アピア

「ここがどこかは実は誰も分からないみたいです。でも、何百年も前からここはあって、一つの自治組織として成り立ってる。人は寿命が来て死んでいきますが、ここで生まれ育った人もいます。それから、時々アピアでいろんなものや人が届く。こっちではイレーズとは呼んでません。アピアです」

「ああ。成程。現れるからアピア」

「はい」

「なんでイレーズ、いやアピアか、アピアは起こるのかね」

「ここは神様の国ですからね」

「え」

「神様が司ってます。まあ、向こうの現代もなんですけど」

「そうなの?」

「はい。神様は子供なんでね。遊ぶんです」

「へ?」

「私たちの国内営業部は、ダルマ落としされたんですよ」


あ?


「ダルマ落としです。昆布さん、やりませんでした?子供の頃」

「木づちで叩いてダルマの胴体を抜くやつだよね。やったけど。じゃ、私の部屋も?」

「ですね」

「ひゃあ」

「ここに来る途中で東京タワーを」

「見た見た。何あれ?」

「面白がって、東京タワーのてっぺんに日本橋を乗せて、やじろべえ」

「スケールがすげえ」

「それから逆さまになってくるくる回ってるお寺」

「うん、あったあった」

「独楽回しだそうです」

「マジか」


給湯室から、何かを煮ているいい匂いがする。

外はとっぷり暮れ始めた。ここは始めて来る土地なのに、妙に懐かしい。


がしょーん!


その時、外で車が事故ったような音が聞こえた。


「どうした?事故だよ。ゴージャスちゃん」

「大丈夫です。車使っておはじきしてるんですよ」

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