第15話 ナポリタンかお好み焼き

こんなことって。思念を使って私にたどりついた⁈ すごい人達、こんなことができるなんて…。

今まではもうだめだとあきらめていたが、私を見つけようとしてくれている人たちがいる。それだけでずいぶん心強い。そうだ。まずはこの場所を特定しなくちゃ。その時、車が走り去る音が聞こえた。

しばらくして、あの男が入ってきた。「さっき、おやじが出かけた。帰りは3時頃になるそうだ。もうすぐ、お昼だし今日は、特別にメニューを選ばせてやる。ナポリタンかお好み焼きどっちが食いたい?」男は、どうだうれしいだろうと言わんばかりの表情を浮かべている。

「お好み焼きがいい。それから、ここの住所を教えてほしいの」

「そうか、お好み焼きか。住所なんて、知っても意味がないだろう」

「ここが、どこなのかしりたいだけなの」

「ふうん、まあ教えてやってもいいけどな。ここは、静岡県の〇〇市の〇〇町だ」男は、面倒くさがりながらも教えてくれる。

「番地は⁈」

「そんなに細かく聞いてもどうしようもないだろう」

「いいじゃない。聞くだけなんだから」

「ああ、○○町1-32だ。じゃ、またな」

「お好み焼き楽しみにしてる、また」男の表情が少し緩んでいる。本当は、こんな状況でそんなのどうでもいいのだけど。こんな状況でも、男の作るものは本当においしかった。


頭の中で、今聞いた住所を忘れないように何回も何十回も繰り返していた。


(住所しっかり届いたよ。急いで、向かうからあきらめないで)また、頭の中で声がする。今度の声は若い男の人の声だった。

(えっ、はい)翔也さんだ。あんなそっけない態度をとったのに、ここまでしてくれるなんて…感謝しきれない。


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