第14話 婆ちゃんの本気
小窓からの日差しが顔に反射してあたり、うつらうつらと意識が戻る。
「朝がきたんだ…」
洋子は、この現実が夢であることを祈っていた。でも、昨日と同じ部屋で現実は始まる。
しばらくして、昨日の男が朝の食事を運んできた。
「よう、よく眠れたようだな。神頼みは、できたか?」からかうような目で見る。
「私、今まで神とか占いとか信じてなかったけど信じてみようと思うの」なんで、こんな男に語っているのだろう。
「ん、ん、まあそういうの本人の自由じゃないの。まあ、昼間から昨日おやじが言ってた。研修とやらが始まって、そんな気持ちの余裕もできないかもな」ニヤッとした口元がいやらしさを醸しだす。
「誰が、ご飯つくってるの?」別にそんなことどうでもいいのだけど、あの話題から話をそらしたかった。
「ああ、俺だ。おいしいか?」トレイに入れられた食事は、いつもバランスよくつくられていた。今朝もご飯、わかめのみそ汁、ほうれん草のお浸し、ししゃも。普通の精神状態だったら、もっと会話がはずんだろう。
「うん、おいしい」
「そうか。それは、よかった。俺、ガキの頃から飯は俺しか作る人いなかったから…」いかつい風体で、半そでの腕からは、肘まで入れ墨がほどこされている。そんな、男の口から出た言葉は妙に遠い過去を思いおこす寂しげな言葉だった。
男が出て行ってから、ひたすら水晶に祈った。自分でも、何を信じているのかわからないそれでも祈らずにはいられなかった。
(洋子さん?)
(えっ?)頭の中で、声がした。私、あまりの現実離れしたことが続いたからおかしくなったのかしら。
(私、占い師の翔也の祖母です)えっ、占い師の翔也…。あの人、芸名じゃなかったんだ。でも、祖母って。
頭の中に語られていく言葉。あの、水晶が2つに割れたことで不吉な予感がして祖母に、助けを求めたこと。そして、祖母が思念というものを使って探しあてたこと。
(よく、聞くんだよ。今の状況を映像でも言葉でも頭の中に思い浮かべて)言うとおりにした。目隠しをされてつれてこられてから、監禁されている場所がわからないこと。もう少しで私は、彼らのおもちゃにされること。それから、お客をとらされること。
(最悪の状態じゃな。急がねば、とにかく場所をつきとめるんだ。音がするとか匂いがするとか、どんな些細なことでもいい。またしばらくして、コンタクトとるから)
そういって、思念は途切れた。
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