第2話覚醒剤依存症とアルコール依存症

覚醒剤依存症とアルコール依存症




生活を破滅させる2大依存症と言えばこの二つだろう。


近年「依存症」などと言う耳に優しい言葉で表現されるこの二つの病気も、早い話しが「アル中」と「シャブ中」なのだ。


どんなに綺麗な言葉で取り繕おうと、その実態はどちらも直視出来ないほどの地獄絵図だ。


しかし…アル中とシャブ中には決定的な違いが有る。


酒は飲む程に正体を失い、ヘベレケになって眠りこける。


側で見ている人間にしてみれば、酒に酔っている事は一目瞭然だ。


アル中に多いのは風呂にも入らない、髪もボサボサ、いつも酒臭い息を吐き、見るからに不潔な酔っ払い。


しかしシャブ中はと言えば…違法薬物を使っていると言う意識からか、絶対に周りにバレない様にどうにか自分が覚醒剤をやっている事を隠そうとする。


シャブ中は匂いで分かる。


腋臭とは違う覚醒剤の匂いと言うのが有り、シャブ中はこの匂いを隠すのに必死だ。


一日に何度もシャワーに入り、脂が抜けたカサカサの肌をしている奴も少なくは無い。


強い香水で誤魔化そうと、やたらとオーデコロンを振り撒く奴もいる。


更に言えば、薬の延長に異性との肉体関係も組み込まれている事も多い為、身なりにも多少の気を使う。


つまり、アル中と違い、シャブ中は周りの者から気付かれにくいとも言えるのだ。


日常的に化粧をしている女性なら尚の事だ。


濃い目の化粧で目の隈や、やつれた顔に蓋をして仕舞えば誰も疑いさえしないだろう。


覚醒剤は腐ったまんじゅうに例えられる事が多い。


まんじゅうが腐るのは先ずは中に包まれた餡…。


美味しそう…と言う見た目に騙されうっかり口に入れて仕舞えば、その後の顚末は説明しなくても分かるだろう。


まんじゅうが腐っているかどうかを見た目だけで判断出来るようになるには、カビが生えるかドロドロに溶け出すか、或いはカサカサに乾いてひび割れてしまうかそのどれかだ。


そうなった時には誰がどう見たって腐っているのが分かる。


覚醒剤の常習者は、正に腐ったまんじゅう…。


見た目では分かりづらく、周りが気がついた時には既に手の施しようが無いほどに腐り切ってしまう。


一度も覚醒剤の使用を誰かに知られた事のない人なら、尚の事世間に知られるのが遅くなる。


「近頃、急に性格が変わったけど…あの人は一体どうしたんだろう…?」


そう思ったところで、まさか覚醒剤を使用しているなんて事を人は疑わない。


親でさえそうだ。


「何が有ったんだろう…失恋でもしたんだろうか…向こうが何か言って来るまで待とう…その内ゆっくりと話をしてみよう…」


などと思って居る内に「依存症」は深刻な状態まで進行し、手の施しようが無くなるほどのジャンキーに育ってしまう。


折りよく…と言えば彼女に失礼かも知れないが、女優の沢尻エリカが合成麻薬のMDMAを持って捕まった。


報道によれば、彼女は10年前からMDMA、LSD、コカイン、マリファナなどの違法薬物をやっていたと供述して居るらしい。


この連載を書き始めたきっかけとなった田代まさし氏の事なら、少しでも様子がおかしければ「また始まったな…」と疑う事も出来ようが「まさか沢尻エリカまでが…」と思うのが世間一般の声では無いだろうか。


麻薬常習者に目敏い我々なら、彼女が結婚した時に既に疑いの目で見ていた事もあり「ほらやっぱりな…」とガテンもいったが「他の芸能人が捕まるのを見ていて、次は私かも知れない」と思いながらも薬を止められなかったのは悲劇としか言いようがない。


実は彼女のやっていた全ての違法薬物は、たった一度ではその薬物の良さが分からない。


何度か繰り返し使っていく内に、ある日突然その薬の良さが分かる様になる。


ドラックの王様と呼ばれるヘロインでさえも、最低でも3回以上は使用しなければ「ラッシュ」と呼ばれる多幸感を味わう事は出来ない。


ただ「ボーッ」としてるか、ひたすら吐き気に耐えて居るかのどちらかだ。


しかし、覚醒剤は違う。


たった一度で…たった一度でその魔力を実感出来る。


そしてその薬の効果が消えた時の切れ目も絶大だ。


テレビでよく見る麻薬常習者が薬を抜くシーンの様に、大袈裟にのたうち回る様な事は無いが、今まで経験した事の無い気分の悪さに恐怖を感じる者さえいる。


その気分を一転させるには、再び覚醒剤を身体に取り込むしか無い。


そのアップダウンが確実に脳味噌の人格を司る部分を破壊するのだ。


そして人は一人前のシャブ中となって行く。

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