進んでいる道中にも敵と遭遇するので倒していき、色々なモンスターが落とす素材も集めながら地上へと戻ってきた4人パーティー。
「はぁ、やっと終わったか。我ながら働きすぎたぜ、全く」
先頭に立って真っ先に地上へ出てきたベリルは笑顔を浮かべ、手を大きく伸ばして窮屈だった地下から出られたという開放感を得ていた。
「ベルは、そんなに働いてないじゃんかー。私のほうが大変だったよ」
「ベルって呼ぶな、ベリルだ。姉ちゃんは人に言えるほど、そんなに働いてなかっただろ。途中、ちゃっかり休んでたじゃん」
姉に言われて、言い返す弟。
「ちゃんと働いてたもんね。モンスターを魔法で倒して、聖域を作って、皆の応援もちゃんとしたもん」
「いや、応援は働いたうちの一つに入るのか?」
そこに疑問を持って、眉をひそめるベリル。ちゃんと働いていたと証明をする為にミラベールは、後ろを歩いていた2人に縋るような目を向けて尋ねた。
「皆、私の応援でがんばれたでしょ? ね、ママにジョゼにぃ」
「そうね」
「ミラちゃんの応援がパワーになったよ」
ミラベールの質問に、頷いて肯定する2人。そして、そんな2人の答えを聞いて、満面の笑みを浮かべた。
「ほら」
「ぐぬぬ。皆、姉ちゃんに甘いねぇ。俺も甘やかしてほしいよ……」
ドヤ顔で言い放つミラベールに、仲間がいなくて悔しそうに呻くベリル。いつもの2人の喧嘩を見守っていたシャルロットは、目的通りダンジョンで素材の回収を終え次の行動に移る。
「さて先ずは依頼を終わらせる為に、手に入れた品を納品しに行きましょうか」
4人が向かった先は、ウィシュトシュタに昔からある老舗の鍛冶屋。その店から、冒険者ギルドに素材収集の依頼が来ていた。その依頼を受けたのがシャルロット達で今からダンジョン内で集めてきた物を納品しに行く。
「ジェフリーさん! 居ますか」
店内に入ると、中は無人だった。武器が陳列してあるカウンターの向こう側に大声で呼びかけると、奥から物音が聞こえてきて人の気配があった。
「おう、シャルロットの嬢ちゃんか。それにミラちゃんと、ベリルの坊主も居るな。お、ジョゼフも居るのか。勢揃いだな」
「こんにちは、おじいちゃん!」
「うっす」
「どうも、ジェフリーさん」
すぐに返事があって、奥からヒゲの立派な老人が出てきた。ニカッと男らしい笑顔で、店内にいた4人の姿を確認していく。彼は、鍛冶屋のジェフリー。ここに居る皆とは、知り合い同士だった。
「もしかして、もう依頼の品を持ってきてくれたのか!?」
「はい。ミスリル金属を収集してきましたよ。どこに納品しましょうか?」
依頼完了の報告を聞いて、驚く声を上げるジェフリー。彼が冒険者ギルドに依頼を出したのは三日前の事だったので、もうしばらく時間が掛かるだろうと予想していたから。まさか、こんなすぐに持ってきてくれるとは想像していなかったのでびっくりしていた。
「それじゃあ、すまんが工房の倉庫まで運んでくれ。そこで品の確認させてもおう」
「わかりました」
店内で、ダンジョンに潜って集めてきた依頼の品を取り出してしまうと、渡すのが面倒になりそうだった。という訳で、ジェフリーの案内で倉庫まで移動してきてから改めて、手に入れてきたミスリル金属を取り出すことに。
「わざわざ、すまんな」
「いいえ、お安い御用ですよ」
シャルロットは案内された部屋の中に、アイテムボックスを使ってミスリル金属を次々と取り出していき、鍛冶屋の倉庫として使われているらしいその場所に置いた。部屋の中に、どんどん高く積み上げていくミスリル金属。
「相変わらず、とんでもない光景じゃな。そのアイテムボックスという魔法は、便利すぎるのう」
「えぇ、本当に助かっています。これのお陰で色々と作業も捗るんで」
「そうじゃな。それと、あの時は本当に助かった。そして今回も」
「いえいえ、困ったらまた冒険者ギルドに依頼してください、っと」
冒険者ギルドに所属している身分として、ギルドの営業を地味に行いながら依頼で指定された量のミスリル金属を取り出し終えて一息つくシャルロット。そして、問題がないか確認をしてもらおうとジェフリーに声を掛けた。
「どうでしょうか?」
「……うむ。どれも、高品質で儂が求めていた以上の品のようだ。ありがとう」
倉庫の中に置いたミスリル金属の塊を一つ手に取り、目を凝らしじっくりと確認をしてから判断を下す。名の知れた職人であるジェフリーの目から見ても、高品質だと思えるような素材。持ってきてくれたシャルロット達に、感謝の言葉が伝えられた。
「では、依頼完了ということで証拠のサインを」
「わかった……。コレで良いか?」
シャルロットが取り出した依頼書に、ギルドに提出する証拠としてジェフリーから手書きのサインを貰って仕事は終わった。
「はい、大丈夫ですよ。また依頼を、よろしくおねがいします」
「うむ」
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