第460話 ディフォンの目覚め
十三億年の月日は、銀河内の全ての≪世界≫からなる星団国家を生み出すことになった。
統一神ディフォンを頂点に戴く神権政治体制をとる国家ながら、高度に発達した科学文明を持ち、千兆の民を抱く超巨大国家である。
その国家の名はアウラディア。
その起源を辿れば、統一神ディフォンの現世における姿であった救済者クロードの血脈からなるアウラディア帝国を前身とする。
そのアウラディアの宇宙軍が布陣した先にあるものは、一見するとその先も宇宙空間が広がっているかのようにカムフラージュされた≪大神界≫の外殻である。
「混成魔導兵器、全艦発射用意できました」
副官の報告に、総司令官であるオルフェウスは満足そうな表情を浮かべた。
オルフェウスは、遠くは≪箱舟≫を管理していたというエルフ族と関りのある出自の者で混血ではあるがその容貌にはその名残がある。
純粋な人族よりもやや尖った耳、長い手足、そして異性でなくとも見とれてしまうような美しい容姿をしている。
「
オルフェウスのオーダーに、戦艦群の背後で沈黙していた、一回り以上は巨大であろう人型のそれが目を覚ました。
アイ・ハッチが開き、その眼球に光が
「
オペレーターの声に、艦内指令室の一同は喜びの表情を浮かべた。
四億年ぶりの起動。
完成と共に一度の試運転もすることなく封印され、眠りについていた伝説の古代兵器。
神の代理人たる
だが、それはこの星団に住まうすべての人々に残された最後の希望。
人類が≪大神界≫の果てであるこの外殻に到達してから、今日までの長きにわたり観測が続けられてきた。
言い伝えられてきた≪大神界≫の終わりの日に向かって、少しずつ外殻を構成する謎の金属に深刻な劣化が進んでいることが確認されるといよいよ≪統一神ディフォン≫の残した預言が真実であるという確信が高まり、人々の不安が増していった。
十三億年にもわたるあまりにも巨大なプロジェクト。
その初期の中心メンバーであったゲイツ博士は、≪異界渡り≫という不老の特性を有していたが、やはり精神の摩耗からは逃れられなかったようで、廃人となり今は医療施設に収容され、生ける屍と化してしまっている。
その当時の他のメンバーたちも、もはや残っている者は誰もいない。
数えきれないほどの世代交代を繰り返し、その各世代間を繋いでいたのは唯一、
≪救済者≫クロードの意思のすべてを記憶し、その人工的に形成された人格によって計画をより良い方向に導いてきた。
それは陽光を思わせる黄金色と黒を基調とした機体で、かつてクロードが愛用していた≪神鋼の剣≫と同種の金属と、≪大神界≫の外殻の材質研究からゲイツ博士が発明した特殊鋼でできている。
機械でありながらその構造は人体に類似していているらしいがなぜそのような仕様にしたのか、またその設計の詳細は
この場にいる誰もが、開発当時には生まれていないため、
「いよいよ、動き出したぞ」
モニターを食い入るように見つめる総司令オルフェウスは、興奮を抑えきれない様子で身を震わせた。
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