第3話 堕ちた天使

 どれだけ刻が経っただろうか。


 長く深い穴へ落ち、下へ下へと潜っていく


 「……。」


 気づけばそこは、何もない真黒な世界

その場所に何か意味があるのかもわからない。


一つだけわかるのは...自分自信に、既に意味は無くなっているという事だ。


「‥ここは奈落かしら?」

黒く冷たい、視界すらも覆う闇が自らの姿すらも隠して一切の表しを許さない。


「何処にむかおうか、そもそも方角なんかあるのかしら。悲しみも感じないわ」

雷に感覚すらも奪われたのか、絶望に晒されている筈がそれに打ちひしがれる事も無い。


「何から始めよう..」


「あ、気が付いたみたいだね!」「..え?」

暗く距離は分からないが、声が聞こえる。闇に紛れてはっきりとした大きな音は、どうやらこちらが目覚めるのを待っていたようだ。


「突然落ちて来てびっくりしたよ。

..僕の他にも〝そんな奴〟いたんだなってさ」


「……あなたは..?」

暗闇の中でもはっきりと分かる、大きな瞳の金髪の少年。奈落に住むには朗らか過ぎる


「ああ、ごめんね。これじゃ見えないよね?」

指を鳴らすと闇が晴れ、空間に光が差し込む


「僕はアダム、君と同じく光の輪を奪われユグドラシルを追放された存在。」


「アダム…?」


「罪の内容は..また今度話すよ。」

幾ばくも経たないような少年が、神に罰を受けたというのだろうか。こちらから訳を問いただすのは余りにも恐ろしい、ユスリカはゾッと背筋を震わせた。


「ここは何なの? 地獄?」


「違うよ、地獄でも奈落でもない。

天界で禁を破った天使達が罰を受け堕とされる場所、まぁ神々はそのまま下界へ真っ逆さまになると思ってるだろうけどね」


「神の知らない世界ってこと?」


「ま、そういう事かな。

ああ見えて連中は面倒臭がりばっかでね、わざわざユグドラシルの外に出て様子を伺うなんて事は無いのさ。だから好き勝手できる訳」

神の監視から逃れ、光と闇を操る存在。

元が天使だったとしても出来る事が多過ぎる


「アダム、あなた何者..⁉︎」「んー?」

思わず聞いてしまった。壮大な出来事が一遍に生じた事で判断を見誤ったようだ。


「創造神になり得なかった者、かな。

神の力が欲しくてとあるものを手を出してね」


「とあるもの..?」


「禁断の果実だよ。

神の樹のみに宿る不思議な実でそれを食べるとあらゆる創造物を具現化できる」


「もしかしてそれって、本に書かれていた、禁じられた果実あれを食べたの...?」


「まぁそうだね。」

少年の周囲に、さっきまでの闇が纏わりつく


「ここは堕天界、翼をもがれた天使達が棲む」

黒が指先で踊り収束する。


「僕が創った世界だよ。」

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