第9話 宣言

帰りたいってのに呼び出しとか、相変わらずの嫌がらせか。

言うと面倒だから、今日の試合は疲れたから、と言ってさっさと楼伽を送ってきた。



学校まで戻れば、教室で一人本を読んで居やがる。帰ったのか他に人が居ないな。



「なんだ。楼伽ちゃん連れて来てくれれば良かったのに。」



「連れてくるわけないって分かってるんだろ。」



「分かってるよ。だから呼んだんだ。」



だって、きちんと言っておかないと。



「気に入っちゃった。たぶんだけど。」



「▪▪▪何がだよ。」



相変わらず嘘が下手だ。

分かっている癖に。



「楼伽ちゃん。今までに会ったことのない、不思議な女の子だね。」



嘘だ。似たような子に1人だけ会ったことがある。



「仕返しってことか。」



「仕返しも何もないだろう。灯那が何かしたわけじゃない。」



「俺から奪う、そう言いたいのか。」



「奪うってわけじゃない。まぁでも、宣戦布告ってやつ。」



媚びてくるわけでも、擦り寄ってくるわけでもなく、それでも好意を向けてくれる。



「あんなに僕のことを考えているのに、灯那と付き合っているなんて。」



「あの時のことなら」



「それとは関係なく、本気だったら?」



「本気かどうか▪▪▪」



暫くお互いに目を離さなかった。離さなかったのは僕だけで、灯那のそれは睨んでる、が正しいか。



「▪▪▪そうか。けど、譲るつもりはない。」



バタンッ



荒々しく盛大に扉を閉めて去って行った。



言葉が無くても伝わった、僕の本気。古い付き合いなんだ、そこは信用するよ。

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